6時間待ちだった島田荘司サイン会、伝説再び

『島田荘司全集』の第3巻発刊を記念して、出版元である南雲堂出版で、御大のサイン会が開催される!……とのことで、参加してきました。
そもそも南雲堂出版って、どこ?……と、下町のいい雰囲気を残している(でも新宿区)の街中を探し回ること約30分。
すっかり迷子になってしまいました。
南雲堂の場所って駅からだと判りやすいのですが、今日はクルマで来てしまったのです。
しかもそのクルマは、迷宮のような細い路地の奥にあるコインパーキングに停めてしまったので、もうこの時点で「ここはどこ?」状態。

そんな街中をさまよっているさなかに見つけた「高所ドア」ですよ。
それも色違いで3連チャン。
島田荘司サイン会に向かう途中で見つけた「高所ドア」
島田荘司ファンにはおなじみ、短編集『御手洗潔のダンス』収載の「山高帽のイカロス」で、重要なキーとして登場するトマソンの一種ですね(←なんちゅう説明やねん)。
何だか迷子になったのすら、幸先のよいスタートのような気がしてきました。
ここでようやく携帯電話の地図で確認すると……なんだ。すっかり違う方角に向かって歩いてますやん。

地図のとおり歩いていくと……あれ? ここ、さっきぼくがクルマを停めたところ……。
なんと、そのコインパーキングから歩いてすぐのところに南雲堂を発見したのでした。
ちゃんちゃん。
(……って、まだまだこの先があることは、この時点で知る由もなかったぼく)

南雲堂に到着です。おお、こんなところにあったのね。
南雲堂のビルはこちら
入口前には台車の看板があり、ドアにはおなじみ「TRICK+TRAPフラッグ」がお出迎えしてくれています。
入口では台車の看板とTRICK+TRAPフラッグがお出迎え

ちなみにこのドアを入ったすぐのところに「おお! いきなり島田荘司の本が積み上げてある! さすが! 商売熱心!」と思いきや……ええ!?

カバーが……、表紙カバーが……、こんなところで、こんな第2の人生を送っていたのでした。
(といっても、本物のカバーではなくゲラでしたが)

ビル前では、我らがアニキ・カリスマ書店員の宇田川さんをはじめ、TRICK+TRAP時代のお客さんが続々登場。
戸川さんが「皆さんでも懇親できるように」と、わざわざ時間帯を合わせてくださったようです。
こうして「15時の回」参加組(時間帯で区切られているんですね)が揃った15時、「さて行きましょうか……」と会場に入ろうとしたところで衝撃的な情報が。

「まだ13時の回の人が行われていて、部屋の外では14時の回の人が待っている状態です」。

ひぃ。
しかし関係者の皆さん、さすが前々回のサイン会で「8時間」という伝説を体験済み。
慌てず騒がず冷静に落ち着いて、「どうぞ、どうぞ、まだまだ時間は掛かると思いますので、ゆっくりお茶でもどうぞ」。

そこで皆でゾロゾロ移動して、近所のファミリーマートでお茶ですよ、お茶。
といっても、別にヤンキーみたいに店先でウンコ座りしてるんじゃなくて、ここのファミマ、ちゃんと店内に飲食スペースがあるのですね。
ペットボトル1本だけ持って、三池崇史と村上春樹を熱く語っている謎の集団。

もうすぐ17時だぜ、そろそろ移動しましょ……と再び南雲堂に戻ってみたのですが、ワオ。
まだまだ順番が回ってこないようです。

聞くと、今回のサイン会は南雲堂の応接室で行われているらしいのです。
その部屋に、お客さんがひとりひとり、まるで面接を受けるかのように入室していくのだとか。
しかし、いったん入室すると、なかなか皆、出てこないらしいのです。
ひとり大体20分ぐらいなんだとか。
いったいみんな、なかで何をやっているのでしょう。
いったいこのなかでは、何が起こっているのでしょうか。

しかし、これだけの時間待たされているというのに、誰一人として怒ったり、イライラしたりする人がいないのですね。
それどころか、「いやぁ、これじゃあ今日中に終わらないかもね」「わははは、オレ、次、予定あるんだよね」と、皆、とても楽しそうなんです。
なんというか、連帯感。
普通こんなところってもっと殺伐とした雰囲気が漂っていそうなんですが、いえいえ、そういったものをまったく感じさせないのが、御大の見えざるパワーがはたらいているからなのでしょうか。

そして待つこと3時間、18時過ぎ、ようやく会場の待合室に通されました。
「失礼しますー」と入室すると……ワー!
ここでもまだ10名以上の方々が順番を待ってる!
なんかもうここまで来ると、「どんと来い」と怖いものなしになってしまっている自分がいるのですよ。
時間の進み方もとてもおかしく思えてきます。
20分ぐらいで「次、お待ちの方どうぞ」と呼ばれていくのですが(ということは、やはり1人の持ち時間は20分……)、その20分があっという間に思えてきているんですね。
「え? もう次の人?」と思いつつ時計を見ると、20分は経っているんです。
これはもう、御大の見えざるパワーが、この部屋の時空間をも歪めてしまっているのかもしれません(そんなわけありません)。

そしてさらに待つこと3時間、21時、ようやく「あと1人」というところまできました。
サイン会会場となる応接室の外、総務部の事務机で、まるで社員のように座ってスタンバイです。
もうこの時点で緊張度はマックスでクライマックス、どうしようどうしようとガクブル状態のぼくですよ。

