現実世界で「ボクシング・ヘレナ」か『魍魎の匣』か

アンニュイな午後のひととき
フェンスの向こうを、オジイチャンが自転車に乗ってキィーコ、キィーコと通り過ぎていくアンニュイな午後の一風景。
そんな物憂い光景のなかにあった、1枚の看板。
そこには

入庫募集中!!
貸レンタルボックス

とあるのです。

なるほど。
確かに、そこには敷地いっぱいに「これでもか!」とばかりにコンテナボックスが設置されているんですよね。
どうやらここは、このコンテナボックスを「レンタルボックス」として営業している場所のようなんです。

ところが。
この看板、よくよく見てみると……おかしいんですよ、おかしい。怪しい。
何というか、メチャクチャ変なんです。

「レンタルボックス」とはすなわち、「賃貸の箱」ということですよね。
これだけで十分に言葉として成り立っているのです。
しかしこの看板では、その「レンタルボックス」の前に、さらに「貸」と書いてあるのでね。
「貸レンタルボックス」。
つまりは、ここは「貸・賃貸の箱」ということになっちゃうのです。

「貸・賃貸の箱」とはいったい、どういうことなんでしょうか?
きっと、これは「“レンタルボックスそのもの”を貸します」ということなんでしょう。
つまり、「“レンタルボックス”自体を貸します」 イコール 「大家募集中」。 なるほど!

しかし、まだまだおかしいんです。
単なる「大家さん募集」にしては、この看板の1行目に堂々と「入庫募集中!!」と書かれてあるんですよね。
入居じゃなくて、入庫。つまり「箱の中に入る」。
「大家さん募集」にして、「入庫募集」とはこれいかに……。
ひょっとしたら、これ、「大家さん」 イコール 「箱の中に入る人」を募集しているということじゃないのでしょうか……キャー! キャー! キャー!

月6800円のお手当で、収納・保管されちゃう大家さん。
いや、「月6800円~」とあるからには、“ご主人様”へのその後のご奉仕による満足度によって、お手当が増額される可能性もあるということなんですね。
しかし、唯一気になるのは「24時間OK」の文字。
いったい、24時間、ご主人様に何をされるのかと思うと……キャー! キャー! キャー!

ねえ、ねえ、お願いだからキミを合法的に監禁させてよ。
ううん、心配はいらないよ。だって、ホラ、キミはぼくにとっての大家さんなんだよ。
だから生活の心配なんてもういらない。キミは一生、このボックスに入っているだけでいいんだ。
ああ、これって「ボクシング・ヘレナ」だよね。
そうか、君はミステリ小説の方が好きなんだったね。
だったら『魍魎の匣』の方がいいかな。日本人形みたいな可愛い顔してるしね。
ホラ、お願いだから「ほう、」って言ってみてよ。
ねえ、ねえ。ホラ、お・願・い。

きっと、この看板には、そうした熱い思いが込められているに違いありません。
ほう、