京王電鉄の運転手は70年代ロマンチズムに溢れてる

京王電車に乗ったのですよ、井の頭線。
渋谷から吉祥寺に向かってゴウ!するのですが、発車までしばしのお待ちを。
最後尾に乗って電車が動き出すのをボーッと待っていたのです。

ガラス越しに車掌室を眺めていると、扉の開閉スイッチがある上にベルが取り付けられてあるのが見えます。
車掌室のベル
ははあ、そういえばよく電車の扉が閉まったら、どこからともなく「ジリリリリ」という音が聞こえてきてから、おもむろに電車は動き出しますよね。
あれは車掌さんが「扉を閉めましたよ」という合図を運転手に送っているのは何となく判っていたのですが、なるほど、こんなところにベルがあったのですか。

ベルの傍は、合図の一覧表が一緒に張り出されてありますよ。
ベル合図の意味一覧表
モールス信号のように決められてあるのですね。
しかもこの一覧表によると、車掌側からだけでなく、運転手側からもベルを鳴らして車掌とコミュニケーションをとることができるようになっているのです。

車掌側からの合図がこれ。
車掌側からのベル合図の意味
ほらほら、扉が閉まったあとに聞こえてくる「ジリリリリ」というベル音は、「出発せよ」という合図だったのですね。
他にも「扉を操作せよ」とか「停止位置まで前後進せよ」とか。
特に緊急性を要するものは、「列車防護に行く」「急停車せよ」と赤字で記されていますね。
こうした合図の一覧表を見ているだけでも、なんというか、「ああ、車掌さんも運転手さんも、お客さんの命を預って、大変なんだな」ということに気付かされてしまいます。

さて、もう一方の運転手側からの合図を見てみると……。
運転手側からのベル合図の意味
……。
……。
……。

おい。

「出発差し支えなきゃ」って、いったい何なんですか!? 車掌のときは散々「~せよ」と、かなり緊迫感溢れる合図だったのに、運転手になるといきなり、

出発差し支えなきゃ

って……。
今どき「~なきゃ」なんて言い方しているヒト、いませんって。
何となく70年代あたりの少女マンガにおけるセリフのかほりがプンプン漂ってくるようです。

  • ビージーズのコンサートチケットの予約をしておかなきゃ
  • 明日の彼とのデートはいいお洋服を着て行かなきゃ
  • 明日の数学はクマ先生に当てられるから予習しておかなきゃ
  • 親友のクミコとケンカしたから、明日はちゃんと謝らなきゃ
  • TVジョッキーに出場して土井まさるから白いギターとEDWINのジーンズを貰わなきゃ

……もう何というか、マドンナ旋風が吹き荒れた頃の土井たか子のキャッチフレーズですね、これは。

やるっきゃない!

車掌が緊迫した面持ちで「発車せよ」とベルを鳴らすと、運転手は「出発差し支えなきゃ……」と独り言を呟きながら出発させている訳ですね。
京王電車の運転手は、70年代のかほり漂う少女マンガのロマンチズムに溢れているのですよ!

……とは言うものの。
「出発差し支えなきゃ」っていったいどういう意味なんでしょうか。
「出発しなきゃ」という意味にとっていたのですが、“差し支え(さしつかえ)なきゃ”としたら変なんですよ。
出発したらいけないみたいじゃないですか。

ひょっとすると、これ、新手のテロリズムなんでしょうか?
真逆の意味をこっそり張っておくことで、車掌と運転手がケンカをし出し、電車の運行を乱れに乱れさせてやろうという新手の(しかし、嫌がらせレベルの)テロリズムなのかもしれませんよ!
いやいや、いくら“嫌がらせレベル”とはいえ、これが朝のラッシュ時に発動されてしまったら……効果は絶大。
何しろ車掌と運転手がケンカをしていればしているほど電車は線路の真ん中で止まっており、ダイヤは大乱れに乱れてしまうのですから。
恐ろしいのです。