第2回 世界バカミス☆アワード(青山ブックセンター本店)

わっはっはっは。バカミスですよ、バカミス。
バカミスの祭典「第2回 世界バカミス☆アワード」が青山ブックセンターで行われるということで行って参りました。
バカミス会場はこちら

司会進行はバカミスの名付け親の小山正さん、バカミスのフィクサー(と紹介された)杉江松恋さん、そしてサングラスが恐ろしい川出正樹さんの3人です。
ゲストには、作家の鳥飼否宇さんと翻訳者の日暮雅通さんと、豪華なメンバーで開会されたのでした。
バカミス会場の様子。ひな壇の横にはアワード像が……

まずは選考方法についての説明です。
それによると、まずmixiのコミュニティ「バカミス紹介コーナー」において、候補作募集アンケートが実施され内外の53作品が「第1次選考」として選ばれたそうです。
そして、さらにmixiのコミュニティメンバーにおいてこの53作品から推薦作の投票が行われ、13作品に絞り込まれました。
その後、小山正・杉江松恋・川出正樹・永嶋俊一郎の各氏により激論が交わされた上で、最終候補作として5作がノミネートされた、と言うことだそうです。

ここで、その5作を発表する前に、惜しくも最終選考から漏れてしまった8作を、各推薦者より紹介されました。
いやー、その内容が確かにどれも面白そうなことこの上ないんですね。話を聞いているとメチャクチャ気になる本ばかりだったのですよ。

(薦・川出)倉阪鬼一郎『紙の碑に泪を』(講談社ノベルス)
コロンボに憧れる刑事が、ジム・トンプソンを劣化させたような作中作となる小説を読みながら犯人のアリバイ崩しをする物語。
このどうしようもないくだらない作中作と現実がリンクした瞬間、両肩が脱臼するかと思うくらいの衝撃を受けるバカミス。
(薦・小山)恩田陸『きのうの世界』(講談社)
バカミス☆アワードの候補だけでなく、直木賞の候補と、「ダブル候補」になってますね(笑)。
通常の小説は一人称か三人称だが、章ごとに視点を変えた多人称で描く実験的作品。
街の秘密が浮かび上がった瞬間に、あっと驚くこと必至。
帯に「自らの集大成」と書いてあるが、恩田さんの集大成がこれって……(笑)。
鳥飼否宇も「この作品には仰天した。まさかこの街の秘密を書きたかったためだけにこれだけの物語を書いたのかと大笑いしてしまった」と大絶賛。
(薦・小山)スティーブン・ハンター『四十七人目の男』(扶桑社ミステリー)
スティーブン・ハンターと言えば、冒険小説家で有名だが、実は映画評論家でもあり、黒澤明の大ファン。
それが結実した作品で、「アクション小説」+「サムライ小説」+「現代小説(時代小説ではない)」という作品で、イキオイだけ勇ましい。それ以上は何もない。必然的に読む方もイキオイだけになってしまい、あとに何も残らないかも(笑)。
また彼は日本のサブカルが好きらしく、特にAV(エッチなビデオの方ね、オーディオではなく)に対する愛がものすごく感じられる。
あれはきっと所有していますね(笑)。
(薦・川出)ポール・クリーヴ『清掃魔』(柏書房)
まずタイトルに「?」。清掃魔って一体なんだ……掃除好きの犯人?
そうではなく、鬼畜犯の正体が実は警察の清掃員で、捜査情報を簡単に調べることができるというもの(ネタバレではないです)。
その清掃員、自分の犯罪以外の事件も自分が犯人にされていることを知り、自ら犯人を推理していくというストーリーだが、こいつがよく判らないヤツ。
「自分は他の犯罪者とは違うんだ」とか言いながらも、まったく普通の輩と変わりなかったりするんです(笑)。
(薦・杉江)飛鳥部勝則『堕天使拷問刑』(早川書房)
集団ヒステリーで、物語は「イヤな方へ」「イヤな方へ」とズンズン突き進んでいく。
それが高まった瞬間に、あるものが起こり、パニックが最高潮に達してしまう。
どうなるのか、と思わせておいて、作者はちゃんと本格ミステリのかたちで、落としている。8割方だけど(大爆笑)。
鳥飼否宇「全部回収してないところがいいね」(笑)。
(薦・杉江)ジェイムズ・パウエル『道化の町』(河出書房新社)
短篇集だが、全部バカミス的要素が詰まっている。
表題作は、ピエロしかいない街で発生した殺人事件の話。死因は「顔に投げつけられたパイ」(笑)。刑事もピエロで、ピエロだからボケなければいけないとか、バカミス要素がたくさん。
他にも、スパイがバスで旅行中、トンネルに入るたびに1人ずつ死んでいく話や、身体をドアにホッチキス留めされた探偵が動けないからそのままの姿勢で操作を行うなど、見逃せない作品ばかりだ!
(薦・杉江)アンドルー・クルミー『ミスター・ミー』(東京創元社)
女性には興味がない書痴の老人、稀覯書を手に入れるためにパソコンを購入したが、エロサイトの存在を知ってしまう。しかし興味があるのはハダカの女性ではなく、そのモデルが持つ本……といったAパートに、サスペンスだが“スゴイこと”が起こってSFとしても秀逸なBパート、そして思想家ルソーが登場するCパートと3つのパートが別々に進められていき、ラストで1つにつながる文学作品。
(薦・川出)マイク・ハリスン『揺さぶり』(ヴィレッジブックス文庫)
この本は、例えて言うと「ホットロッドのレースを観ていたら、スタートしたとたんにクルマのパーツがすべてバラバラに外れて2輪が出てきて、しかも真っ直ぐに進まず大きくカーブし、隣にあったオートバイレースに参加しちゃったと、オイ」みたいな作品。
(皆から「判りませんって」とモーレツなツッコミ)

