創元推理文庫、創刊50周年記念

「ぼくのミステリな備忘ログ」とか言っているくせに、全然ミステリの話題がない羊頭狗肉のブログです。
それではイカンと、慌てて久々にミステリの話題など。

創元推理文庫が創刊50周年なんだそうですよ。
それを記念した小冊子が大量に書店に出回っています。
「無料でお持ちください」とのこと、ありがたーく頂戴してきましたとも。
創元推理文庫50周年記念の小冊子

この小冊子、ネットで書影を見たときは「イヤッホオゥ! 昔の創元推理文庫で再現されてるぜぇ!」などと大興奮してしまいましたが、いえいえ。
表紙の紙は、昔のようなザラザラでヨレヨレのものではなく、とってもしっかりとしたツルッツルの紙でした。上品さ10000%up!でしたよ。
中身だって30数ページしかありません。
そう、だからこれは小冊子なんですって……。
書影を見て、勝手に文庫のようなボリュームの本を想像してしまったぼく、どうもスミマセン。

さてこの記念の小冊子、目玉は何でしょうか。
巻頭のいしいひさいち書き下ろし4コマ漫画? いえいえ。
ラストで壮絶な“単なる宣伝”になってしまった北村薫と桜庭一樹の対談? いえいえ。
それは、最後のページにひっそりと書かれてあった

ヘレンマクロイ『幽霊の2/3』。創元推理文庫の歴史のなかでも幻の一冊として名高い作品です。そこでこれを機会に本作の新訳を今秋、刊行することに決定いたしました。また十位以内にランクインした同じくマクロイ『殺す者と殺される者』も年内に新訳で、またクロフツ『フレンチ警視最初の事件』もその後、やはり新訳でお贈りいたします。

ここですよ、ここ。ここに尽きるのではないでしょうか。
だって、もはや伝説の域にまで達している絶版文庫が(しかも3冊も!)、新訳で蘇るとあれば、奥さま、そりゃもうミステリファンならこぞって失禁しながら失神して垂涎しながら忘我の境に入ること、間違いなしの大事件ですからね。
そりゃ楽しみなんですよ。
そりゃ興奮だってしてしまいますって。

ただし……これ、東京創元社の話なんですよね。
本当に出版されて本屋さんに並ぶまで、安心できないぼくがいるのですよ。

だってホラ、よくよく読んでみましょう。
『幽霊の2/3』は確かに「今秋、刊行する」と書かれてありますが、そのあとに続く文章が「することに決定いたしました」
えーっと……、かなり奥歯にモノが挟まったような言い方になってます?
これっていったい何を表わしているのでしょうか。

そう考えると、続く『殺す者と殺される者』だって、「年内に新訳で、」としか書かれていません。
新訳で……何よ!とずっこけてしまいそうな文章ですよね。不自然です。
いや、「最後に続く“お贈りします”に掛かっているんでしょ」と言われそうですね。
そりゃそうだ、普通だったら確かにそうです。そのように読ませます。
ただし……これ、東京創元社の話なんですよね。
本当に出版されて本屋さんに並ぶまで、安心はできないのです。
だって、言質をとられるような書き方を一切していないのですよ、このお知らせは。
どこにも「年内に新訳でお贈りする」とは書かれていないのです。

あ!
そう考えると「お贈りする」という言い方も変ですよね。
これって普通、「お送りする」じゃないのかと思うのです。
うーん、ここにも何かワナが仕掛けられているような気がしてなりません。

『フレンチ警視最初の事件』にいたっては、刊行時期すら書いていないデインジャラスさ。
いや、もうここまでくると「新訳でお贈りいたします」という言葉にすら、疑いを抱いてしまいます。
ひょっとしたら、これ、

  • 「新(しい翻)訳で(出版してあなたに)お贈りいたします」

ではなく、

  • 「新(しい言い)訳で(出版されない理由をあなたに)お贈りいたします」

という意味なのかもしれません。
うわー! これは大変なことになってきました。
やっぱりぼくは、本当に出版されて本屋さんに並ぶまで安心しないことにします。

あ……でも創元推理文庫といえば、世紀の大誤訳だったフレッド・カサック『殺人交叉点』を、ちゃんと『殺人交差点』として新訳で出版したこともありましたよね。
いやー、今思い返してもあのときは本当に嬉しかったんですよ。うん。
あのときのようなときめきを、もう一度味わえたらいいですね。
楽しみに待ってまーす。