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日本での袋綴じ本

勤労感謝の日って、いったい誰が誰の勤労に対してどんな感謝そする日なんだろう……とかなんとか、ちょっと調べればすぐに判りそうなことをウダウダ思いながら、昼過ぎまで惰眠を貪っていた11月23日。
このままじゃイカン、とゴソゴソ起きだして、昼ごはんを食べながらテレビのチャンネルをザッピングしていたんです。

そうしたら、たまたまチャンネルを変えたところが中山秀征司会の「DON!」。
ここで、本の袋綴じについての話題が挙げられていたのですね。
「日本で初めての袋綴じは何でしょう?」との質問に、出演者一同、コンビニでよく見かけるエロ雑誌のことを考えていたようですが、いえいえ。
そこはちゃーんとお昼の番組です。
放送で実物が紹介できるような単行本がえだったのですよ。
アシスタントのお姉さんが「これが日本で初めてと言われる袋綴じ本です」と出してきたのは……ええっ? ウソでしょう?!

なんと、『マイアミ沖殺人事件』だったんですよ!

……ご存知でしょうか、『マイアミ沖殺人事件』。
いわゆる“捜査ファイル・スタイル本”のハシリとなった作品で、内容は5通からなる調書と、「現場で採取された」物証として、電報や手紙、メモ、血痕の付いたカーテンや採取された指紋、髪の毛、マッチの実物が添付されているものです。
で、読者はこれら調書や物証をもとに、犯人を推理する……というものですが、この犯人を述べてある箇所が袋綴じになっているのです。

しかし、『マイアミ沖殺人事件』って、表紙デザインのイメージから考えても、そんな古くはないですよね?
もっと前に出版されたイメージの本だったら、バリンジャーの『歯と爪』があるでしょう(しかも『歯と爪』は、単なるネタバレ防止のためだけじゃなくて、返金保証のためでもあるし)。
そう思ったところで、ああ、そうか。
きっとこのあと、「単行本での初めての袋綴じ本は、この『マイアミ沖殺人事件』ですが、実はもっと古いところでは文庫本で『歯と爪』という作品があるんです」とか言うに違いないのですね!
そういう構成になっているのですよね!

そう思っていたのに、ああ、それなのに……あらら。
袋綴じ本についての話題は、このまま終了してしまいましたよ。

うーん、どうにも納得できない気分なんですよね。
ああ、ぼくが単に思い違いをしていただけなのかしら。
実は、思ったより『マイアミ沖殺人事件』は古いとか。
逆に、思ったより『歯と爪』は新しいとか。

そんな訳で調べてみました。
奥付によると、『マイアミ沖殺人事件』の初版は昭和57年、つまり1982年のことなんですよね。
対する『歯と爪』の初版は、なんと! 昭和52年、つまり1977年なんですよ!
『歯と爪』の方が、『マイアミ沖殺人事件』より5年も先に出版されているんですよ!

どうなっているんだ、こりゃ。

あるいは、番組で紹介したかったのは「単行本としての、日本で初めての袋綴じ本」だったのかもしれません。
ここでフト思い出しましたよ、単行本の袋綴じ。
島田荘司のデビュー作である『占星術殺人事件』も、単行本では後半が袋綴じになっていましたよね。
そこで、念のために調べてみたところ……おい。おい! おーい!!
初版出版年は昭和56年、1981年のことなんですよ!
それって、『マイアミ沖殺人事件』の前年じゃないですか。

ということで、結論。
「DON!」では明らかに誤った情報を、休日の真っ昼間に堂々と流してしまったのでした。
しかし気になるのは、いったいスタッフはどこでどう調べて、「日本で初めての袋綴じ本は『マイアミ沖殺人事件』だ!」として放映してしまったのでしょうか……。

……とまあ、これだけでは単なる文句タレのグチモード全開の不快な日記になってしまいますので、取ってつけたように、その他にも印象的だった袋綴じ本の初版年について調べてみました。

……あれ?
このように書き出してみて、ひとつ気づきましたよ。
これって、ほぼ5年おきぐらいの間隔で出版されていますよね。
ひょっとすると出版業界では、5年間隔ぐらいで袋綴じ本を出したくなるような、そういった雰囲気でもあるのでしょうか……まあ偶然でしょうが。

また、このなかでは飛鳥部勝則『殉教カテリナ車輪』だけが異色な感じがしますが、この作品だけは「なぜ、これを(この部分を)袋綴じにする必要がある?!」という、違う意味での印象に残った本だからだったのでした。

そういう意味から考えると、やっぱり袋綴じ本の最高傑作は「袋綴じであることで成立する」物語を生み出した、泡坂妻夫『生者と死者』で決定ですね!

