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山尾悠子『歪み真珠』サイン会(紀伊国屋新宿本店)

ああ、なんだかまだ信じられないんです。
山尾悠子が新刊を出したというだけでも「あわわわ」とブルってしまったのに、さらにサイン会まで行われるとは……キャー!

そんな訳で仕事帰りに、紀伊國屋書店新宿本店へ行ってきました。
あらかじめ取り置きをお願いしていた1階レジカウンターで本と整理券を引き取り、サイン会場となっている9階に向かいます。
……が、なんてことですか。
花の週末、金曜日の夜ということで、お客さんが多いのなんの。
エレベーターがいっぱいなんですよ。

うーん、仕方ありません、9階目指して階段をエッチラオッチラ上っていきました。
すると……ラッキー!
開始時間までまだ15分ほどあったのですが、すでに列は2階分ほど伸びて、最後尾は7階あたりになっていたんです。
このまま9階までノンストップで上がると、もうブッ倒れてしまうところでした。
最後尾に並ぶと、すかさず係員がやって来て、「整理券の裏面にお名前を書かれますと、為書きもいただけます」。
ハーハーゼーゼー言いながら「判りました」。

ところで今回の本は函入りのうえ、本のカバーがパラフィン紙なんですね。
昔の「特別書き下ろし文学小説」みたいな、あんな感じです。
これだとサインをしていただくとき、どうするのかなーと思っていたら、ふたたび係員が「お待ちいただいている間に、あらかじめ函から本をお出ししておいてください」とのことで、なるほど。
まー、よくよく考えりゃ、それが当たり前のことですね。

……が。
函から出すと、本のカバーがパラフィン紙である、というところがクセモノなんですね。
なにしろ水分や脂分をよく吸い取っちゃうのですから、緊張のあまり(と、階段を7階まで上ってきた直後)、手に汗かいているしまっているのです。
こんな状態でパラフィン紙にくるまれた本なんて持とうものなら……ペトペトのバリバリのクチャクチャになっちゃうこと間違いありません。
かといってパラフィン紙を外してしまったら、きれいにくるみ直す自信もありませんし。
そんな訳で、ギリギリまでレジ袋に入れておくのでした(あったまいいー)。

そうこうしているうちに、列は徐々に進んでいきます。
3名ずつ区切って進むようになっていて、いよいよ会場に突入。
なんというか、部屋に一歩入ると空気が違うんです。
シンと静まり返った会場内に、本を置く音、ページをめくる音、ペンを走らせる音、それだけが響いてく、静まり返った緊張状態なんですね。
その緊張状態にあるのは、やっぱりご本人の圧倒的な存在感がヒシヒシと、行列している我々に伝わってくるからでしょう。

しかし、初めてそのお顔を拝見させていただく山尾悠子ご本人は、そんな圧倒的な存在感を醸しだすような方ではなく、とてもしとやかで素敵なオーラに包まれているのです。
しかも、わー、サインが終わると1回1回立ち上がって、「本日はありがとうございました」と丁重にお礼をされるのですね。
今日の定員は確か100人のはずだから……100回立ったり座ったりですか!?
だったらぼくの7階まで階段上りなんてツライなんて言えません!
もう、まったくもって申し訳ございません(←何を言っているのかよく判らなくなっている)。

「さてあと数人で順番はぼくだ」と緊張度MAXで前の方々を見ていると……あれ?
皆さん、整理券の裏に何やらメッセージを書き込んでいるのです。
もともと、今回の整理券は非常に大きく、B5サイズぐらいあったでしょうか。
その大きな整理券の裏面に、皆さん、為書き用の名前だけじゃなくて、メッセージもぎっしり書いているんですよ。
熱心な方だと、そういったところにもちゃんとコメントを書くのかー……などと呑気に思っていたのですが……どひゃーっ! エライことですよ。
なんと、この整理券の裏面は、実はメッセージ欄になっていたそうなんです。
がびーん、さっき為書き用の名前を書くときに全然気付かなかった……。
どおりで「為書き用に名前を書くには、スペースが余るよなあー」なんて思ってしまったわけです。
(そう思いながらも、「じゃあ、名前を心持ち大きく書いとこう」なんて思ってしまったという……大バカモノです)
山尾悠子サイン入り『歪み真珠』

そして、今回はさらにおまけまでご用意されていたのでした。
サインを書いていただくと、メッセージカードを1枚添えられるのです。
もう、まったくもって申し訳ございません(←しつこい)。
山尾悠子の直筆メッセージカード

さてそんな緊張のあまり、変な汗で危うくパラフィン紙のカバーをクチャクチャにしかけそうになったその帰り道、新宿駅の東口です。
そう、「カメラのさくらや」ですね。
特にPublic Image Limitedが好きだったので、「Live in Tokyo」のアルバム・ジャケットで煌々と光っているあのネオンが強烈な印象となって残っています。
そのさくらやが、この2月に全店閉鎖したばかりなのですが、この東口店は、屋上の看板そのままに、もうビックカメラとしてオープンしていたのでした。
新宿駅東口の顔が変わろうとしていました
こうして見ると、もう「Live in Tokyo」に残っている景色なんてまったくないのですよねー。

