別作品だった高襟上海凱旋公演「無花果キネマ」(BankART Studio NYK)

いつも公演にオジャマしている高襟ですが、今回は昨年9月に上海で行った公演の凱旋を行うとのことで、横浜はBankART Studio NYKにお伺いしてきました。
いやー、しかしこのBankART Studio NYK、地元の横浜にあるということもあって、近いんです、近い。メチャメチャ近い。
BankART Studio NYK

家でフト時計を見たら、「あ、ヤバイ、もうすぐ7時になっちゃう……!」と、6時45分に慌てて家を飛び出したのですよ。
なのにヤレヤレと会場に着いてみたら、まだ開場してないんです。
あれ?と時計を見てみたら、まだ7時をちょっと回ったぐらいじゃないですか。
ドア・トゥ・ドアで15分って……中学生のときに通っていた学校よりも近いのかしら(クルマで行ったんですけど)。

と、まあそんな訳で、開場するまで、裏にある運河を眺めていたりしていたんですね。
しかしいつも思うのですが、ここの裏の桟橋、開放したらもっと利用したいというヒトもいるんじゃないでしょうかねえ。
なんかモッタイナイ。
BankART Studio NYK裏にある使われていない桟橋

そして、開場です。
今回は3階の一番奥にあるスタジオでした。
入口ドアの上には、BankART Studio NYKのネオンと、交番に灯されているような赤い明かりが照らされています。
ネオン真下にある会場入口
じつはこのネオンと赤い明かりに灯された入口であることが、ラストシーンでの伏線につながるのですが、そんなことはつゆ知らず会場入りするぼく。

「元倉庫」だった、だだっ広い会場内の奥に、椅子が向こう側と手前側に配置され、そこが客席のようです。
この椅子に挟まれた合間のスペースが、ステージということでしょう。
ステージ奥には、天井近くまでの高さがある巨大な真っ赤なドレスが吊り下げられています。

やがて開演、照明が落とされると、スポットの当てられた真っ赤なドレスから、ダンサーたちが登場してきます。
ああ、このドレス! 母親なのか!
天井近くまでの高さがある大きなドレスは、「グレートマザー」ですよ。え、ひょっとして、ユング?
この“真っ赤なマザー”から生まれてきた彼女たちは、黒のドレスを着ており、この点が「母親と違う子供の無邪気さと残酷さ」を表しているように思えてなりません。
(ただ、スカートの下に履いている下着と、手にしているヒール(まだ履くのが窮屈でイヤそう)が、母親と同じ真っ赤な色をしていたので、やがては母親と同じ美しさを手に入れるのだろうな、という予感を抱かされます)

今回の公演は、いつもひと目で見渡せるスタジオとは違って、「元倉庫」という巨大な会場なんですね。
ステージの幅が広く、また真ん中には、まるで視界を遮るように巨大な柱が建っているため、全体を見る、ということが不可能に近い状態なんです。

BankART Studio NYKの内部イメージ
実際、この写真でイメージが判ると思います。
ここは通路なのでスペースの半分がパーテーションで区切られていますが、実際の会場はこのパーテーションがなく、この倍の広さがあります。

そのため、観客としては自然と、近くにいるダンサーを追っていくことになるのですね。
なので他のダンサーたちの動きが判らなかった分、見落としてしまっていることも多いのかもしれません。
また、同じダンサーを見ていたとしても、「ステージの奥と手前」のどちらの客席に座っているかで、さらに見え方が変わってくると思われるのですね。
終わってみると、これは、できることなら全部の公演にお邪魔して、すべての方位から観てみたかった……と思わされてしまいました。
モッタイナイ。

こうして徐々に成長していた彼女たちは、やがて、それまでの「動」から一転、「静」としての動きとなります。
そして、それまで散々履くのを拒絶していたヒールを、自らの意思によって履いていきます。
これは、大人の女性としての魅力を手に入れたということなんでしょうか……。
こうして大人になった彼女たちは、やがて、ひとり、またひとりと静かに母親の元を離れ、会場の外へと出ていきます。

このときなんですよ!
入口ドアから外に出た彼女たちは、ネオンと赤い明かりに照らされて、「黒いドレス」を着ているはずなのに、間違いなく、赤く照らされるんです。
つまり、母親と同じ姿を手に入れるのですね。
なんというか、「みにくいアヒルの子」のラストシーンを彷彿させる、そんな最後なんですよね。
ネオン真下にある会場入口

何なんでしょうか、この言葉にできない圧倒的な気持ち。
大人になった彼女たちが、自分の意志でヒールを履くシーンだけでも、グッと来ちゃうものがあったのですが、さらに「この娘たちが成長して、母親と同じ姿になる」ところで、ダメ押しなんですよ。
もうすっかりヤラれちゃいまいました。

今回の公演は、最初にもご紹介したように去年9月に高襟の皆さんが上海で公演を行い、その凱旋公演ということなんですね。
実は、上海公演直前には、日本で公開リハーサルが行われていたので、このときにも観に行っていたのです。
そのときは、「初めて観に来てくれる上海の方たち向け」として、これまでの高襟作品のベスト版、というイメージだったのですね。
今回は、その上海公演の凱旋版ということで、「公開リハーサルも観に行ったしなー、どうしようかなー」とか、思っていたんです。
それなのに……ひやー、スミマセン!
まったくの別作品に生まれ変わっていて、しかも、メチャクチャいいじゃないですかー!
もう、一瞬でも「どうしようかな」なんて思ってしまったオレ、反省しまくりなんです。
本当に、本当に、スミマセンです。