ひょっとこ乱舞「旅がはてしない」(東京芸術劇場)

中村早香さんとチョウソンハさんよりご案内をいただいていたのに……メチャクチャ“輩(YA・KA・RA☆)”に成り下がってしまった自分に嫌悪感。
どうもお騒がせして、ご迷惑をお掛けいたしました。
「もうコイツ、出入り禁止ね!」と、劇団内のマル秘ブラックリストに載せられていたらどうしよう……。

そんな訳で、池袋は東京芸術劇場で行われているひょっとこ乱舞「旅がはてしない」。
ストーリーの状況設定は、かなりSFが入っています。
……が、物語が始まってもしばらくはそのSF的な特殊な状況設定の説明が一切ありません。
ただ、物語が進むにつれて、特殊な状況設定が徐々に、徐々に、見えてくるようになっています。
しかしこうした展開だと、状況がさっぱり判らずに観ている最初のうちは、かなりキツイものがあるのですね。
彼らが何をしているのか、何を言っているのか、さっぱり理解できないのです。
ただし、ようやく特殊な状況設定が判ってきたあたりで、何度か最初と同じシーンやセリフが繰り返されるため、一応は「なるほど」と判るようにはなっています。
しかし、いくら「同じシーンやセリフ」とはいえ、既にストーリー的にはまったく別のものとなっているので、訳が判らないまま観ていた最初の“失われたシーン”が甦る訳ではないのです。
そこがもったいなく感じるのですね。

また、主人公の身辺を巡っては、これ、かなり「ミステリ」としてできあがっているじゃありませんか。
ひょっとしたら「●●●●●」みたいな展開になるのかも……と思うと、わー、もうワックワクのドッキドキなんですよ。
ところが……あれれ。
どうも作者が「ミステリ」が好きでないのか、興味がないのか、それとも、そもそも最初からそのような狙いはなかったのか、実にあっけなく真実を明らかにしています。物語の進行もまだ途中の段階で。
そう考えると、前半で張ってあった伏線も「ちょっとあからさますぎるよなあ」と思えたのも、特に「ミステリ的な効果を狙った伏線」ではなかったのかもしれません。
この主人公の身辺を巡る真実を、もっと「ミステリ的味付け」として処理していたら、きっと観客は十分に驚き、大きなインパクトとして後半へと流れ込んでいたのかもしれないと思うのですね。
あの「真実」が大きなインパクトとして与えられると、きっとストーリー自体もより大きなものへと昇華していたんではないかと思うのですが……どうなんでしょう。

「ミステリ的な展開」といえば、後半で“時系列を崩してエピソードが語られるシーン”がありました。
あれもかなりミステリ的な効果が狙えたはずなのですが、残念なことに、時系列を崩す必然性が感じさせらず、結果としてなんとも消化不良的な気持ち悪い感じだけが残ったように感じられたのでした。

ストーリー全体としても、かなり多くのエピソードが用意され、ストーリーに挿入していったのはいいのですが、どうもうまく回収ができていなかったように見受けられました。
そのため、全体としての構成がアンバランスになり、主軸が何なのか、よくよく見えなくなってしまったように思えます。
2時間30分という公演時間自体、かなり長く感じられたので、エピソードを削って主要なものを浮き彫りにすれば、もっとスマートにすることもできたのではないかと……。

また、(わざとそういう演出なのかもしれませんが)チョウソンハさんのセリフだけが、かなり“前に出てきている”感がして、そのため、他の役者のセリフがかなり“奥まってしまっていた”ように感じたのですね。
これ、例えて言うなら「テレビドラマを見ていたら、コマーシャルになったとたん音量がアップしたよ」という、あの感じ。
コマーシャルが全面的に出てきている、あんな感じでチョウさんのセリフが客席にビンビン届いてくるのですね。
だから、チョウさんと他の役者さんのセリフのシーンでは、どうしても他の役者さんのセリフを受け取りづらかったのです……。

……って、何ですか、これ!
さっきからずっと文句ばっかり書いてるじゃないですか!
よっぽどヒドい作品だったように思われそうですが、いえいえ、どうもスミマセン、そんなこたぁないんですよ!
何しろ、ラストにおける中村早香さんの独壇場、あそこで思わず涙なんて流れちゃったんですから。
ひょうひょうとしている彼女がラストに見せる「魂の叫び」は、強さと不安さが入り交じって、それでも立ち向かっていくという「心のふるえ」が見えたような、そんなきがしたのですね。
そしたら「あ」と思う間もなく、涙がツーッと。もうね、鼻血が出ているかのような自然さで涙がツーッと。
前作の「プラスチックレモン」でもやはりラストシーンでの独白で幕切れとなるシーンが印象的だっただけに、今回もすっかりやられた感に圧倒されましたよ。
(なのに、そんなさやかさんにご迷惑を掛けた輩なぼく……本当に申し訳ありません)
ひょっとこ乱舞「旅がはてしない」(東京芸術劇場)