桐野夏生『ナニカアル』サイン会(丸善丸の内本店) のち雪

桐野夏生の新刊『ナニカアル』を記念してのサイン会が、丸善丸の内本店であったので行ってきました。
場所が丸善丸の内本店ということで、いつも会社帰りに立ち寄る「庭」みたいなところなんですよ、うわっはっは。
……などと余裕をカマして、時間ギリギリまでゆったり仕事を済ます予定だったのですが、そこはそれ、もうチキンハートなぼくなんです。
サイン会は7時からだというのに、6時を過ぎる頃からもう心はソワソワ、居ても立っても居られなくなっているのですよ。
6時15分には「帰りマース」とダッシュして会社を飛び出し、やってきてしまいましたよ、本屋さん。

しかしサイン会の列は、すでに丸善の2階外廊下をグンと伸び、空中通路で折り返すほどになっています。
うーん、この列の先頭は、いったいいつから並んでいるのだろう……。
というところでいつも思うのですが、こうしたサイン会での待ち時間(行列時間)って、いつ頃に来ると一番短くて済むのでしょうね。
例えば、開始時間ちょうどのタイミングで来ても、すでに長蛇の列ができていて、結構待つことになります。
しかし、だからといって早めに来て並んでも、始まるまでの待ち時間や、その前にすでに並んでいる人がいることを考えると、結局は同じ時間だけ並んでいるような気がしてなりません。

……ということは、そうだ! そうですよ! いい方法を思いつきました!
それは、「終了時間ギリギリに来る」という方法ですよ!
もう最後なので、待ち行列はかなり短くなっているはずです。だから待ち時間もかなり短いはずなんですね!
そうか、その手があったか。
だったら、サイン会の開始時間を過ぎても、まだゆっくりと仕事をしていればよかったというわけなんです。
なるほどねー。

……ただ。
コレはかなり危険なワザでもあるんですよね。
なにしろタイミングを誤ると、サイン会自体が終了して閉まっているのですから。
ハイリスク、ハイリターンな先物取引のようなデインジャラスさ。
やっぱり我々庶民は、コツコツと開始時間前に来て待つことの方がいいようです。

ところで。
これって桐野夏生サイン会に来ては、いつも言っているような気がするのですが、今日もまた、参加者の層が一種独特なんですよね。
男女比ほぼ半々なんです。で、女性が若い人が多いのに対して、男性は熟年層がやたらと目立つのです。
なんというか、娘に付き合っているパパたちと行った風情な行列風景。
ああ、なんとぼくの目の前では、そんな熟年層のひとり、それも夕刊紙を読みながら待っているオジさまが、なんと! 地べたに座り込んでいますよ! ウワーオ!
(サイン会の待ち行列で座り込んで待つなどという、初めて見た光景にちょっと興奮)

そんな訳で1時間ほどの待ち時間でお会いできた桐野夏生、相変わらずのアンニュイな感じでクールビューティなんですよ。
ステキです、ステキ。うっとり。
……あれ? でもTwitterのキャラクターとはちょっと違うような……。
そう思ったので、言ってみたんです。
「Twitterの書き込みもいつも楽しみにしています」って。
すると! おおう! なんとニッコリ笑って「ありがとうございます」。
ああ、もうその笑顔をいただけただけで、今日はご飯をどんぶり鉢に軽く3杯はいただけます。
ごちそうさまでした(←挨拶がおかしい)。
桐野夏生のサイン入り新刊『ナニカアル』

そんなこんなでハナ歌気分で電車に乗り、自宅に帰ってきたのです。
たしかに、東京駅ではみぞれ混じりの雪が降っていたのですが、そんな大したことはなかったのですよ。
ところが、最寄り駅で電車を降りて、改札口を出たとたんに「ナンジャ、コリャーッ!」。
誰もが松田優作です。
改札口の外は、歩道一面にシャーベット状の雪が積もっているんです。
場所によっては、通行人の足で雪が踏み固められて、すでにアイスバーンと化していたりするのです。
歩道には、シャーベット状に雪が積もり始めています

ウッヒャー、こいつはデインジャラス。モウスト・デインジャラス。
コケないようにへっぴり腰で歩いているオジサンの隣を、これまたヘッピリ腰で歩くぼく。
歩道の上でのツルツルバーンのデッドヒート。
コケなくても、腰をいわしてしまいそうですよ。

なんとか這うようにして家に帰ってきたのですが、道路上はまだシャーベット状でも、家の屋根には雪として積もっていました。
家の屋根はすっかり雪化粧
うーん、やっぱり明日のことが心配になってきました。
会社はいったいどうなることやら。

第3回 世界バカミス☆アワード(青山ブックセンター本店)

今年も、青山ブックセンターでバカミスの祭典「世界バカミス☆アワード」が行われるということで、昨年に引き続いて参加してきました。
第3回 世界バカミス☆アワード(青山ブックセンター本店)

司会進行は、「バカミスのエバンジェリスト」小山正さん、「バカミスト」川出正樹さん、「『マトリックス』をワイド画面で引き延ばしたような(by 小山さん)」杉江松恋さんの3名に加え、今年は日下三蔵さんも入った4名で行われました。
ここにゲストの倉阪鬼一郎さんと駕籠真太郎さんの2名が加わる訳です。
第3回 世界バカミス☆アワード(青山ブックセンター本店)
そして、さらには次のような豪華メンバーが「特別審査員」として参加していたのでした。

