柳広司の新刊『ダブル・ジョーカー』にサインを頂きました

吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞した柳広司『ジョーカー・ゲーム』の続篇、『ダブル・ジョーカー』が出ましたよ!

この前作にあたる『ジョーカー・ゲーム』、これは本当に危険な本なんです。
何しろ、本当に読む手を止められなくなってしまったんですよ。
普段なら、自宅では絶対に本なんて読めない体質なのですが(電車の中だけがマイ読書ルーム)、いえいえ。
この本だけは、会社から帰ってきても、ご飯を食べながら、家事をさぼりながら、ずっと読みふけってしまっていたのですね。
それほどに、スリルとサスペンスがギュッと圧縮して詰め込まれた短篇集ということなんです。

そう、この「短篇集」というのがまた、とてもいい効果を生み出していたと思うのですね。
物語ごとに主人公が異なっているのですが、しかし、そのようにそれぞれの作品で異なった主人公を配置することで、彼らの背後にいる真の主役、“魔王”結城中佐の存在が大きく不気味にクローズアップしてくる仕掛けになっているのです。
読めば読むほどに、この“魔王”結城中佐の存在が、毒のようにジワジワと、危険ながらも心地よく読者のなかに染み渡っていくのがハッキリと判るのですね。
これは本当にあぶない中毒性を持った作品だったのですよ。

その続篇が出たとなると、そりゃもう早く買わなくちゃ……とワクワクしていたのです。
すると、ある筋から「今度、柳さんがサインをしにいらっしゃるので、来ませんか?」。
わー、わー、わー、わー! そりゃもう行きます行きます、何をさておいても、行きますとも! ぜひぜひお邪魔させてください! いや邪魔はしませんそっと隅に立っています。それだけで十分なのでございます!
なんだかよく判らない返事をしてしまっていたのでした。

そんな訳で今日、ノコノコと某所をご訪問したのでした。
しかし、そもそもこんな一介のシロート野郎がなんと言えば入口をパスできるんだろう……胡散臭い奴だとつまみ出されたらどうしよう……などと、もう行く前からドキドキモードはハイテンションでレッドゾーンを軽く振り切れオーバーヒートなんですよ。
「こんにちは! ぼくは今日、お招きにあずかりました!」と明るく言えばいいのか、「お世話になっています!」と素知らぬ顔で突破できるのか……と、頭のなかでは様々なシミュレーションをしていたのですが……心配ご無用でした。
ぼくにお誘いの言葉をいただいた方が、ちゃんと話を通してくれていたようで、難なくスムーズにカム・インできたのです!

そして待つことほんの数分で……おお、柳広司登場!
これまでお見受けした「著者近影」ではかなりコワモテだったので、「ひぇー、“なんだ、おまえ?”って誰何されたら、これ絶対オシッコちびっちゃうよなー」とビビッていたのですが……え?
メチャクチャ笑顔が素敵な優しいお兄さんなんですよ。
ちびりかけていたオシッコが、スッと膀胱に引っ込んでいくほどの優しさがにじみ出ているのですよ、その笑顔から。
聞くと、「いやー、写真を撮るときは色々やってるんですよ、ボツになっちゃったけど、任侠風に撮ってもらったりとか」とのこと。
(ちなみに明日発売の「ダ・ヴィンチ」の特集ページでも、コワモテ風で撮られた柳さんの写真が掲載されています)

そうこうしているうちにテーブルに積み上げられた100冊もの『ダブル・ジョーカー』に次々とサインしていく柳さん。
ボーッとしていては申し訳ないので、流れ作業のお手伝いに加わらせていただきます。
「あ、そんな、お客さんにそんなことをさせてしまっては……」と皆さんに恐縮されてしまったのですが、いえいえ、これがまた楽しいのです。

100冊もサインをしていると、さすがにご自身の名前の字がゲシュタルト崩壊してきたという柳さん。
休憩を取りながらも、担当編集者の方を前にして「え、そんなこと言っちゃっていいのですか……」とハラハラするようなことを教えていただいたり、逆に担当編集者からはお返しとばかりに柳さんにプレッシャーを掛けるような発言があったりと、かなりフレンドリーに接していただきました。
また前々から気になっていた「朝日文学新人賞を受賞する前に原書房からデビューした話」など、いろいろと気さくにお話しいただきました。
どうもありがとうございます!
サインを終えた100冊の『ダブル・ジョーカー』

そうそう、こちらの某所でひそかに保管されている横山秀夫の『半落ち』ゲラ修正原稿を見せていただいているときに、何気なく「柳さんは、ゲラの修正原稿をどうされているのですか?」と聞くと、キッパリ「資源ゴミに出してますよ」
うはー、なんかメチャクチャもったいないという気持ちにさせられるのですが……。
しかし、やはり作家の方にとっては、読者に手にとってもらいたい作品は、きっちりと出来上がった形で見ていただきたい、というところがあるそうです。
やはり読者にとって、「ゲラ修正原稿」というものは作品そのものではなく、そこを通じて感じ取れる「作家」そのものの存在なんですよね。
しかし作家にしてみれば、そんな自分個人ではなく、生み出された作品そのものを見て欲しいのであって……。
そう考えると、やはり作家の思いと読者のニーズ(といっても、かなり偏ったものですが)とは、なかなかマッチしないのでしょうね。

さて、ひととおりサインが終わったところで、いよいよぼくの『ダブル・ジョーカー』ですよ!
差し出して「お願いします!」。
サラリサラリと為書きとお名前に加えて……お言葉までいただきました!
うわー、うわー、ありがとうございます。
『ダブル・ジョーカー』にサイン

「せっかくなので、よろしければこちらにも」と厚かましく前作『ジョーカー・ゲーム』も差し出して、同じくサインをお願いしました。
が、実はこれ、本屋さんで売られていたサイン本だったんですね。
なので、サインの横に為書きだけお願いできないか、おそるおそるお伺いすると「いいですよ」。
とは言うものの、すでに真ん中に大きくサインが入っているため、なかなか為書きを書き入れるスペースがなく、かなり苦労なさられていました。申し訳ありません!
しかしながらいつもの「書庫の部屋」まで書き入れていただき、ありがとうございます!
サイン入りだった『ジョーカー・ゲーム』には為書きを加えていただきました

そして柳さんのお帰りです。
出入り口から出て行かれた柳さんを、関係者の方がお見送りしている間……しまった、ぼくが出るタイミングを失ってしまった……。
いや、まさか柳さんと一緒に出て行く訳にもいかないし。
かといって関係者でもないからお見送りするのも変だし。
そんな訳で、知っている人が誰もいないオフィスのなかで、ヤバイヤバイと突っ立てしまっています。
気のせいか、周り中から「ダレ、コイツ」というビームが、ぼくにビシバシと突き刺さります。
うひゃー、ヤバイのです、ヤバイ。
お見送りされていた皆さんが戻ってきたところで、慌てて「いやー、今日は本当にどうもありがとうございました、ありがとうございました、それではこれで失礼します」。
お礼もそこそこに、さっさと帰ろうとしたぼくを、なんて失礼なヤツだと神さまがお怒りになったのでしょう。
オフィス出入口で思いっきり頭をぶつけてしまいました。
オフィス中に衝撃音が響き渡るほどの大クラッシュですよ。
最後の最後で何やっているんだ……と、さらにコソコソ逃げるように某所をあとにしたのでした。

立つ鳥、あとを濁しまくり。