第3回 世界バカミス☆アワード(青山ブックセンター本店)

今年も、青山ブックセンターでバカミスの祭典「世界バカミス☆アワード」が行われるということで、昨年に引き続いて参加してきました。
第3回 世界バカミス☆アワード(青山ブックセンター本店)

司会進行は、「バカミスのエバンジェリスト」小山正さん、「バカミスト」川出正樹さん、「『マトリックス』をワイド画面で引き延ばしたような(by 小山さん)」杉江松恋さんの3名に加え、今年は日下三蔵さんも入った4名で行われました。
ここにゲストの倉阪鬼一郎さんと駕籠真太郎さんの2名が加わる訳です。
第3回 世界バカミス☆アワード(青山ブックセンター本店)
そして、さらには次のような豪華メンバーが「特別審査員」として参加していたのでした。

  • 霞流一(「バカミスと言えば、この人」)
  • 新保博久(朝日新聞に「笑えるバカミス」を掲載)
  • 鳥飼否宇(今日のために奄美大島から駆け付けた!)
  • 日暮雅通(鳥飼否宇と共に昨年のゲスト)
  • 宮脇孝雄(第1回のゲストにして、クライブ・バーカー『ミッドナイト・ミートトレイン』の翻訳者)

始まる前に、まずは選考方法についての説明です。
例年はmixiのコミュニティ内だけで候補作の公募がされていたのですが、今年は“開かれた環境”をめざして、Twitterでも公募を行っていました(「やっぱり“世界バカミス☆アワード”だからね」とのことで、オバマ大統領でも投票はウェルカムだったそうです(笑))。
その集計の結果、内外の40作品が「第1次選考」として選ばれ、さらに2次投票の結果、上位12作品が残されました。
その後、小山正・杉江松恋・川出正樹・日下三蔵の各氏により激論が交わされた上で、最終候補作として5作品が選ばれたそうです。
しかし今年はさらにネット投票も実施、選出済みの5作品以外のものが上位に入ったら、それも足すということになり、その結果、ネット投票枠から1作品が選ばれたそうです。
こうして、計6作品が「第3回 世界バカミス☆アワード」の候補作品が決定したのです。

その6作品をプレゼンする前に、まずは惜しくも最終選考から漏れてしまった6作品が駈け足で紹介されました。
いやー、しかしバカミスを紹介してもらうのって、どうしてこんなにワクワクしちゃうのでしょうねえ。
聞きながら、もうニタニタ、ヘラヘラ、気色悪い顔になっちゃって、申し訳ありませんです。

