ベランダ向こう側を下からゆっくり人がのぼってきた

ボヤーンと霞掛かっていたものの、暖かい日差しに包まれた今日という日の秋晴れ、皆さまいかがお過ごしでしたでしょうか。
特に予定もなく、家でダラダラ、ゴロゴロしていただけというメチャクチャ残念な過ごし方をしてしまったぼく、後悔しながらも夕方、フト外を見えると、おお、なんという夕暮れ時。
昼間は霞んでいて富士山もよく見えていなかったのですが、さすがに陽が傾くと光線の加減からか、クッキリとシルエットが見えていたんです。
空には細い月もぽっかり。

ということで、カメラを持って、いそいそとベランダに出て写真を撮っていたんですね。
富士山と、みなとみらいの光景とか。
富士山と、みなとみらいの夕景

太陽が沈んだあとに残った空のグラデーションをバックに、ぽっかり浮かんでいる月とか。
太陽が沈んだあとに残った空のグラデーションをバックに、ぽっかり浮かんでいる月

そうしたらですね、ベランダの柵の外に気配がしたんですよ。
普段、ベランダの外で動くものといえば、カラスやスズメなんかの鳥が横切って行くぐらいなんですね。
それが、下からゆっくり姿を現してくるんです。
もうかなり真っ暗になった黄昏時に、丸いものが音もなく、スーっと下からせり上がって来る感じで。

……ギャーッ! いったい何デスカ?
誰かヒトが下からのぼってきたのデスカ?

もうドッキドキなんですよ。ヤバイのですよ、ヤバイ。メチャヤバ。
武器になるものといえば、手元にカメラを取り付けた三脚ぐらい。
これで、ドロボーと戦わざるを得ない状況です。
ああ、でも三脚を振り回したらカメラがダメになっちゃうし……でも背に腹は代えられないか。

とゴチャゴチャ悩んでいるのですが、いや、待てよ、と。
ドロボーなり、何らかのヒトだったら、柵や壁をつたってのぼってくるから、すぐそこにいるはずなんです。

ところが。
今、まさに姿を見せてきているそのモノは、柵からちょっと離れたところにいるんですよ。
だいたい1メートルくらいは、建物から離れているでしょうか。
しかも、「ヨイショ、ヨイショ」とのぼってくる感じは一切しないんです。
舞台装置に乗っているかのように、スーっと静かに一定のスピードでせり上がってきているのですよ。

……これ、ヒトじゃない。もっと、かなりヤバイことになってるんじゃないかしらん。
見なかったことにして、気が付かなかったことにして、すぐに部屋のなかに入った方がいい。

頭ではそう考えていても、身体って動かないものですね。
金縛りでしょうか、いえいえ、単なるチキン野郎です。

そうしてそのモノが完全に目の高さまで来て、「目があってしまう! ヤバイ!」と思った瞬間……あれ?
なんと、その銀色に輝く、フワフワと浮かび上がってきたのは、アルミ製の風船だったのでした。

きっと、子供が手を離してしまって、飛んでいってしまったのでしょうね。
ベランダの真下では特に人通りもなく、「風船が飛んでっちゃった!」という騒ぎもありませんでしたから、どこか離れた所で飛ばされたものなんでしょうか。
んもう、ビックリさせやがって! プンプン!
いや、でもホント、暗くなったベランダの向こうをゆっくりと人の頭らしきものがのぼってきたのは、一生かけてもないぐらいにぶっ倒れそうになってしまいました。
風船は、安易に手放しちゃダメですよ。

そして、その風船はそのままどこか遠いところまで飛んでいってしまいました。
またどこかの家の住人を驚かせるつもりなんでしょう。