ブス会「女の罪」(リトルモア地下)

以前、ポツドールで「女組」(とぼくが勝手に呼んでいる)として上演された「女のみち」を観て、そのあまりのすがすがしいラストに、涙が出るほど感動したのですね。
これはまたぜひ観に行きたいなーと思っていたら、翌年には第2弾として「女の果て」というタイトルで、またもう一度公演があったのです。
ところが残念なことに、そのときは行くことができなかったのです。
そんなことがあって、ずっと悔しいなあーとか思っていたら、あらま。

このポツドール女組の作・演出だった溝口真希子(こと、ペヤングマキ)が、今年、新たに演劇ユニット「ブス会」を立ち上げたそうなのですよ。
これはもう行かねばならぬ!と鼻息荒く、花の週末は会社帰り、原宿にあるリトルモア地下に行ってきたのでした。
リトルモア地下の入り口前)

物語は、とても営業しているとは思えないほど散らかっていて、うらぶれた感が溢れている場末のスナックで繰り広げられる密室劇。
こんな狭い空間に、ひとクセもふたクセもある女5人が集まれば、これはもうガチで陰湿なオンナの争いが描かれるんだろうなーとか思っていたんです。

ところが……あれ?
違うのです、違う。全然違う。
ずいぶんとハートフルでウォーミングなストーリー展開なんですよ。
そりゃ確かに、何度か不穏な空気は流れたりもします。
そこで「あ、くるかな」と思っても、そんなイヤーな雰囲気はすぐに流し去られて、皆、和気藹々なんですね。
物語が進むにつれて登場人物たちは互いに垣根を取っ払って盛り上がっていき、ついには一体感まで生まれるほど。
もう、「ヴィヴァ! オンナたちの友情の素晴らしさ!」なんですよ。
なんだー、メッチャいい話やん。素敵やん。ヒトって、友情って、やっぱりええもんやん……そう思っていたんです。

ところが……ウワォ!
実はこの「いい話」「素敵な物語」「ヒトや友情って素晴らしい」と思わせるエピソードの数々が、実は、後半への大きな伏線となっていたのです。
そういえば、確かに何度か「あれ?」と思わされる、小さな小骨がノドの奥に刺さっているような、そんな気持ちの悪さがあったりしたのですね。
思えば、それもぜーんぶ、伏線。

そんないい雰囲気のままで進んだ物語は、後半になると突然に、ちゃぶ台がひっくり返されるのです。
前半におけるすべてのエピソードは、実は、この後半にひっくり返されるちゃぶ台の伏線だったんですね。
とにかくそのちゃぶ台ひっくり返しの伏線が、緻密に綿密に、何重にも渡って張り巡らされてあるのですよ。
ちゃぶ台をひっくり返すことで、そのために張り巡らされていた伏線が、疾風のように一気に駆け抜けて回収していく怒濤のストーリー展開。
とにかく、この流れには、ただ、ただ、唖然とするばかりなんですねー。

そしてラスト。
最大の悲劇が起こることを予感させながらも、すべては描かれず、そして登場人物の誰もが問題を抱えて何一つ問題は根本的に解決しないまま、舞台は終わります。
登場人物のやりきれなさを、観客も共有するかのような、そんなエンディングなんですね。

この観客が登場人物と「共有する感覚」は、会場がリトルモア地下という閉鎖された空間であることから、客席まで「閉ざされた場末のスナック」という舞台感覚に飲み込まれてしまうところにあるのかもしれません。
観客自身も登場人物であるかのような、そんな錯覚を起こしてしまいそうになるんですよね。
登場人物と一緒に観客もお店のなかでカラオケで盛り上がったり、あるいはマジックミラー越しにスナックの店内を覗き見していたり。
客席にいながらにして、舞台上にいるそんな不思議な感覚が味わえたのでした。
ブス会「女の罪」(リトルモア地下)

ところで、すごいことに気がつきましたよ!
これまでの溝口真希子作品にずっと出演している玄覺悠子さんなんですが、彼女の役名がすべて「マリア」だったんですよ!
第1弾「女のみち」ではAV女優、第2弾「女の果て」ではデリヘル嬢、そして今回の「女の罪」では風俗嬢ということで……ひょっとして、同一人物なのかも。