獅子宮敏彦『神国崩壊―探偵府と四つの綺譚』(原書房)
架空の国の歴史を作りあげた4つの短篇からなる作品だが、とにかく3作目となる表題作が素晴らしい。どうしてこのような作品を考え出してしまったのか……。
もちろん他の短篇も素晴らしいのだけど、この作品だったら抱かれてもいい(笑)と思えるぐらいに抜きん出ている。
パブロ・デ サンティス『世界名探偵倶楽部』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
1889年に行われたパリ万博に合わせて世界中の名探偵が集まるが(この時点で清涼院流水を彷彿させる)、事件が発生し、それぞれが活動を始めるのだけど……ミステリとしての「探偵と助手」の関係性に焦点を合わせた物語。
「助手はどうすれば名探偵になれるのか」というあたりがメタになっている。
平山夢明『ダイナー』(ポプラ社)
ハンバーガー小説(笑)。
殺人鬼が集う「殺人レストラン」でウェイトレスとして働くことになった女性の、純愛と成長の物語……で、とにかくお腹が減る。しかしそこは平山夢明、もちろんビチビチグチャグチャな描写もあるので、死体を見ながらご飯を食べるような……。
特筆すべきは、レストランに集う殺人鬼たちが皆、変な特技や性格、肉体改造をしているところ。
これはもう「山田風太郎忍法帖」だ。
詠坂雄二『電気人間の虜』(光文社)
とても紹介に困る作品であり、読者によってラストは賛否両論分かれそうな大変な問題児。
どれほど困った作品かというと、以前に綾辻行人が「作中にぼくの名前が出てくるんですよね」と困ったような顔をするほどの困った本(会場内爆笑)。
カール・ハイアセン『迷惑なんだけど?』(文春文庫)
重すぎる母親の愛に困る男の子の物語。
この母親は正義感が強いあまり、男の子が目を離すとすぐに、ルールを守らない人に「お仕置き」を仕掛けるというもの。
エリック・ガルシア『レポメン』(新潮文庫)
近未来、臓器移植の申し込みがスーパーマーケットでも気軽に行われるようになっている世界。
しかし、臓器移植のローンが支払えなくなると、移植された臓器を取り返されてしまうというルールになっている(今だったら借金を返せないと「臓器売ってでも」と言われるけど、それが問答無用で行われる)。
かつて、その取り立て屋だった男が主人公の物語。
臓器を取り立てるということで、ビチビチグチャグチャな描写はあるけれど、ホロリとさせられる。

惜しかった作品は以上の6作品でした。
そして、ここからいよいよ最終候補作の紹介に入ります。

ドゥエイン・スウィアジンスキー『解雇手当』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
前回も『メアリー・ケイト』でエントリーしたこの作者が再びのノミネート。
休日の朝一番に、社員を会社に呼び出した社長が「君たち全員を殺す」と宣言、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄となる……という“なんじゃそりゃ”な物語。
全員協力し合って脱出すればよさそうなものなのに、誰もそうしないし(笑)。
あらすじ紹介には、ハイパー版『そして誰もいなくなった』 とあるが、どちらかというと『バトルロワイヤル』でしょう、それもいい大人たちの(笑)。
日暮雅通「ラストが言えないのがつらいなー」
ちなみにこの作者、こうしたバカミス以外にもビジネス書が出版されている。
それが、ソフトバンククリエイティブから出版された『ヌスムビジネス』というもので、内容は“産業スパイになる方法”。
と言っても、「高層ビルからどのように脱出するか」などと、日本では絶対に役立たないが(笑)。
ジョシュ・バゼル『死神を葬れ』(新潮文庫)
かつてマフィアの殺し屋だった研修医が主人公。
メディカルミステリというよりも、ぶっとんだキャラクタ造形が楽しい。
ギャグ満載の現在のエピソードと、シリアスな殺し屋時代のエピソードの対比が素晴らしい。
しかし本当に何気ないところで、ミステリとしても大きな伏線が張られていたりするので、ギャグやオフビートに目を奪われていると、「おおっ!」と驚かされること必至。
杉江松恋「註釈小説としても読める作品で、各章に『アメリカの製薬会社の営業は色仕掛けで医師を篭絡しようとするのがあたりまえ』のような豆知識が書いてある。全体的に能天気で、同じ医師作家でも日本の医療ビジネスについて悲観的なことしか書かない海堂尊とはだいぶ異なっている」
飴村行『粘膜蜥蜴』(角川ホラー文庫)
戦前の日本のイヤな時代の物語。唯一史実と異なるのは、トカゲ人間が存在していると言うこと。
東南アジアのトカゲ人間の国を日本が征服したため、彼らは日本に連れてこられ、下男や労働力として働かされている。
もともとトカゲ人間は、人間の脳を食べるものだが、有力者の息子の自宅で働く下男のトカゲ人間“富蔵”は日本生まれの日本育ちのため、ご飯と味噌汁しか食べず、その上軍国少年で将来は日本の兵隊さんになるのが夢という……。
こうした第1部が突然に第2部になるとまったく趣向の変わった「南方秘境小説」となり、第3部でそれまでのエピソードが融合することで、大きな愛が産まれるという物語。
小山正「第2部なんて小栗虫太郎の冒険小説を彷彿させて、ワクワクさせられた」
駕籠真太郎「当たり前のようにトカゲが登場して、誰も疑問に思わないところが“昔話”のような感覚。だからか、残酷描写もおとぎ話のよう」
マット・ラフ『バッド・モンキーズ』(文藝春秋)
杉江松恋「全米が泣いた……俺のなかでは」
精神科医に尋問を受ける少女と、バッド・モンキー(悪しき者)を葬る活動に勤しむ少女のストーリーが交互に語られる。
ブルーワーカーとして社会の底辺で誰にも信じてもらえずに生きなければならない、それでも自らの信念を貫く人間というハードな側面と、バッド・モンキー(悪しき者)を葬る武器が「オレンジ色の光線銃」というおバカさの対比に、「オースティン・パワーズ」のような、“バカが世界を救う”小説を見た思いがする。
駕籠真太郎『フラクション』(コアマガジン)
連続輪切り魔が登場するエピソードに、作者自身が登場してミステリ論を語るエピソードが交互に組み合わされる。
この作者のエピソードが、「作者」対「読者」という特殊な構造となる。
通常、ミステリでは一般的には「探偵」対「犯人」だが、それを「作者」対「読者」の次元まで引き上げているところが素晴らしい。
あとは絵のインパクトとトリックに、読了したら1日はボーッとしてしまう。
読書会では語り合える楽しさもあるから、友情をはぐくめる作品でもある。
霞流一は、同書内での「特別対談」のときは、製作上の関係で、まだ『フラクション』を読んでいなかった。
後日、献本として送られてきた同書を初めて読み、「先に読んでいたら自信喪失して対談は引き受けなかった」とか。
20世紀のバカミスの聖典がカーの『魔女の笑う夜』だとすれば、『フラクション』は21世紀の聖典であってもおかしくはない程の作品。
倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』(講談社ノベルス)
日下三蔵「……どこまで言ってもいいのかなー(困)」
全部で190ページあるうちの80ページが解決篇と、異常なほどに解決パートの比率が高いのも特徴。
倉阪鬼一郎「この本は文庫にはできないでしょうねー」
これだけのものを書く労力を考えると、1冊分の収入では合わないのではないだろうか。しかも文庫化もできないとなると、さらに合わない……。
鳥飼否宇「これだけのものだと、校正も大変だったのでは?」
倉阪鬼一郎「講談社ノベルスでの字送りのルールがあるのを知らずにいたため、初校は真っ赤になってしまったが、そこを指示することで再校ではピタッとおさまった」

