初野晴『初恋ソムリエ』はやっぱり表紙と帯で損をする

「青春ミステリ」という表紙と帯に、危うく読み飛ばしてしまうところだった初野晴の『退出ゲーム』。

そのシリーズ続篇が、『初恋ソムリエ』として帰ってきましたよ!
そろそろ発売されている頃だと、先週金曜日、会社帰りに丸善の丸の内本店に立ち寄ってきました。
2階のミステリ書籍のコーナーを覗いてみたのですが……ありません。
平台にも棚にも、初野晴の新刊として『初恋ソムリエ』が並ばず、出ていないのですね。
まだ入荷されていないのかなぁ……と『初恋ソムリエ』は探すことを諦め、他にも何かおもしろそうな本はないかなと、店のなかを歩きまわっていたのです。

すると……あれ? あった、あった、ありましたよ!
『初恋ソムリエ』がちゃんと平台にドッサリと積みあげられているではありませんか。
文芸書の女性作家コーナーに山積みの初野晴『初恋ソムリエ』

ところがこれ、この本が積み上げられてあるのはミステリ書籍コーナーではなく、文芸書コーナーなんですよね。
しかも、そのまわりに置かれてある本を見てもらえば判るかと思いますが(角田光代、本谷有希子、山崎ナオコーラ、原田マハ……)、ここって「女性作家のコーナー」なんですよ……。
いや、そりゃまあ確かにこの表紙と帯のデザインだと、「女性作家のイメージ」という感じがしますけどね……。
女性作家の作品といってもいいデザインの初野晴『初恋ソムリエ』

でも著者近影をみたら、初野晴って紛うことなき男性作家なんですけどねー。
ぼく、間違えてませんよね?
心配になってきたので、念のため「初野晴」をキーワードにGoogleイメージ検索をしてみました。
すると……えっと……

どなたなのでしょうか、この方……?
「初野晴」で検索すると表示された方

丸善の担当者の方、Google画像検索で表示されたこの方を見て「ああ、初野晴って女性なんだ」と判断されたのでしょうか。
いや、まさか……。

しかし初野晴って、表紙デザインと帯に縁がないですよね。
前作の『退出ゲーム』だって収載されたどのエピソードも、緻密に組みあげられたロジックの美しさに「本格ミステリ」としての傑作を感じさせられるほどの作品なんですよ。
なのに害のない表紙デザインやあまり引き込まれない帯の推薦コメントに、単なる「ラノベ感覚の青春ミステリ」という雰囲気しか感じられなかったのですね。
講談社ノベルスから出た『1/2の騎士』だって、あのデザインで内容が本格ミステリだなんて思えませんって。
どんなファンタジーものだと思っていたんですね。
それだけにどちらの作品も、肝心の読者層にアピールが届いていないのではないかと、思ってしまうのです。

今回の『初恋ソムリエ』なんて、ついに「ミステリ」というジャンルからも外れて文芸書扱いとなり、さらには作者が女性とまで思われてしまったなんて……嗚呼。
角川書店さん、このデザインでは販売戦略がかなり明後日の方角を向いてしまってもったいないことになっているのではないですか……などと、余計な心配をしてしまうのです。

これまでにも有川浩柴田よしき桜庭一樹が男性作家と間違われているのを見てきましたが、「男性作家を女性と間違える」というケースは初めて見たかもしれません。
(デビュー当時の北村薫の場合、覆面作家だったから仕方ないですよね)

ちなみにこの『初恋ソムリエ』は、丁寧にも女性作家コーナーの棚にも1冊、ちゃんと挿されてあります。
やっぱりこれ、素で間違えているっぽいですよね。
素で初野晴を女性作家と間違えているっぽい

“素で間違えている丸善”といえば、以前にも芥川賞作家の磯崎憲一郎の“崎”の字を間違えたままずっと、POPを張り出していたこともありました。
うーん、いろんな意味で大丈夫なのでしょうか、丸善丸の内本店……。
まさかジュンク堂と合併するということで社内が大揺れに揺れていて、「作家の字体とか、男性とか女性とか、そんなこと知らねぇよ! こっちはそれどころじゃないんだ!」となってしまっているとか。
いや、まさかそんなことではないですよね……?
(ゲスの勘ぐり)