そして、ここからがいよいよ最終候補作の紹介に入ります。

(薦・川出)鳥飼否宇『官能的』(原書房)
普段は数学者だが、変態により変態探偵になることで難事件が解決される……と言う物語。
と言っても、この「変態」は“スケベ”の変態ではなく、昆虫などにおける“メタモルフォーゼ”という意味での変態ですからお間違いのないように。
しかしその変態が起こるためにはきっかけが必要で、それが「罵倒されること」。
罵倒されることで変態するという……やっぱり変態の話なのかな。
(鳥飼否宇、真っ赤な顔になりながら苦笑)
ここで杉江松恋がすかさずフォロー。「もともとは現実の女性には興味がない学者なんですね。だから変態といっても妄想だけだから、女性でも安心して読めますよ」。
フォロー……?
(薦・小山)スティーヴ・ホッケンスミス『荒野のホームズ』(ハヤカワミステリ)
西部のカウボーイが、ホームズモノを知ることで彼の観察眼を我がものにするという、「ウェスタン」+「ホームズ・パスティーシュ」+「本格ミステリ」の物語。
「これはホームズものだ」と思わせる推理シーンもあるし、ウェスタンとしてのアクションシーンもある。
日暮雅通さんが翻訳されていますが大変だったのでは……?
「登場人物がさまざまな言葉の訛りで話すものだから、そこが大変でした」。
(薦・杉江)東山彰良『ジョニー・ザ・ラビット』(双葉社)
マフィアのボスに飼われていたが、そのボスが殺されたために逃げ出して自然界に帰り、孤高の探偵になったウサギのジョニーの話。
ウサギの視点から語られるウサギの世界のハードボイルド。
実は「ウサギ」という主人公は、「マイノリティ」と置き換えて読ませて悲しみを描き出している物語でもある。
(薦・小山)アノニマス『名もなき書』(PHP研究所)
「アノニマス」は名前ではなく、作者不詳のこと。
ネットで発表されていて、口コミで広がったものを出版したものである。
しかしこの内容がトンデモぶり。「名もなき書」を巡って争奪戦が繰り広げられる様は『月長石』テイストだが、どんどんとカオスが広がっていく。
こんなトンデモ本がPHP研究所から出ているなんて、もう狂ったかと……。
担当者に出版までのいきさつを訊きたかったが、捕まらなかった。ひょっとしてもうPHPにはいないのかも(笑)。
杉江松恋「表紙が、荒木飛呂彦だったらよかったかも。『ジョジョ』のようにBGMで“ゴゴゴゴゴ……”と擬音を想像しながら読むといいよ!」(笑)。
(薦・松江)ドゥエイン・スウィアジンスキー『メアリー・ケイト』(ハヤカワミステリ文庫)
これ、あらすじの1/3がウソ書いてます(笑)。こんな展開はありません。
ただ、そう書かざるを得なかったのは、きっと何を書いてもネタバレになっちゃうからだと思う。
とりあえず読者には「面白そう」と思わせて、手に取って読んでもらえれば、きっとあらすじのことなんて忘れるだろう、と思ったのでは?
昔のポケミスではよくあったことなので、懐かしい(笑)。
とにかく、60ページでとんでもない展開になる。
ミステリ史上もっとも「ペアで逃げなければならない」状況、ミステリ史上もっとも「切実な」タイムリミット。
恐ろしいのは、作者はこの続篇を書いているそうだ……。
鳥飼否宇「なんでこんなバカな設定を思いついちゃったのかと」。