ここで最終投票に入ります。
特別審査員と観客には、あらかじめ投票用紙が渡されてあり、最終候補作6作品のなかから「この本を読みたい」と思ったものを選びます。

集計結果を待つ間に、ゲストへのインタビューとなりました。

【倉阪鬼一郎】
初めて「バカミス」を意識して書いたのは『四神金赤館銀青館不可能殺人』。
確かに、それまでの作品でもネタとしてバカミス的なものもあったが、“アッパー系”ではないから……(会場内爆笑)。

ピーター・ディキンスンの『盃の中のトカゲ』を読んで、伏線さえ張っていれば、何をしてもいいんだ、読者は許してくれるんだなと学習した(笑)。
本格ミステリと言うよりも、だまし絵が好きだ。
ひとつひとつは魚や野菜なのに、全体で見ると人間だったというようなもの。
このような、どうでもいいと思われそうな細かいことを丁寧に描いていって、最終的には全然異なるものを描くものが好き。

『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』を書くのは、確かに最初は大変だったが、根を詰めれば仕掛けは描けるもの。
昔、出版社の校正を朝から晩までやっていたときに比べると、この作業は格段に楽しい。
根さえ詰めれば仕掛けはできるけど、その仕掛けを必要とする理由付けの方が難しい。
『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』も、最初からここまではしていなかった。
『四神金赤館銀青館不可能殺人』と比べるとちょっと弱いかなとドンドンと足していっていたら、ここまでになってしまった。