  • 霞流一(「バカミスと言えば、この人」)
  • 新保博久(朝日新聞に「笑えるバカミス」を掲載)
  • 鳥飼否宇(今日のために奄美大島から駆け付けた!)
  • 日暮雅通(鳥飼否宇と共に昨年のゲスト)
  • 宮脇孝雄(第1回のゲストにして、クライブ・バーカー『ミッドナイト・ミートトレイン』の翻訳者)

始まる前に、まずは選考方法についての説明です。
例年はmixiのコミュニティ内だけで候補作の公募がされていたのですが、今年は“開かれた環境”をめざして、Twitterでも公募を行っていました(「やっぱり“世界バカミス☆アワード”だからね」とのことで、オバマ大統領でも投票はウェルカムだったそうです(笑))。
その集計の結果、内外の40作品が「第1次選考」として選ばれ、さらに2次投票の結果、上位12作品が残されました。
その後、小山正・杉江松恋・川出正樹・日下三蔵の各氏により激論が交わされた上で、最終候補作として5作品が選ばれたそうです。
しかし今年はさらにネット投票も実施、選出済みの5作品以外のものが上位に入ったら、それも足すということになり、その結果、ネット投票枠から1作品が選ばれたそうです。
こうして、計6作品が「第3回 世界バカミス☆アワード」の候補作品が決定したのです。

その6作品をプレゼンする前に、まずは惜しくも最終選考から漏れてしまった6作品が駈け足で紹介されました。
いやー、しかしバカミスを紹介してもらうのって、どうしてこんなにワクワクしちゃうのでしょうねえ。
聞きながら、もうニタニタ、ヘラヘラ、気色悪い顔になっちゃって、申し訳ありませんです。

獅子宮敏彦『神国崩壊―探偵府と四つの綺譚』(原書房)
架空の国の歴史を作りあげた4つの短篇からなる作品だが、とにかく3作目となる表題作が素晴らしい。どうしてこのような作品を考え出してしまったのか……。
もちろん他の短篇も素晴らしいのだけど、この作品だったら抱かれてもいい(笑)と思えるぐらいに抜きん出ている。
パブロ・デ サンティス『世界名探偵倶楽部』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
1889年に行われたパリ万博に合わせて世界中の名探偵が集まるが(この時点で清涼院流水を彷彿させる)、事件が発生し、それぞれが活動を始めるのだけど……ミステリとしての「探偵と助手」の関係性に焦点を合わせた物語。
「助手はどうすれば名探偵になれるのか」というあたりがメタになっている。
平山夢明『ダイナー』(ポプラ社)
ハンバーガー小説(笑)。
殺人鬼が集う「殺人レストラン」でウェイトレスとして働くことになった女性の、純愛と成長の物語……で、とにかくお腹が減る。しかしそこは平山夢明、もちろんビチビチグチャグチャな描写もあるので、死体を見ながらご飯を食べるような……。
特筆すべきは、レストランに集う殺人鬼たちが皆、変な特技や性格、肉体改造をしているところ。
これはもう「山田風太郎忍法帖」だ。
詠坂雄二『電気人間の虜』(光文社)
とても紹介に困る作品であり、読者によってラストは賛否両論分かれそうな大変な問題児。
どれほど困った作品かというと、以前に綾辻行人が「作中にぼくの名前が出てくるんですよね」と困ったような顔をするほどの困った本(会場内爆笑)。
カール・ハイアセン『迷惑なんだけど?』(文春文庫)
重すぎる母親の愛に困る男の子の物語。
この母親は正義感が強いあまり、男の子が目を離すとすぐに、ルールを守らない人に「お仕置き」を仕掛けるというもの。
エリック・ガルシア『レポメン』(新潮文庫)
近未来、臓器移植の申し込みがスーパーマーケットでも気軽に行われるようになっている世界。
しかし、臓器移植のローンが支払えなくなると、移植された臓器を取り返されてしまうというルールになっている(今だったら借金を返せないと「臓器売ってでも」と言われるけど、それが問答無用で行われる)。
かつて、その取り立て屋だった男が主人公の物語。
臓器を取り立てるということで、ビチビチグチャグチャな描写はあるけれど、ホロリとさせられる。

