本気のネコパンチの痛さに、生きてることを実感

会社に行く途中で、いつも2匹のニャンコがボーッと佇んでいるのが見えるんです。
朝から思いっきりモフりたいのですが、でもその場所、駅に向かう通りからはちょっと離れてしまうため、それでなくても時間ギリギリにしか家を出ないぼく、なかなか遊びに立ち寄ることができないのですね。
何しろそこはネコトラップ。「ちょっと」のつもりで立ち入ろうものなら、あっという間に10分、20分と時間は過ぎてしまうに違いないのです。
遅刻してしまうのは目に見えてますって。

そんな今朝、どんより曇った空のもとで、またしても茶トラとキジトラの2匹がじゃれ合って遊んでいるのが見えたのです。
ああ、もうこんな光景を見せられたら、たまったものじゃなりません。
「遅刻したら遅刻したでいいのさっ!」と、訳の判らない勇気がムクムク湧いてきて、とうとうその場所に向かっちゃいましたよ。
蛇にそそのかされて、禁断の果実を食べてしまったアダムとイブ。彼らの気持ちは、今ならよーく判りますとも。

そんな禁断のネコトラップにそっと近寄っていくと……あ。見つかっちゃいました。
ぼくが近寄る気配をすばやく察知した茶トラが、メチャクチャ睨んできたんですよ。
まるでチンピラのような目つきで睨み付けてきた茶トラ
「アァーン? なんだぁー、おまえは? 何か文句でもあんのか、アアーン?」

うわーっ、チンピラや! 茶トラ界のチンピラや、コイツー。
また朝っぱらから、とんでもないネコに見つかってしまったものです。

この尋常ではないチンピラ茶トラの目つきにすっかりビビってしまいながらも、せっかくここまで来たんですもの、逃げるわけにもいきません。
丁重に「いえ、すみません、ちょっとぼくも遊ばしてもらえないかなーと思って……モフモフして差し上げますよ」とお願いしたんです。
すると、茶トラの横で「オラ知らねー。逃げるもんねーっ」とトコトコ去ろうとしていたキジトラが、立ち止まって
チンピラ茶トラと違って、キジトラさんは興味津々
「え? モフモフ? してくれんの?」

メッチャ反応してくれました。
「ええ、そりゃもう、もちろん。ゴールドフィンガーテクを駆使してメロメロにして差し上げますよ」と言うと、「仕方ないなー、ちょっとだけだよ」と、触らせてくれたのです。
やったね!
お礼に最大級のモフモフをさせていただきましたとも。
お約束どおり、キジトラさんにはウットリしていただきました
フェンス越しという非常に厳しい体勢でしたが、それでも何とか「オオ、気持ちいいのう」とご満足いただきました。

こうして最大限のテクニックを駆使してキジトラをモフモフしていると、……なんだかものすごい視線を感じるのですね。
そりゃ、朝っぱらから道端にしゃがみ込んだ怪しいサラリーマンがいたら……。
しかも、そのサラリーマンがネコ相手になにやらブツブツ言いながら撫でくりまわしていたら……。
確かに胡散臭いですよね。
道行く通行人からジロジロ見られても、仕方ないのです。

……が、違うのですよ、違う。
視線が集まってくるのは、道路の方からではないんです。
ぼくの目の前、およそ人がいるとは思えないヤブの向こうからなんですよ。
ヒョイと顔を上げてみたら……ワー、出たー!
逆光で、神さまのように神々しく見えるボスっぽいネコ
なんだか逆光でメチャクチャカッコいいニャンコが登場ですよ!
怪しいサラリーマンが何か悪さをしないものか、ジッと見下ろしています。
その威厳のある佇まい、あなたがここらあたりのボスなのですか。

さらに、横の方からも視線がくるのを感じます。
ヒョイと見てみたら……ワー、出たー!
横からも2匹のネコが、こちらの様子をうかがっていました
2匹のニャンコが金網の向こうから「まいどー」と覗いてきてますよ。
なんと、ここは一大ニャンコの会議場だったようなのです。
そうかー、いつも道路の向こうから見えていた2匹のニャンコどもは、きっと見張り番だったんですね。
(その割にはあまり緊迫感が漂っていませんが)

こちらのかわいいニャンコたちにもご挨拶しようと指を伸ばした、その時のことでした。
普通はクンクンとにおいをかぎに来て、その好きにモフモフするのですが……
指を出してご挨拶しようとしたところ
この直後、つきだした指に思いっきりネコパンチを食らわされてしまいました。
しかもツメ、全開で。

よくよく見てみたら、こちらから手を出しているこの時点で、もうすでにツメが顔を出していますよ。
指を出している時点で、ツメが顔を覗かせていただのでした
すっかり油断してしまってて、コヤツの殺気までは察知することができませんでした……うう、無念。

本気のネコパンチを不意打ちでくらってしまって、指が痛いんです。ヒリヒリ痛い。
ああ、でも、この痛みが「生きている!」ってことが実感できるのですよねー。
本気で殴り合ってケンカをすることで、「お前、やるなー」「お前こそ」と仲良くなる青春ドラマの登場人物たちのような、そんな気持ちです。
ヒリヒリ痛む指を押さえながら、「覚えてろよー」と駈け出していくのでした。
(あれ? それじゃ負けて逃げていく不良の方ですって……)

そういえば、以前にこのあたりでは、ツメ出しネコパンチを繰り出す凶暴なヤツがいたけど、ひょっとしてその血を引いているヤツなんでしょうか……。
こんな凶暴なやつと遊ぶには、ネコジャラシが必要ですって。
(でもきっと、わずか数十分でボロボロにされてしまいそうですが)