もともと幻想小説などは読んでいたが、ミステリを読むようになったのは30を過ぎてから。
岡嶋二人が引退した頃で、「席が空いているに違いない」と友人と合作して乱歩賞に応募しようということになり、色々と勧められたもの読むようになった。
ちなみにその友人は、今は作家ではなく、カタギの仕事をしている。

【駕籠真太郎】
もともとミステリは好きだったが、ここまで1冊まるまるミステリの作品というものは初めて。
ただし、好きといっても、正統派の本格ミステリよりも、バカミスや叙述モノなど変則的なジャンルのものがいい。

今回は、もともと1冊出版することになっていて書き下ろしで出したかった。 内容も、せっかくだから自分の好きな変則的なミステリで行こうということで、このような作品になった。 マンガでミステリといえば、金田一少年やコナンなど、キャラクタものが主流だが、自分はそういったキャラクタが苦手なので、「キャラクタに頼らないミステリ」を描こうと思った。

マンガを描くだけでなく、様々なグッズなども作成している。 (ご本人のホームページでも販売中)

  • 「バラバラ死体」のガチャポン
    手とか、足とか、バラバラに切断された人体のパーツだけが入っている
  • 泳ぐ水死体
    水死体の人形の腹に水中モーターが取り付けてあるもの
  • ジオラマ
    ゴミ袋に死体を入れて収集所に出しておいたらカラスに漁られてゴミ袋が破け、なかの死体が出てきている様子のジオラマ

ちなみに「バラバラ死体」のガチャポンが置いてある場所は、おそらく「バラバラ死体 ガチャポン」で検索すると見つかるでしょう……とのこと。

そしていよいよ投票の集計ができたようです。
栄えあるアワード受賞作が小山正さんにより発表されました。

第3回 世界バカミス☆アワード 受賞作
倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』(23票)
駕籠真太郎『フラクション』(21票)

今回は非常に僅差ということで、同時受賞となりました!
おめでとうございます!
記念品は、ポスターの図柄がアクリル板でとじられた盾(のようなもの)です。 第3回 世界バカミス☆アワードの盾(のようなもの)

他の作品への投票数は以下のとおりです。
ドゥエイン・スウィアジンスキー『解雇手当』(5票)
ジョシュ・バゼル『死神を葬れ』(4票)
飴村行『粘膜蜥蜴』(5票)
マット・ラフ『バッド・モンキーズ』(6票)

その後は、えへへへ、いよいよサイン会なんですよ。
こちらが駕籠真太郎サイン入り『フラクション』です。
駕籠真太郎サイン入り『フラクション』
ご本人は作中に登場するとおりの方なのですが、素敵な方です。決して……(おっと、ネタバレ寸止めだ)。

続いては倉阪鬼一郎サイン入り『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』です。
倉阪鬼一郎サイン入り『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』
サインを書きながら、「あれ? 以前にもサインしたことありませんでしたっけ」……って、それ、もう10年以上も前になるMYSCONのときですっ!
うひゃー、覚えていてもらっていて、なんとまあ、大感激です。
感激の余りに調子に乗ってしまい、疑問に思っていたことを訊いてみました。

『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』のなかで、「ある作品では、参考文献がミスディレクションになっている」と書かれていましたが、どの作品ですか?
(ちなみに「著者の言葉」と「著者近影」がミスディレクションになっているのは……同書ですよね?)

「そんなこと、教えられません! 自分で探してください!」と、けんもほろろに断られたらどうしよう……とドキドキしながら訊いていたチキン野郎なのですが、いえいえ。
にこやかに「ああ、あれは『無言劇』なんですよ」と教えていただけたのでした。
「誰も気付いてもらえなくてですねー」と、これまた作中人物と同じことをおっしゃられていたので、なんだかメタな気分に。
しかし『無言劇』とはまた意外な作品でした。家に帰って早速確認しようと思ったのですが……ひぇー、本がどこにあるのか判らない……。
すみません、改めて探しておきますです。

