物語同様、著者サインもかなりトリッキーなのでした

福永信の『アクロバット前夜』といえば、"ページを超えても改行が一切ない"横書き小説(1ページ目の1行目から読み始め、そのまま2ページ目の1行目に移り、さらに3ページ目の1行目......と進んでいく。最終ページに到達すると、再び1ページ目に戻り、今度は2行目をずっと読んでいくというスタイル。作者が意図する改行位置には"/"が挿入されている)という、とんでもなくトリッキーなスタイルの短篇小説集なのでした。

それが何と『アクロバット前夜 90°』として再版されているのです。
中身は……うおう。
物語はそのままで、文字の方向を90°方向転換させた……つまり、通常の縦書き小説になった訳なのです。
改行も普通に行われ、“通常の書籍”として生まれ変わったのでした。

……が。
そこは福永信、そのままで終わるはずもありません。
彼のサイン本が平台に置かれてありました。その隣には長嶋有『ねたあとに』のサイン本も置かれてありますよ。
そして著者直筆POPは……福永信と長嶋有が、自書だけでなく相手の本のPOPも書いています。
福永信と長嶋有のサイン本と著者直筆POPが……
つまりこれは、2人が一緒に店に来て、サインやPOPを書いていったということなのですね。

この2人は、いつも何かしらやってくれるのですよね。
たとえば以前、福永信の『コップとコッペパンとペン』のサイン用紙では裏面にさりげなく長嶋有も登場していたし、長嶋有『ねたあとに』のサイン本では中に挟み込まれてある「新刊案内」に福永信のひと言メッセージが書き添えられていたし。

とにかくこの2人がともに行動しているとなると、絶対に“何か”やらかしてくれているに違いないんです。
そんな訳で、早速買ってきた『アクロバット前夜90°』、そっとなかを覗いてみると……ブワッハッハッハ
いきなり
「さおとめゆみ」って、いったい……
さおとめ ゆみですよ。
もうね、これ、サイン本じゃないでしょう……ブワッハッハッハ
この本が福永信のサイン本だなんて言っても、「お前が自分で書いたんだろ」とウソつき野郎呼ばわりされること、間違いありませんって。

ちなみに、この「さおとめゆみ」とは、登場人物の名前なんです。
しかも表題作でない作品の……ブワッハッハッハ
これまでにも散々「一見するとサイン本とは判らないサイン本」を見てきましたが、さすがに登場人物名でサインする作家は初めて見ましたよ……。
あ、違います、違います。いました、いました。登場人物名でサインする方。
南極夏彦のお言葉入りサイン
南極夏彦ですね。

……んー、ただ彼の場合は、登場人物名といっても自分の名前をもじっているし、あの黒々とした毛筆で書かれたサインはどう見ても京極夏彦だし、まあ間違えようはないかと。
しかしこの「さおとめゆみ」なんて……ブワッハッハッハ
あー、もう笑いすぎて腹いてぇー。

もうこれだけ爆笑させてもらったら、今日のブログネタは十分できたな、と本棚にしまおうとしながらも、何気なくページの後ろの方をペラペラ捲っていたら……わー!
なんと後ろですよ、後ろ。後ろの見返し。

福永信の本当のサインがあったのでした。
危うく見逃すところだったのでした。
後ろの見返しに福永信の本物のサインが……

しかも……わー! わー!
ペンのインク転写防止用の挟み紙にもメッセージが書かれてありますよ! 長嶋有のメッセージとともに!
挟み紙には福永信と長嶋有のメッセージが……
やっぱり今回のサイン本も2人のコラボレーションサインだったのでした!
(ちなみに“140th”というのは、この本が置かれてあった丸善が今年で開店140周年ということで、“10th”というのは、福永信が第1回リトルモア・ストリートノベル大賞を受賞して今年で10年ということなんでしょうね)

ということで、その隣に並べてあった長嶋有『ねたあとに』でも、福永信が何か書いているのでしょうか。
うわー、メチャクチャ気になってきてしまいましたよ。