惜しかった作品は以上の6作品でした。
そして、ここからいよいよ最終候補作の紹介に入ります。

ドゥエイン・スウィアジンスキー『解雇手当』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
前回も『メアリー・ケイト』でエントリーしたこの作者が再びのノミネート。
休日の朝一番に、社員を会社に呼び出した社長が「君たち全員を殺す」と宣言、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄となる……という“なんじゃそりゃ”な物語。
全員協力し合って脱出すればよさそうなものなのに、誰もそうしないし(笑)。
あらすじ紹介には、ハイパー版『そして誰もいなくなった』 とあるが、どちらかというと『バトルロワイヤル』でしょう、それもいい大人たちの(笑)。
日暮雅通「ラストが言えないのがつらいなー」
ちなみにこの作者、こうしたバカミス以外にもビジネス書が出版されている。
それが、ソフトバンククリエイティブから出版された『ヌスムビジネス』というもので、内容は“産業スパイになる方法”。
と言っても、「高層ビルからどのように脱出するか」などと、日本では絶対に役立たないが(笑)。
ジョシュ・バゼル『死神を葬れ』(新潮文庫)
かつてマフィアの殺し屋だった研修医が主人公。
メディカルミステリというよりも、ぶっとんだキャラクタ造形が楽しい。
ギャグ満載の現在のエピソードと、シリアスな殺し屋時代のエピソードの対比が素晴らしい。
しかし本当に何気ないところで、ミステリとしても大きな伏線が張られていたりするので、ギャグやオフビートに目を奪われていると、「おおっ!」と驚かされること必至。
杉江松恋「註釈小説としても読める作品で、各章に『アメリカの製薬会社の営業は色仕掛けで医師を篭絡しようとするのがあたりまえ』のような豆知識が書いてある。全体的に能天気で、同じ医師作家でも日本の医療ビジネスについて悲観的なことしか書かない海堂尊とはだいぶ異なっている」
飴村行『粘膜蜥蜴』(角川ホラー文庫)
戦前の日本のイヤな時代の物語。唯一史実と異なるのは、トカゲ人間が存在していると言うこと。
東南アジアのトカゲ人間の国を日本が征服したため、彼らは日本に連れてこられ、下男や労働力として働かされている。
もともとトカゲ人間は、人間の脳を食べるものだが、有力者の息子の自宅で働く下男のトカゲ人間“富蔵”は日本生まれの日本育ちのため、ご飯と味噌汁しか食べず、その上軍国少年で将来は日本の兵隊さんになるのが夢という……。
こうした第1部が突然に第2部になるとまったく趣向の変わった「南方秘境小説」となり、第3部でそれまでのエピソードが融合することで、大きな愛が産まれるという物語。
小山正「第2部なんて小栗虫太郎の冒険小説を彷彿させて、ワクワクさせられた」
駕籠真太郎「当たり前のようにトカゲが登場して、誰も疑問に思わないところが“昔話”のような感覚。だからか、残酷描写もおとぎ話のよう」
マット・ラフ『バッド・モンキーズ』(文藝春秋)
杉江松恋「全米が泣いた……俺のなかでは」
精神科医に尋問を受ける少女と、バッド・モンキー(悪しき者)を葬る活動に勤しむ少女のストーリーが交互に語られる。
ブルーワーカーとして社会の底辺で誰にも信じてもらえずに生きなければならない、それでも自らの信念を貫く人間というハードな側面と、バッド・モンキー(悪しき者)を葬る武器が「オレンジ色の光線銃」というおバカさの対比に、「オースティン・パワーズ」のような、“バカが世界を救う”小説を見た思いがする。
駕籠真太郎『フラクション』(コアマガジン)
連続輪切り魔が登場するエピソードに、作者自身が登場してミステリ論を語るエピソードが交互に組み合わされる。
この作者のエピソードが、「作者」対「読者」という特殊な構造となる。
通常、ミステリでは一般的には「探偵」対「犯人」だが、それを「作者」対「読者」の次元まで引き上げているところが素晴らしい。
あとは絵のインパクトとトリックに、読了したら1日はボーッとしてしまう。
読書会では語り合える楽しさもあるから、友情をはぐくめる作品でもある。
霞流一は、同書内での「特別対談」のときは、製作上の関係で、まだ『フラクション』を読んでいなかった。
後日、献本として送られてきた同書を初めて読み、「先に読んでいたら自信喪失して対談は引き受けなかった」とか。
20世紀のバカミスの聖典がカーの『魔女の笑う夜』だとすれば、『フラクション』は21世紀の聖典であってもおかしくはない程の作品。
倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』(講談社ノベルス)
日下三蔵「……どこまで言ってもいいのかなー(困)」
全部で190ページあるうちの80ページが解決篇と、異常なほどに解決パートの比率が高いのも特徴。
倉阪鬼一郎「この本は文庫にはできないでしょうねー」
これだけのものを書く労力を考えると、1冊分の収入では合わないのではないだろうか。しかも文庫化もできないとなると、さらに合わない……。
鳥飼否宇「これだけのものだと、校正も大変だったのでは?」
倉阪鬼一郎「講談社ノベルスでの字送りのルールがあるのを知らずにいたため、初校は真っ赤になってしまったが、そこを指示することで再校ではピタッとおさまった」

ここで最終投票に入ります。
特別審査員と観客には、あらかじめ投票用紙が渡されてあり、最終候補作6作品のなかから「この本を読みたい」と思ったものを選びます。

集計結果を待つ間に、ゲストへのインタビューとなりました。

【倉阪鬼一郎】
初めて「バカミス」を意識して書いたのは『四神金赤館銀青館不可能殺人』。
確かに、それまでの作品でもネタとしてバカミス的なものもあったが、“アッパー系”ではないから……(会場内爆笑)。

ピーター・ディキンスンの『盃の中のトカゲ』を読んで、伏線さえ張っていれば、何をしてもいいんだ、読者は許してくれるんだなと学習した(笑)。
本格ミステリと言うよりも、だまし絵が好きだ。
ひとつひとつは魚や野菜なのに、全体で見ると人間だったというようなもの。
このような、どうでもいいと思われそうな細かいことを丁寧に描いていって、最終的には全然異なるものを描くものが好き。

『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』を書くのは、確かに最初は大変だったが、根を詰めれば仕掛けは描けるもの。
昔、出版社の校正を朝から晩までやっていたときに比べると、この作業は格段に楽しい。
根さえ詰めれば仕掛けはできるけど、その仕掛けを必要とする理由付けの方が難しい。
『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』も、最初からここまではしていなかった。
『四神金赤館銀青館不可能殺人』と比べるとちょっと弱いかなとドンドンと足していっていたら、ここまでになってしまった。