超絶的なバカミス、駕籠真太郎『フラクション』

もう、かれこれずっと「すごいよ」「すごいよ」というウワサばかりを聞かされていたので、とてもとても気になっていたのでした。駕籠真太郎『フラクション』。
しかしなかなか本屋で見かけないのです。
そこでネット書店でお取り寄せ注文をしたのですが、これがまた1冊だけだとメール便扱いになって、なかなか届きません。ウキー!
やきもきすること数日、ようやく届きましたよ。
もう会社から帰るやいなや、着替えもせずに即効で封を破ってむさぼるように読んでしまったのでした。

読了後の第一声が、「うあぁぁぁー、いったい何、コレ!」。
イヤ、もう、ホント、コレぐらいしか最初は言葉が浮かびませんって。
読後も唖然ですよ、唖然。AZEN。
スゴイのなんの。
これはもうウワサに違わず、あまりに想像を絶するバカミス中のバカミス。バカミスナンバーワンの称号を授けたいです。

どう説明したらいいんでしょうかねえ。
“マンガであることを最大の武器としたぶっ飛び方”でしょうか。
このラストに、読んだヒトは大爆笑するか、それとも大激怒するか、二者択一、どちらかでしょうね。
それほどまでの、あまりに凄まじい大バカぶりがラストで炸裂しているんです。

でもこれ、ラストでの一発オチかと思いきや、よくよく読み直したら、そんなこと全然ないのですよ。
ストーリー上でちゃんと伏線が張ってあるのですね。
そもそも、そのストーリー展開が素晴らしい。
物語が「連続殺人のエピソード」と、「作者自身がミステリについて語る」と、2つのエピソードが交互に組み合わさって構成されているのです。
もうこれは、マンガ界の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』ですよ!
(なんだ、それは)

この2つのエピソードが交互に語られていくことで、うまく物語は最後に向けて大きく収束していくのですね。
といっても、その収束があの「うああ!」と雄叫びを上げてしまうようなアレなんですが。うああ!
なにしろ、「主人公がうたた寝してしまった間に、バイト先の同僚女性が風呂場で胴体切断されていた」のに、「次の日、バイト先のタイムカードが押されてあり出勤した形跡がある」……って、これ、すごい展開ですよね。
ね、ね、ね、そうでしょう。
しかもこの主人公、犯人と思しき人物と取っ組み合いをして、気絶させられた一瞬の間に、この犯人らしき人物も胴体切断されちゃっているのですから、もうドッキドキなんですよ。
ところが!
その真相が……ぶわっはっは。なんてことなんですか、アレでしょう。アレ。
ああ、言いたい。このあまりのおバカっぷりをここでぶちまけて皆と笑いあいたい!

しかしこの作品、このオチというか、ネタというか、アイデアはぶっ飛んでいて確かにインパクトはあるのですが、どこかおかしいのです。
どうしても、物語の辻褄が合わないのですね。
「ははぁ、きっとこれは、作者が強引にオチをつけたからなのかぁ……」と思ってしまったのですが、いえいえ。
ちゃんと読み返すと、ウッヒョー!
これって作者が物語自体に大きな仕掛けを施していたんですよ!
その大仕掛けが「違和感」となって、最後の最後になってようやく明らかになるという……すごい贅沢なつくりになっているのですよ。
もうスゲーの、なんの。
ああ、言いてえ、メチャクチャこの内容を言いてえー。

そうですよ!
もう1人でも多くのミステリファンに、このバカミスナンバーワンの作品を読んでもらって、このあまりのバカさ加減と、しかし丁重に積み重ねられた伏線の数々、そして物語全体に仕掛けられた作者のトリックを、大いに語り合いたいものです……うずうず。

初野晴『初恋ソムリエ』はやっぱり表紙と帯で損をする

「青春ミステリ」という表紙と帯に、危うく読み飛ばしてしまうところだった初野晴の『退出ゲーム』。

そのシリーズ続篇が、『初恋ソムリエ』として帰ってきましたよ!
そろそろ発売されている頃だと、先週金曜日、会社帰りに丸善の丸の内本店に立ち寄ってきました。
2階のミステリ書籍のコーナーを覗いてみたのですが……ありません。
平台にも棚にも、初野晴の新刊として『初恋ソムリエ』が並ばず、出ていないのですね。
まだ入荷されていないのかなぁ……と『初恋ソムリエ』は探すことを諦め、他にも何かおもしろそうな本はないかなと、店のなかを歩きまわっていたのです。