よっぽど目がイッちゃって、「コイツ、何をやらかすか判らんな」と思われたのでしょうか、戸川さんがそんなぼくを落ち着かせるために「これ、見ますか?」。
正真正銘、貴重な初版の『占星術殺人事件』
うおー、これは島田荘司ファンなら誰もが垂涎の的、『占星術殺人事件』の初版ではないですかー!
この版だけ、御手洗“清”と石岡一“美”になっているという貴重な本なのですね。
それが帯付、読者ハガキ付、そして袋とじ未開封なんですよ。フンガーフンガー。
貴重な初版の『占星術殺人事件』は読者ハガキ、袋とじ未開封

戸川さんはこちらにサインをしてもらおうと持ってこられたそうです。
ううーん、ここにサインなんてされようものなら、鬼に金棒、行く馬に鞭、火事場へ煙硝、火に油を注ぐようなものですよ……。
驚異的な貴重書の誕生です。
あまりのことにオシッコをチビリそうになってしまっているぼく。
戸川さんの「イッちゃってるこいつを落ち着かせよう」という作戦は、完全に裏目に出てしまいました。
ああ、いやいや、こんなところでオシッコをちびってしまって、この貴重な本を汚してしまってはコトだぜ、セニョール。
そんな訳できっちり、間違いを犯してしまう前にお返ししたのでした。

そして! 時刻は21時20分! ようやく順番が回ってきましたよ。
目の前にスックと立った御大、ああん、ああん、オーラがビシバシと出まくりです。
お願いします、と差し出した本にサラリ、サラリとサインする御大。
いやあ、いつ見ても美しい……。どうもありがとうございます!
いつも素敵なサインです! 『島田荘司全集III』に

ここで御大自ら「何か訊きたいことはありますか?」。
ええ、ええ、ありますとも、ありますとも。今、一番気になっていることを訊いてみました。

「『暗闇坂の人食いの木』の映画化の件、かなり難産のようですが、その後、どうなったのでしょうか?」

さっきも聞かれたんですけどね、と苦笑いしつつも丁寧にお答えしてくれる御大。
監督は堤幸彦で決定したものの、御手洗潔役がなかなか決まらず……というところまでは以前に聞いていたのですが、その後、ようやくある方で決まったそうです。
今度はちゃんと事務所からもOKが出て、これでいよいよ撮影スタートか……というところまで来たそうです。
しかし、ここで堤幸彦が「彼ではダメだ」とNGになってしまったとのこと……。
そんなこんなで結局、映画化のプロジェクト自体が白紙になってしまったようです。
ただ、プロデューサー自身は「時間が掛ってもぜひ製作したい」と意欲的だそうで、映画化の話そのものがポシャッてしまったわけではないそうです。

その代わりと言ってはなんですが、テレビシリーズで御手洗潔シリーズの短編を主としたドラマ化の話も出てきているそうです。
こちらは、御手洗潔役としてオファーされている役者がもうOKなのだそうで、ひょっとしたらこのドラマの方がうまく行ったら、映画の方も彼で……となるかもしれないとのことでした。

あと、島田荘司原作のテレビドラマと言えば、鹿賀丈史の「吉敷竹史」シリーズもありますね。そちらの話も出てきました。
御大いわく、「役者はいいんですけどね。ただ最後に放映された「幽体離脱殺人事件」なんて、ドラマの出来としてもよくなかったし、視聴率もとれなかったから、もうこのシリーズはこれ以上製作することはない」とのことでした。
確かに、『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』『灰の迷宮』『北の夕鶴~2/3の殺人』ときて、『幽体離脱殺人事件』でしたからね。
個人的には、もっとテレビ的にインパクトのある作品を用意した方がよかったのではないかと思っていたのですが……。
(かといって『奇想、天を動かす』なんて放映するのは、いろんな意味で難しいのかもしれません)

そんな訳で、やっぱりぼくのときも20分ぐらいお時間をとっていただいたのでしょうか。
最後にツーショット写真を撮っていただき、ありがとうございました!
……と思ったのですが、あとでデジカメを見返してみて、ヒエェェェー!
ぼくの顔……というか、目。完全にイッちゃってます。危険です、危険。キケン。デインジャー。そんな訳で御大の写真だけでお茶を濁します。
素敵な笑顔だけどオーラもビシバシ出まくってますよ。島田荘司ワンショット写真

こうして22時、ぼくにとっての長い長い1日は終わりました……。
ビルの外に出ると、もうすっかり夜中の空気になっています。
もうすっかり真夜中の雰囲気になってます
しかし、ぼくの後にもまだ5~6人の方がいたので、完全に終わるのは11時過ぎでしょう……と思っていたら、結局さばききれず、飲み会の会場まで移動し、そこでもサイン会が引き続き行われたのだとか。
参加人数60名ですよ、60名。なのに10時間以上も掛っているサイン会って……スッゲー。
いやあ、ホント、御大の体力はもう超人的ですね。とても還暦を迎えているとは思えないのです。
そのサポートの南雲堂の方やお手伝いされている方々、また戸川さんご夫妻も大変だったと思うのですが。
あー、ぼくも皆さんの1/10でも見習わなければいけませんよねえ。

南雲堂からはおみやげとして、ボールペンとしおりもいただきました。
いつもありがとうございます。
『島田荘司全集』ではおなじみのしおり

秋にはまた、ものすごいイベントがあるかもしれない……とのこと。
うーん、参加したいなあ。できるかな?
とにかく、今後もTRICK+TRAPのブログは要チェックですね!