もともと幻想小説などは読んでいたが、ミステリを読むようになったのは30を過ぎてから。
岡嶋二人が引退した頃で、「席が空いているに違いない」と友人と合作して乱歩賞に応募しようということになり、色々と勧められたもの読むようになった。
ちなみにその友人は、今は作家ではなく、カタギの仕事をしている。

【駕籠真太郎】
もともとミステリは好きだったが、ここまで1冊まるまるミステリの作品というものは初めて。
ただし、好きといっても、正統派の本格ミステリよりも、バカミスや叙述モノなど変則的なジャンルのものがいい。

今回は、もともと1冊出版することになっていて書き下ろしで出したかった。 内容も、せっかくだから自分の好きな変則的なミステリで行こうということで、このような作品になった。 マンガでミステリといえば、金田一少年やコナンなど、キャラクタものが主流だが、自分はそういったキャラクタが苦手なので、「キャラクタに頼らないミステリ」を描こうと思った。

マンガを描くだけでなく、様々なグッズなども作成している。 (ご本人のホームページでも販売中)

  • 「バラバラ死体」のガチャポン
    手とか、足とか、バラバラに切断された人体のパーツだけが入っている
  • 泳ぐ水死体
    水死体の人形の腹に水中モーターが取り付けてあるもの
  • ジオラマ
    ゴミ袋に死体を入れて収集所に出しておいたらカラスに漁られてゴミ袋が破け、なかの死体が出てきている様子のジオラマ

ちなみに「バラバラ死体」のガチャポンが置いてある場所は、おそらく「バラバラ死体 ガチャポン」で検索すると見つかるでしょう……とのこと。

そしていよいよ投票の集計ができたようです。
栄えあるアワード受賞作が小山正さんにより発表されました。

第3回 世界バカミス☆アワード 受賞作
倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』(23票)
駕籠真太郎『フラクション』(21票)

今回は非常に僅差ということで、同時受賞となりました!
おめでとうございます!
記念品は、ポスターの図柄がアクリル板でとじられた盾(のようなもの)です。 第3回 世界バカミス☆アワードの盾(のようなもの)

他の作品への投票数は以下のとおりです。
ドゥエイン・スウィアジンスキー『解雇手当』(5票)
ジョシュ・バゼル『死神を葬れ』(4票)
飴村行『粘膜蜥蜴』(5票)
マット・ラフ『バッド・モンキーズ』(6票)

その後は、えへへへ、いよいよサイン会なんですよ。
こちらが駕籠真太郎サイン入り『フラクション』です。
駕籠真太郎サイン入り『フラクション』
ご本人は作中に登場するとおりの方なのですが、素敵な方です。決して……(おっと、ネタバレ寸止めだ)。

続いては倉阪鬼一郎サイン入り『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』です。
倉阪鬼一郎サイン入り『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』
サインを書きながら、「あれ? 以前にもサインしたことありませんでしたっけ」……って、それ、もう10年以上も前になるMYSCONのときですっ!
うひゃー、覚えていてもらっていて、なんとまあ、大感激です。
感激の余りに調子に乗ってしまい、疑問に思っていたことを訊いてみました。

『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』のなかで、「ある作品では、参考文献がミスディレクションになっている」と書かれていましたが、どの作品ですか?
(ちなみに「著者の言葉」と「著者近影」がミスディレクションになっているのは……同書ですよね?)

「そんなこと、教えられません! 自分で探してください!」と、けんもほろろに断られたらどうしよう……とドキドキしながら訊いていたチキン野郎なのですが、いえいえ。
にこやかに「ああ、あれは『無言劇』なんですよ」と教えていただけたのでした。
「誰も気付いてもらえなくてですねー」と、これまた作中人物と同じことをおっしゃられていたので、なんだかメタな気分に。
しかし『無言劇』とはまた意外な作品でした。家に帰って早速確認しようと思ったのですが……ひぇー、本がどこにあるのか判らない……。
すみません、改めて探しておきますです。

「工場夜景ジャングルクルーズ」に参加してきました

先日、東急電鉄の長津田検車区を「大人の社会見学」して以来、すっかりスイッチが入ってしまったようなのです。
日々、何かの見学をしたくてウズウズしています。

そんなある日、これだ!と見つけたのが「工場見学ジャングルクルーズ」。
しかし予約状況を見ていると、いつも1ヶ月以上先までビッシリと満席が続いているのです。
もうすっかり心は折れモードなんです。
が、サイトをよくよく見てみると、「1名様の場合は満席の表示でもご予約をお受けできる日があります」……なにぃ!?

そんな訳で金曜日、早速電話してみましたよ。
「明日の土曜日、1名だけなんですが、何とか参加できませんでしょうか」
「1名様でしたら、大丈夫です、ご予約承ります」……ワオ。
訊いてみるものですね。

そんな訳で今日、夢にまで見た「工場夜景ジャングルクルーズ」に参加することができたのでした。
横浜港は赤レンガ倉庫の裏手にある「赤レンガパーク桟橋」に来てみると、おお、もう船が到着しているんですよ。
こちらが本日、90分間のお世話になる船です。
この船が、「工場夜景ジャングルクルーズ」に連れて行ってくれるのです

17時30分、いよいよ出港しました。
ちょうど夕焼けが横浜の空いっぱいに広がる時間帯で、もうここですでにウットリ度満開なんですよ。
横浜の街が夕焼けのシルエットに沈んでいきます