すると……あれ? あった、あった、ありましたよ!
『初恋ソムリエ』がちゃんと平台にドッサリと積みあげられているではありませんか。
文芸書の女性作家コーナーに山積みの初野晴『初恋ソムリエ』

ところがこれ、この本が積み上げられてあるのはミステリ書籍コーナーではなく、文芸書コーナーなんですよね。
しかも、そのまわりに置かれてある本を見てもらえば判るかと思いますが(角田光代、本谷有希子、山崎ナオコーラ、原田マハ……)、ここって「女性作家のコーナー」なんですよ……。
いや、そりゃまあ確かにこの表紙と帯のデザインだと、「女性作家のイメージ」という感じがしますけどね……。
女性作家の作品といってもいいデザインの初野晴『初恋ソムリエ』

でも著者近影をみたら、初野晴って紛うことなき男性作家なんですけどねー。
ぼく、間違えてませんよね?
心配になってきたので、念のため「初野晴」をキーワードにGoogleイメージ検索をしてみました。
すると……えっと……

どなたなのでしょうか、この方……?
「初野晴」で検索すると表示された方

丸善の担当者の方、Google画像検索で表示されたこの方を見て「ああ、初野晴って女性なんだ」と判断されたのでしょうか。
いや、まさか……。

しかし初野晴って、表紙デザインと帯に縁がないですよね。
前作の『退出ゲーム』だって収載されたどのエピソードも、緻密に組みあげられたロジックの美しさに「本格ミステリ」としての傑作を感じさせられるほどの作品なんですよ。
なのに害のない表紙デザインやあまり引き込まれない帯の推薦コメントに、単なる「ラノベ感覚の青春ミステリ」という雰囲気しか感じられなかったのですね。
講談社ノベルスから出た『1/2の騎士』だって、あのデザインで内容が本格ミステリだなんて思えませんって。
どんなファンタジーものだと思っていたんですね。
それだけにどちらの作品も、肝心の読者層にアピールが届いていないのではないかと、思ってしまうのです。

今回の『初恋ソムリエ』なんて、ついに「ミステリ」というジャンルからも外れて文芸書扱いとなり、さらには作者が女性とまで思われてしまったなんて……嗚呼。
角川書店さん、このデザインでは販売戦略がかなり明後日の方角を向いてしまってもったいないことになっているのではないですか……などと、余計な心配をしてしまうのです。

これまでにも有川浩柴田よしき桜庭一樹が男性作家と間違われているのを見てきましたが、「男性作家を女性と間違える」というケースは初めて見たかもしれません。
(デビュー当時の北村薫の場合、覆面作家だったから仕方ないですよね)

ちなみにこの『初恋ソムリエ』は、丁寧にも女性作家コーナーの棚にも1冊、ちゃんと挿されてあります。
やっぱりこれ、素で間違えているっぽいですよね。
素で初野晴を女性作家と間違えているっぽい

“素で間違えている丸善”といえば、以前にも芥川賞作家の磯崎憲一郎の“崎”の字を間違えたままずっと、POPを張り出していたこともありました。
うーん、いろんな意味で大丈夫なのでしょうか、丸善丸の内本店……。
まさかジュンク堂と合併するということで社内が大揺れに揺れていて、「作家の字体とか、男性とか女性とか、そんなこと知らねぇよ! こっちはそれどころじゃないんだ!」となってしまっているとか。
いや、まさかそんなことではないですよね……?
(ゲスの勘ぐり)

中村佑介のイラスト画集「Blue」のマウスパッド付サイン本

森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』は、その小説作品の面白さもさることながら、やはり小説の世界観にピッタリの表紙イラストがまた、読者の想像力を高めて、相乗効果的に面白さが膨らんでいったのではないかと思うのですね。

例えば、あの表紙が単に抽象的なオブジェとか絵だったら、あそこまでのワクワク感もなく、手にとって読んでみよう!という気持ちにはあまりならなかったのではないかと思うのですね。

その表紙イラストを描いたのが中村佑介という新鋭のイラストレーターだそうです。
本好きにとっては、彼のイラストは森見登美彦や石田衣良、創元推理文庫からの江戸川乱歩などでもおなじみなんですが、音楽ファンにとってはASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットの方が、馴染みがあるそうですね。

あと、すっかり勘違いをしていたのですが、有川浩の『植物図鑑』は、中村佑介ではありませんでした。
……というか、では、これは誰?