ここで最終投票に入ります。
観客にもあらかじめ投票用紙が渡されてあり、最終候補作のなかから「この本を読みたい」と思ったものを“3作”選び、集計に入ります。

集計結果を待つ間に、質問コーナーとなりました。

「バカミスを人に勧めたらバカにされました」
(川出)「人に合わせて作品を選ばないといけません。“万人受けするバカミス”なんて存在しません」
(小山)「万人受けするバカミスといえば、比較的カーあたりでは? なかでも『魔女が笑う夜』。」
(杉江)「会社でいきなり『官能的』を勧めたら、セクハラになるよね」
(鳥飼)「(真っ赤な顔になって)そんなことありません!」

「杉江松恋さんをずっと女性だと思っていました」
ペンネームのためだと思うのですが、あと、文章を書く際にも気をつけていることがあるんですよ。

  • 女性○○とは言わない
    (例えば弁護士の場合、男性でもわざわざ「男性弁護士」とは言わない。そういった「男性○○」と言わないものについては、「女性○○」とも言わないようにしている)
  • 文章のリズムが「はんなり」しているように心がける
    (おかげでいつも編集者の皆さんには校正で真っ赤にして返していて申し訳ないです)

「皆さんの“オールタイム・ベスト・バカミス”を教えてください」 (小山)霞流一『スティームタイガーの疾走』
(鳥飼)ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ『赤い右手』
(日暮)ウィリアム・ブリテンの「読んだ男」シリーズ(『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』など)
(川出)スティーブン・ドビンズ『奇妙な人生』
(杉江)アガサ・クリスティの全作。
なにか1作というと……読んだ回数で最も多いのは、小林信彦『神野推理氏の華麗な冒険』

そしていよいよ投票集計ができました。 栄えあるアワード受賞作を、小山正さんにより発表されました。

第2回 世界バカミス☆アワード 受賞作
鳥飼否宇『官能的』(72点)
小山正よりバカミス像を授与された鳥飼否宇

次点
東山彰良『ジョニー・ザ・ラビット』(61点)

以下、
ドゥエイン・スウィアジンスキー『メアリー・ケイト』(54点)
スティーヴ・ホッケンスミス『荒野のホームズ』(35点)
アノニマス『名もなき書』(29点)
と続きました。
アノニマスが受賞しなかったと言うことで、「よかったー」と安堵をもらす小山さん。
「何しろこの作品が受賞していたら、誰に渡していいのか判りませんから」。

その後はサイン会。
急遽、惜しくも次点だった東山彰良も参加することになるも、飛行機の時間が差し迫っている言うことで大慌ての大忙しでのサイン。
東山彰良のサイン入り『ジョニー・ザ・ラビット』

