新メンバー加入で変化を遂げている高襟「The Michest」(Dance Studio UNO)

と、まあ、そんな訳で。
現在絶賛建設中の東京スカイツリーのお膝元、押上は「Dance Studio UNO」へ、高襟公演を観に行ってきたのでした。
そうそう、押上の東京スカイツリーといえば全然知らなかったのですが、もともとダラーっと広がっていた押上駅周辺の空きスペースに建築していたのですね。
あれ、ずっともったいないなーと思っていたんですよ。
なるほど、そういうことだったのか。

高襟は、今回から今村つぐみさんが新メンバーとして加入しています。
このつぐみさんが、なんというか、“触媒”のような役割を果たしていて、「高襟」に新たな化学反応を引き起こしています。
これまでにない、新たなスタイルでの高襟パフォーマンスが楽しめました。

今回の作品は、もともと高襟の主宰である深見章代さんが、大のマイケル・ジャクソンファンということで、つくられたものだそうなんですね。
そんな訳で、全篇にわたって「これでもか」「これでもか」「これでもか」と、次々にマイケル愛(LOVE)が繰り出されてきます。
それも尋常ではないベッタベタにスウィ~トな愛(LOVE)ですよ。

しかし深見さんはそこに一切言い訳することはなく、逆に、「いいじゃないの。だってわたし、マイケルが好きなんだし。仕方ないし」と言わんばかりに圧倒的な「これでもか」状態。
そんな深見さんに、観客はもうただ、ただ、「うんうん、仕方ないよね」と力づくでねじ伏せられてしまっている状態なんです。

ああ、いやいや。
だからといって別に「観客に無理強いしている」とか、「時計仕掛けのオレンジ」みたいに洗脳しているとか、そんなんじゃないんですよ。
ベッタベタな愛(LOVE)を、「これでもか」「これでもか」「だって仕方ないんだもの」と見せられることで、観ているこちらまで楽しくなってくるんですよね。
これはいったい何なんでしょうか。
あまりの心地よさに、一緒になって「うん、うん」と微笑ましく観ている、そんな感覚なんですねー。
見ていて気持ちのいいラブラブカップルとか、新婚カップルっているじゃないですか。馬鹿ップルじゃなくて。
まさにそういった幸せカップルを見ているような幸福感に包まれて、観客も「うん、うん」とニコニコ笑いをしながら観ているのです。

そんなベッタベタな内容も、まず登場シーンからしてやってくれます。
マイケルと言ったら「ペプシコーラ」、と言うわけで、全員がペプシを持って入場し、合間合間にはペプシで喉を潤わせているんですね。
実に細かい! そんなところまで、実に愛(LOVE)に溢れているんですね。
この様子だったら、他にも気づかなかったことも多々あったかも。
だったら、メッチャもったいないなー。

年代ごとに流されていくマイケルの曲にあわせた、数々の高襟パフォーマンスなのですが、今回はそこに、今村つぐみさんの“しゃべくり”も入ります。
これがもうケッサクで、ケッサクで、客席を笑い殺すつもりか、と覚悟してしまうほどにデインジャラスなんですよ。
ソロでつぐみ節が炸裂する、「ビリー・ジーンに関する考察」は、呼吸困難による窒息死寸前まで陥らされてしまうほどに危険なんです。キケン。デインジャラス。
しかし個人的には、深見章代さんとのアドリブも交えた「池袋の西武の前のマックで待ち合わせ」がもうサイコー。
この2人のやりとりは、スーパーエキセントリックシアターでの三宅裕司と小倉久寛や、シティボーイズの大竹まことときたろう(または斉木しげる)、拙者ムニエルの加藤啓と村上大樹のやりとりを彷彿させるほどに、ワクワク感に彩られていたんですね。
とにかく、今後の高襟におけるこのつぐみスタイルは、ますます期待したいところです。

もちろん、マイケル愛(LOVE)に溢れた高襟パフォーマンスも、魅せてくれます。
抱きしめても抱きしめてもスルリと逃げていく動きが、様々なところで見られたのは、これは深見さんのマイケルに対する思いなのでしょうか……。
ストーリーは徐々に年代を下っていき、「スリラー」後、ここまで順調だったパフォーマンスが、一転して変化を見せます。
やはり、キング・オブ・POPを極めた彼のその後の厳しさは、ファンとしても描きづらいということなんでしょうか。

ラストでは、マイケルの復活を信じているファンの願望と、しかし、一度死んでしまった者の復活を願うことなど禁じられているというはざ間に揺れる「Michest」の複雑な思いが、まるでW・W・ジェイコブズの名作「猿の手」のようなやりきれなさを残して、終わります。

……あ、いや、本当はアンコールがあったんですけどね。
(マイケルファンであるアイドル4人組が、マイケルになりきって幕張メッセでコンサートをしているという設定だったんです)
高襟「The Michest」(Dance Studio UNO)