これは陸地側からでも、よく見ることができますね。
る“双子”煙突が特徴のトゥイニー・ヨコハマ(東京電力横浜火力発電所)。
“双子”煙突が特徴のトゥイニー・ヨコハマ(東京電力横浜火力発電所)

東芝京浜事業所です。
東芝京浜事業所と、JR海芝浦駅
この敷地内には、JR鶴見線の海芝浦駅があります。
東芝の社員証を持たないと改札の外に出られません。
だから一般人がこの駅まで来てしまうと(終着駅)、車内やホームでのんびり折り返し出発を待つしかありません。

ちなみに、なぜこのクルーズが「ジャングルクルーズ」かというと、工場群の煙突がまるで林のように建ち、またあちこちに設置された首の長い港のクレーン(ガントレークレーン)がまるでキリンのように見えるから……なんだとか。
キリンのように見えるガントレークレーン

三つ子のガントレークレーンたち。
とっても姿勢がいいんです。ピーン。
とても姿勢がいい三つ子のガントレークレーン

こちらは東電LNG基地です。
東電LNG基地

そしてこちらが東扇島オイルターミナルです。
東扇島オイルターミナル
こちらはナトリウム灯でオレンジ色の照明が当てられているのですが、これはオレンジ色が注意を喚起するので、危険物貯蔵の照明には割と使われているそうです。
(トンネルのオレンジ色も同じような理由によるとのことでした)

こちらは日清製粉川崎工場です。
日清製粉川崎工場
建物の正面にある2本のクレーンが、それぞれVの字となっているところから、何となく両手でVサインをしているお調子者のようにも見えてきます。

これは、東京電力扇町火力発電所です……って、さっきも火力発電所見たばかりなのに、ここにもあるのかー。
東京電力扇町火力発電所

そして京浜運河の終点、東燃化学のフレアスタック(煙突からの炎)を目印に引き返します。
東燃化学と、フレアスタック
ちなみにこのフレアスタック、今日は「普通の大きさ」なんだとか。
日によってはもっと大きなこともあり、そんなときは都会でもよく見えるため、火事の通報もあるそうです。
……うちの家からもこうしたフレアスタックがよく見えているんですが、確かに、日によっては空が真っ赤に染まっていることがありますからねー。

京浜運河も終着点まで来ると、羽田空港を離発着する飛行機や、首都高速のパーキングエリアである「海ほたる」もよく見えます。

そしてここからの復路は、京浜運河の「枝」となっている運河に入り込み、その奥にある工場群を見てまわります。
まずは東亜石油精油所です。
東亜石油精油所

そしてJR東日本川崎火力発電所。
JR東日本川崎火力発電所
ここで首都圏の電力を発電し、送電、それで足りなければ東京電力から購入し、逆に発電量が余れば東京電力に売っているそうです。

そしてこのクルーズもいよいよラストとなるポイントに入り込んでいきます。
まずは大川町にある昭和電工。
大川町にある昭和電工

そして、この運河の奥にある、扇町にある昭和電工。
本日最大の見所、メイン・エベントなんですよ!
本日のメイン・エベント、扇町にある昭和電工
なんですか、この要塞のような存在感。
素晴らしい……もう参加者全員、ため息つきまくりなんですよ(たぶん)。

こうして90分間はあっという間に過ぎ、「帰らないでー」という心の叫びも空しく、大黒埠頭ならびにライトアップされた横浜ベイブリッジ前を過ぎて行きます。
大黒埠頭とライトアップされた横浜ベイブリッジ

ここを越えると……嗚呼。
いよいよ現実世界へと帰る横浜の街が見えてきたのでした。
もうすっかり夜景モードになっていた横浜の街

こうして夢のような非現実世界の90分を過ごしてきたのでした。
場所が「海の上」ということもあって、寒いかなと手袋やインスタントカイロを用意していたのですが、いえいえ。
もう興奮のあまりに、アドレナリンが全身に吹き出していたからなのか、まったく寒さは感じられませんでした。
だからといって、暖かかったのかというと、ノン、ノン、ノン。
船を下りたら、我に返ったのか「寒っ……」。手なんてもう冷え冷えのピエピエなんですよ。
幸いにまだまだ店は開いていたので、赤レンガ倉庫で暖かいコーヒーを飲んで帰らなければならないほどでした。

これから参加される皆さんはぜひ、「寒くないよ」と思っていても、防寒対策だけはしっかりとなさってください。

大江健三郎『水死』刊行記念サイン会(丸善丸の内本店)

金曜日、花の週末の夜に会社近所の本屋さんで、大江健三郎のサイン会がある!……とのことで行ってきました。
大江健三郎『水死』刊行記念サイン会(丸善丸の内本店)

うああ、大江健三郎ですよ、大江健三郎。
大御所とか、御大とはまったく違う次元の、そう、もう「雲の上のヒト」と言ってもいいぐらいの方なんですですよね。
例えば、ぼくにとっての御大といえば島田荘司ですが、彼のサイン会のときも、確かに緊張のあまりにオシッコを漏らしそうなほどになってしまいました。
ただ、今回はなんというか、またそれとはまったく種類の違う緊張感なんですよね。
朝から「今日の夜、大江健三郎にお会いできる」と思うと、それだけでもう身体がガッチガチになっちゃっているんですよ。
会社にいても仕事になりません。