そして、奄美大島在住のためにサイン会がなかなかできない鳥飼否宇サイン。
「King Crimsonが好きなので、ぜひ『太陽と戦慄』のシリーズを」とリクエストすると、「ああ、あの本ですね、文庫化するのに大幅にリライトするのですよ。で、タイトルを『太陽と戦慄 パート2』にしようかなと……悪ふざけ過ぎますかね」。
いえいえ、だったらぜひとも「パート4」までお願いします。
(もともと、King Crimsonには「太陽と戦慄」という名曲があり、この曲に「パート1」「パート2」……「パート4」とあるのです)
鳥飼否宇のサイン入り『爆発的』

コメント

昨日はお越し頂きありがとうございました。
そしてご丁寧なレポートをありがとうございます。
もうアップされていてビックリです。
ただ、数カ所気になるところがあり、コメントさせていただいた次第です。

(1)誤 (薦・小山)倉阪鬼一郎『紙の碑に泪を』
   正 (薦・川出)倉阪鬼一郎『紙の碑に泪を』
 ※これは紹介者が間違っています。川出氏が担当でした。
(2)『きのうの世界』の紹介の箇所で、私(小山)が、
  「街の秘密が浮かび上がった瞬間に、脱力すること必至。」
  と言ったことになってますが、私がこう言いましたでしょうか?
  バカミスを紹介するとき、「脱力」という言葉は使わないように
  してきたのですが(ネガティブな語感があるので)、もしそう発言して
  いたとしたら、私のミスであります。録音された音声はまだ確認して
  ないのですが、もしよろしければ「脱力」という表現は本意ではないので
  「脱力」と言う箇所を→「あっと驚くこと」に修正していただければ
  大変嬉しいです。
(3)誤 (薦・杉江)スティーブン・ハンター『四十七人目の男』
   正 (薦・小山)スティーブン・ハンター『四十七人目の男』
  ※これも単純な名前違いです。
以上です。せっかく書いていただいたのに、お願いをして申し訳ございません。ただ、ネットとはいえ不特定多数を対象とするメディアなので、明らかな
間違いや、修正をお願いできる箇所に関しては、切にお願いする次第でございます。
申し訳ございません。もし、無理ならば結構です。

小山正さま
コメントをいただきましてどうもありがとうございました。

小山さんには、実は吉祥寺のTRICK+TRAPでも、色々とバカミスの推薦図書をアドバイスしていただいたりしているので、ぼくにとってはまさに「バカミスのエバンジェリスト」です。
そんなエバンジェリスト・小山さん直々にコメントをいただき、非常に緊張しています。

日曜日は、本当に楽しいイベントを開催していただき、どうもありがとうございました。
あっという間の2時間で、びっくりしています。
壇上で皆さんが本当に嬉しそうに、楽しそうに、プレゼンされている様子に、会場も大爆笑に次ぐ大爆笑で、本当にバカミスとしての楽しさが存分に味わえました。
ぜひとも第3回も参加させていただきたく思っています。
(参加者としては、候補作はあえて未読で参加し、皆さんのプレゼンに「どんな物語なんだー!」と悶絶する楽しみもありますね)

さて、内容に関しての数々の間違い、申し訳ありません。
断片的なメモ書きをもとに、かすかな記憶を呼び起こしながら書き起こした文章でしたので、多分に主観が入りまくっています……(たとえば「脱力」という言葉など)。
また推薦者のお名前も、皆さんのあまりに熱がこもったプレゼンについ聞き入ってしまい、ふとすると、メモの手が止まっていることもしばしば……。
メモ自体がカオスなスパイラル構造となってしまい、かなりいい加減な内容となってしまいました。

色々とご指摘をありがとうございます。
早速こっそりと何事もなかったかのような顔をして修正させていただきました。
(って、こんなところで堂々と書いていますが)

これからも数々のバカミスのご紹介、楽しみにしていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

お世話になっております。
ご修正戴きありがとうございました。
大感謝でございます。本当にすいません。
これなら誰が見ても大丈夫だと思いました。
今後ともよろしくお付き合い下さい。
感謝を込めて。

いえいえ、こちらこそ色々とお騒がせいたし、申し訳ありませんでした。
お墨付きをありがとうございます。
これで第3回も「出入り禁止」なることなく、堂々と参加させていただけそうで一安心です。
こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。