その彼の作品を一同に介したイラスト画集「Blue」が発売されたのですね。
これがもうかなりいいのですよ、いい。ステキ。素晴らしい。ワンダフル。
彼独特のタッチによる世界観に包まれた全175ページの作品のひとつひとつが、もう見ていて全然飽きないのですね。
ここに描かれている女の子たちは、ノスタルジックだったり、切なさを感じさせられたり。あるいは逆に見ているこちらを元気づけてくれたり、その立ち振る舞いの格好良さに打ち震えさせられたり。
発売当初からずっと「欲しいなあ」「欲しいなあ」と思い続けていたのですが、お値段がお値段だけに、なかなか買うところまではいかず、いつも立ち読みでお茶を濁していたのでした。

ところが。
今日、丸善の丸の内本店に行ってみると……あれ?
もともとこの画集はサンプルの1冊を除いて、すべて立ち読みされないようにシュリンクが掛けられてあるのですね。
しかしどう見ても、平積みされてあるなかで上の2冊だけ様子がおかしいのです。
よくよく見てみると……「サイン本」って……これ……。
赤ボールペンによる走り書きがシュリンクの中に封入されてあるのです
まさかまさかの「赤ボールペンによる走り書き紙片」がシュリンクの中にひらりと入れられてあったのですよ。
しかもそのうちの1冊は、「特製マウスパッド入り」なんて書いてあるのですよ。
赤ボールペンによる走り書き「特製マウスパッド入り」とは、いったい何……

サイン本というのは判るのですが、「特製マウスパッド入り」というのはいったいどういうことでしょう。しかも1冊だけ。
メチャクチャ気になるではありませんか!
そんな訳で辛抱たまらず、結局、買ってしまてちるのでした。
そうなんですよ、何だかんだ言いつつも、「欲しいなあ」と思っていた本って、最終的にはいつの間にか手にしているパターンって、多いと思うのですね。
これが運命の出会いってやつなんでしょう(← 違うと思います)。

シュリンクをバリバリバリッ!と豪快に破り取ると、なかからまず出てきたのは……出たっ! マウスパッド!
表紙イラストと同じ作品が描かれてあるマウスパッド(もったいなくて使えません)
光学式やレーザー式のマウスでもちゃんと使えそうな薄型タイプなんですよ。
ちょうど会社でマウスパッドがなくて滑りが悪いよなあ……と思っていたところだったのです……が、いえいえ。
もったいなくて使えませんって。

そして、中村佑介のサインは……と見てみると……ウワオウ!
イラスト入りの豪華なサインが中扉にドーン、と描かれてあるのですよ!
ヘイ、そんな寂しそうな顔して泣かないでおくれよ、ハニー……。
中村佑介『Blue』のサイン

ところでこの画集、きっとCDジャケットをイメージしてつくられていると思うのですね。
だから判型もも正方形に近い変形判であるうえ、さらに厄介なのが「帯」。
通常よくあるような「腰巻き」タイプではなくて、CDシングルに付いているような「1枚の用紙」+「帯部分をはみ出させて折り返し、“帯”のように見せかける」タイプなんです(説明しづらいなあ……)。
とにかく、いろんな意味で本棚に置いておくことができない危険な本であるということなんですね。
この本、今後は「帯付き」であることが、何よりも重要な本になるに違いありません。
どうやって保管しよう……とほほほ。

【追伸】
有川浩『植物物語』の表紙イラストは誰?と書いたところ、早速「カスヤナガト」作品であることを教えていただきました。ありがとうございます!
(実は調べようと思っていましたが、積み上げられた山のどこかに本が埋もれてしまっていて、確認することができませんでした……)
ちなみに「カスヤナガト 中村佑介」で検索してみたところ、やはり同じように有川浩『植物物語』のイラストで混乱してしまっている方が他にもいる模様……。

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