そんな訳で早く行きたいような、でも行くと卒倒してしまいそうで行かない方がいいような、複雑な気持ちのまま、18時半前、会社を出ました。
会場に着くと、列はもう店の外の空中通路で3列折り返しとなっていて、かなり伸びています。
男性率が9割で年配の方が多く、静かな興奮に満ち溢れている待ち行列

その列に並んでいる人々は、圧倒的に男性が多いですね。だいたい9割ぐらいが男性ではないでしょうか。しかも年配率が高いのです。
おヒゲを生やされていたり、いい生地のスーツを着られていたりして、なんというか、「学生時代からの読者です、会社帰りに来ました」といった部長とか、そういった方々が並んでいるという印象なんです。
そういった方は決して徒党を組むことなく1人での参加が多いようなので、これだけ列が伸びていてもどこか、シンと静まっているような、静かな興奮に満ちているような、そんな風に感じられるのも、また特徴的なのかもしれません。

並ぶこと1時間ちょっと、ようやく前の方まで回ってきました。
気さくに握手もしていただけるようです
(写真撮影は周囲からであればOKとのこと、前の方が握手されているいい写真を撮らせてもらいました)

次がいよいよぼくの順なんですね。
うあー、緊張してノドがカラッカラ、何もしゃべられません。
「よろしくお願いします」……うへぇ、声がかすれて変なオッサンですよ。
そんなガチガチの緊張ヤロー状態であることを察知したのか、ヘルプで付いているおヒゲのダンディな方(出版社の方でしょうか)が優しくフォローしてくれます。
うーん、素敵。
そんな訳でぼくも握手までしていただき、サインを無事にいただくことができました。
これ、“本物の”万年筆ですよ、本物。
一字一句丁寧に書いていただいたサインは、これ、もう、家宝ですね!
大江健三郎のサイン入り『水死』

いやー、それにしてもオシッコを漏らさなくてよかったー。
(結局、いつもの終わり方……)

懐かしい気分の社会見学で「大山顕の街歩きワークショップ-東急東横線編-(第3回目)」

「工場萌え」「ジャンクション写真」「団地写真」など、ニッチなマニア向けにニッチな写真観賞ジャンルを提供している大山顕さん。

その大山さんが講師を務めるワークショップが全3回の予定で、東急のカルチャーセンター(東急セミナーBE)で開催されるということで、参加しています。
今日はその最終回となる第3回目。
いつもは、渋谷にある教室に集合するのですが、今回は東急田園都市線の長津田駅に集合なんですよ。
この駅近くにある、東急電鉄の検車区のひとつである「長津田検車区」を皆で見学するという、いわば番外編なのです。
東急電鉄の長津田検車区

ポカポカ日和の気持ちいい住宅街を、線路に沿って歩くこと数分、すぐに「検車区」に到着しました。
気持ちのいいお散歩日和

検車区の方のご案内で、電車がズラリと並んでいる場内のアチラコチラを見せてもらってまわらせてもらったのですが……いやー、スバラシイ! ハラショー!(←なぜにロシア語?)
参加者の誰もが、決して鉄道オタクというわけではなかったのですが、電車をあんな間近で見てしまっては、電車がズラリと並ぶ美しくてカッコイイ姿を見せられては、テンションはずっと上がりっぱなしになってしまいますって。
皆でキャーキャー、キャーキャー大騒ぎしながら、検車区のなかをあっちに行ったり、こっちに行ったり、もうお腹いっぱい堪能させていただきました。
やっぱり「大人の社会見学」って必要だと思うのですよねー。
もう単純に楽しいし。

ところで今日のこの見学、車検区内では写真はご自由にお撮りくださって結構です、とのことで、「やったね! これで今日のブログネタは決まりだね!」と思わず喜んでしまったぼくなのでしたが、「ただし!」。
ここで撮影した写真は、「自分ひとりがニヤニヤ楽しむ用」としてのみお使いください、とのこと。
何でもセキュリティの関係上、ブログに載せたらダメなのです……えーん。

そんな訳で、どうもすみません。
バシャバシャと、アホのように、

  • 真正面からのドアップ写真
  • 電車の下、台車の下に潜り込んだ写真
  • 車庫でキレイに並んで美しい姿を見せている写真
  • 皆で線路上で歩き回っている写真
  • 電車を洗っている動画

……などなど、合計で300枚ほど撮ったのですが……うわーん。
その一切を、ここに載せることできないのですよー。
参加者全員がどれほどテンションが上がる場所であったのかは、皆さまのご想像にお任せします。

2時間弱ほど場内を見学したあとは、いよいよワークショップ本番です。
検車区の会議室をお借りしての、宿題発表が行われました。
自分で撮りためてきた写真を発表して行くのですが、全員がもうノリノリで大爆笑につぐ大爆笑。
また進行役の大山顕さんが、うまく発表者の引き出しを開けていってくれるんですよね。
ぼく自身も、前日までの整理がうまくできていず、どうなるかと思っていたのですが、大山さんがドンドンとぼくのなかにある妄想力を引っ張り出していってくれて、もうなんだかスゴイことになってしまいました。

だってこれ、傭兵あがりのクールなマンホールに、
傭兵あがりのクールなマンホール

ウーパールーパーみたいなかわいいマンホールなんですよ。
 ウーパールーパーみたいなかわいいマンホール

こっちは仲のいい2人兄弟と、
仲のいい2人兄弟の側溝のフタ

末っ子だけ仲間はずれにされている4人兄弟なんですよ。
末っ子だけ仲間はずれにされている4人兄弟の側溝のフタ

もうマンホールを見てしまったら、その家族構成が目に浮かぶようになってしまいましたとも。
エッヘン。

川上未映子『世界クッキー』刊行記念サイン会(有隣堂アトレ恵比寿店)

