合間にネコがモフモフおもてなし、ひょっとこ乱舞新旧2作同時公演

ひょっとこ乱舞が新作公演のみならず、過去の作品の再演を同時に行うということで、吉祥寺シアターに行ってきました。
マチネで新作「ブリキの町で彼女は海を見つけられたか」、ソワレで再演作「水」です。
ひょっとこ乱舞「ブリキの町…/水」(吉祥寺シアター)

「ブリキの町で……」は、構成が“物語を作る側”と“作られた物語”の大きく2つに分かれているというもの。
当初は、その“物語を作る側”がやたらと説明的でテンポが悪く感じられ、「ずっとこんな説明口調で物語を進められるのかなー」とドキドキしていたのですが……いえいえ、心配は無用でした。
いったん作中作となる“物語内”のストーリーになると、ここからはひょっとこ乱舞の本領発揮ですよ。
主役である笠井里美さんのトリックスターぶりがもうたまらずケッサクで、物語をグイグイと引っ張っていきます。
この彼女のテンション、もう心地良いまでのぶっ飛びぶり。
やっぱり笠井さんの役どころは、こうした「無邪気なトリックスター」がよく似合ってますねー。
そして、ラスト。
「ひょっとしたらこうなるかな、いや、こうなってほしいな」とぼくが勝手に想像して望んでいたように、“物語世界”の存在が大きくふくらんでいって現実世界を飲み込むメタな展開となったのです。
やったね!

……が、あれ?
どうもその展開があまりパッとしないのですね。なんというか、とても遠慮している感じ。
物語が1つに融合したと見せかけて、「ひょっとしたら、融合した……のかな」という程度で終わっちゃっているんですね。
どうもこの終わり方が弱気に思えてならず、「メタな展開にしてしまうと、お客さんの理解を得られなくなっちゃうかもしれない」という遠慮があるのかも、とさえ感じさせられたのですね。
そう思うと、冒頭のやたらと説明的だったシーンでも、「ちゃんと説明しておかないと、お客さんに伝えられないかもしれないな」という、遠慮が感じられたからこそ、テンポが悪く感じたのかもしれません。
ひょっとこ乱舞「ブリキの町で彼女は海を見つけられたか」(吉祥寺シアター)

「水」の方は、「ブリキの町で……」のような「疾走感」とは正反対の「静」な物語。
いくつにも分断されたエピソードの断片が、徐々に組み立てられていき、時系列が整理されてラストにおける悲劇的(かつハッピーエンド)なエンディングで収束した瞬間に完成する物語は、その叙情的な美しさが観客の目の前に浮かび上がらせる力を持っていると言ってもいいのではないかと思うのです。
あまりの美しさに、終わる間際、もう涙ポロポロでしたもん、ヤバイのですよ、ヤバイ。不意打ちでポロポロきちゃうぼくの涙腺め。

しかしこの構成の複雑さ、およびストーリーそのものにも強弱がなく、あくまで淡々と進むので、始まってから半分ぐらいまでは正直、あまり入り込むことができなかったんですね。
登場人物の名前も、これはいったいどこの国の物語なのかと思ってしまうほどに奇妙な名前ばかりなので、まずは「誰が誰」ということを抑えなければ、まったく物語を理解することは難しいのです。
しかし、いつ頃からでしょうか、ふと気がつくと物語の中身が見えるようになってきていているんですね。
物語の構成が見えてきたからか、それとも登場人物の名前をようやく覚えられてきたからか。
そこで楽しんでいる自分に気がつかされるのです。
この瞬間が早ければ早いほど、もっと楽しめたんじゃないかなーと思うと、なんだかもったい気がしてなりませんでした。
ひょっとこ乱舞「水」(吉祥寺シアター)

そんな2作品同時公演ということでマチネとソワレの合間。
いったい何して時間をつぶそうかなー、そもそも吉祥寺なんてどこに行っても人が多そうだし、井の頭公園に行っても暑いし、雨降ってきたらイヤだし……と悶々としながら劇場を出たところで「あれ?」。
いかにも「ネコがいそうです」といわんばかりの雰囲気漂う路地があるんです。
ここを何気なく覗いてみると……いた。
路地でまどろみ中のグレイのネコ

路地がひんやりとしていて気持ちいいのでしょうか、グレイの毛並みがビードロのように美しいニャンコが寝ころんでいるんですよ。
驚かさないようにそっと近寄っていくと……うひゃ、「んーにゃーにぃー」とご挨拶しながら足下にスリスリと、すり寄ってくるではないですか。
こうなったらアレですよ、ゴールドフィンガーでの必殺テクでお返しですよ。
ぼくのゴールドフィンガーにすっかり昇天してしまったグレイ

一瞬にしてトロトロにとろけてしまったグレイ、それを羨ましそうに見ているキジトラ。
こやつも最初の瞬間に「みゃーみゃー」ご挨拶しながらよってきたのですが、愛想にかけてはグレイの方が上手で、そっちに気をとられている隙に、いじけてしまったのか、定位置らしき椅子の上に座ったまま動こうとはしてこなくなっちゃいました。
ごめんよー……。
定位置の椅子から羨ましそうに見ているキジトラ

こうしてキャツらと遊んでいるうちにすっかり時間は過ぎてしまい、あっという間にソワレの時間となってしまったのでした。
後から考えると、今回のひょっとこ乱舞の新旧2作品は、ともにネコが重要なモチーフとして登場してくるのですね。
そう考えると、ここにこうしてネコがいて、マチネとソワレの待ち時間の間に、「触ってもいいよー、モフモフしていきなよー」とキャツらの方からみゃーみゃーと出迎えてくれるということは……やっぱりこれは劇団側からおもてなしということなんでしょう。
いやー、これはいいですねー、いい、実にいい!
何というの粋な計らいなんでしょう。

ただし。
このおもてなしのニャンコスペースは、ヤブ蚊がメチャクチャ多いのです。
なので残念ながら、あまり集中してキャツら遊ぶことができなかったのでした。
これからの時期、こうしたニャンコたちと心おきなく遊ぶには、「ネコジャラシ」だけじゃなくて、携帯用の蚊取り線香とかベープみたいなやつを持ち歩いていないといけませんな。