ついこの間、『ヘヴン』でサイン会に参加したばかりなのに、また川上未映子サイン会があると聞いては、もう居ても立ってもいられなかったのです。
そんな訳で、早めに会社を抜け出してアトレ恵比寿にある有隣堂にやってきましたよ。

サイン会そのものは、18時30分スタートだったのですが、今回は変則的に大きく2つのグループに分けられているようです。
整理券に刷られた整理番号が75番までだと、そのまますぐに列を作ってサイン会に突入なのですが、76番以降になると、整列そのものが19時まで待たなければならないようなのです。
思うに、川上未映子人気で150名ものお客さんが一気に集まると、待ち行列がパンクしてしまう……という店側の判断なのでしょう。

何しろ、有隣堂アトレ恵比寿店で行われるサイン会は、待ち行列が「え? ホントに? ここでいいの?」とビックリしてしまう、バックヤードの中なんですよね。
今日だって待っている行列のその脇には、「不良品 返品確認中」と書かれた紙が貼り付けられてある商品が積み上げてあるんですよ。
バックヤードの商品の横に行列中

うーん、外部の人間が並んでいるすぐ横に、こんな風に無防備に商品なんて置かれてあったら、ヒョイッと持っていかれそうなのですが……。
いやいや、サイン会にくるようなお客さんには、そんな悪いことをするような輩はいないということなのでしょう。
あるいは、ここに積み上げられてある商品って、確かに有隣堂の商品じゃないのです(たぶん)。
だから、「ここに並ばせておいても、まあいいか」って訳……ないですよね?

列を作っている客層は、(ぼくから見える範囲では)男女比がだいたい半々ずつといったところでしょうか。
さすがは川上未映子、読者層が偏っていないよなのですね。
ただ、気になるのはその年齢層。
女性はわりと若い方が多いのですが、なぜか男性は結構、年齢層が高いんです。
いや、確かに若いお兄ちゃんもいるのですが、ぼくの目の前にはオジサンたちが結構いるんですよね。
前々回に参加した、芥川賞受賞直後の『乳と卵』サイン会のときは、全体的に圧倒的なオジサン率だったのですが、前回の『ヘヴン』サイン会ではそうでもなかったし……。
この参加者層の違いって、サイン会会場の地理的な要素があるのでしょうか。

  • 『乳と卵』:神田(オジサン率メチャクチャ高い)
  • 『ヘヴン』:有楽町(男性比率高いが、男女とも若い)
  • 『世界クッキー』:恵比寿(男女半々、オジサン率高い)

どうなんでしょ。
個人的な感覚では、有楽町ってそんな「若者」の街という感じはしないのですよね。
どちらかというと、まだ恵比寿の方が若者っぽい。
ということは、あまり地理的な要素って関係ないのかも。

……とはいうものの、この3箇所での客層はいずれも、ぼくが見える範囲で感じた結果に過ぎませんので、ちゃんと調べると、全然違う結果が出ているかもしれません。

そんなこんなで並ぶこと30分、バックヤードを抜けるとあと10人ほど!
やったね!
この光の向こうには、川上未映子が待っている!

そして回ってきましたよ、ぼくの順!
ああ、目の前に川上未映子。
「よろしくお願いします」とご挨拶すると、真っ直ぐにぼくの目を見ながら「こんばんはー」
この元気な声に、その眼力(めぢから)に、もうメロンメロン。
例によって例のごとく為書きをお願いすると、ああん、ああん、なんて言うことでしょう。
「いいですよー」と快諾してくれた彼女、為書きをしながら「しょー、こー、のー、へーや。なー、かー、はー、しー、かー、ずー、やー......さま、と。」なんて、声に出してくれるんですよ。
ああ、川上未映子に名前を呼ばれているぼく……なんてエキサイティングな出来事なんでしょう!
もう声に出されれば出されるほど、ぼくの精神はメロンメロンに解けて溶けて融けて……どこまでも熔けていくのでした。
なんてメルティなオレ。

しかも、「前もいらしてくれましたよね」なんて想定外の言葉まで掛けてもらって、もう頭のなかは真っ白。
「ハイ、皆勤賞です」なんて訳判らんことを言ってしまっているぼく。
皆勤賞? ウソつけー。大阪とか全国のサイン会にも来たの? 金沢の講演会のサイン会にも来たのか? と厳しくツッコまれる……こともなく、そこは素敵な未映子さん、優しくニッコリと微笑みながら「どうもありがとうございます」と言ってくれ、向こうから手を差し出してくれるのですよ!
うはー、いただきます!
お手を握らせていただいて……握手!

ああ、それはもう、なんて柔らかくて、華奢で、だからすぐに壊してしまいそうな手で……。

なぜでしょうか、この暖かな、柔らかな、華奢な、壊れてしまいそうな手の感触がずっとずっと残って消えませんでした。
いつまでもいつまでも彼女の手の余韻が消えないので、帰りの電車ではつり革なんて握れません。
何本も電車をやり過ごして、座って帰ってきました。
川上未映子のサイン会は、いつもサインだけを貰うのではなくて、彼女から「元気」も貰えるのです。
川上未映子のサイン入り『世界クッキー』

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