喜多尾浩代「不確定な出来事(小部屋での身体事)vol.1」(七針)

メチャクチャ気になるチラシを見つけてしまったのです。
「不確定な出来事(小部屋での身体事)vol.1」と書かれたその小さなチラシには、一切何が行われるのか書かれてありません。
ただ単に

あなたとともにいることによって成立する
小部屋での身体事を おたのしみください

とだけしか書かれていないのです。
喜多尾浩代「不確定な出来事(小部屋での身体事)vol.1」

「あなたとともにいることによって成立する」……って、まさか「シュレーディンガーの猫」?
(全然違います)
しか観客は「毎回10人限定とさせていただきます」……って、まさかポタライブ?
(たぶん違います)
いろんな意味で気になっちゃいます。
気になったものは観に行かなければなりません。

そんな訳で今日、会社帰りに新川にあるビルの地下、「七針」に行ってきました。
新川のビル地下にあるギャラリー「七針」
ギャラリーのようにこじんまりとした会場には、壁に沿って四方にソファやベンチが並べられてあります。
受付のお兄さんに訊くと、「どこでも結構ですよ、どうぞ」。
好きなところに座って開演を待ちます。

ソファやベンチにぐるりと囲まれるようにして、真ん中の椅子に腰掛けている女性、彼女が喜多尾浩代さんなのでしょう。
まるで観客を試すかのように見回しています。
うわ、目が合っちゃったらどうしよう……とドキドキしていたら、あら? どうも違うようなんです。
会場にいる観客を試すように見回しているのではなく、どうやら「部屋にあるモノを眺めている」だけのようなのです。

そして……そこからはもう彼女の引き出す世界観にぐっと引き込まれる観客。
音響効果は一切用いません。
しんと静まりかえった会場内に響くのは、彼女の息づかい、床を擦る足の音、指で壁をひっかく音、ストーブの加湿装置、そしてヤカンでお湯が湧く音。
こうした「音響効果として意図した生活音」に加え、外から漏れ聞こえてくる数々の音(水道巻を流れる音、車が通りすぎていく音、声高に通り過ぎていく人々……)。
こうした意図しない音と、意図した音が渾然一体となって耳に響いてきて、新たな空間となって広がる様は……まさに「室内的ポタライブ」といった趣じゃないですか。
ラスト、お湯が沸き、静かにその音を聞きながら徐々にフェードアウトしていくその静けさは、火を切ることで生じる「冬の寒さ」を実感できるものではないかと思うのでした。

いやー、面白いのですよ、面白い。メチャクチャ面白い。
このしんと静まりかえった会場内、身動きするのもはばかれるようなキンと張り詰めた空気の中で、パフォーマーが紡ぎ出す「日常のなかの非日常」。
なんというか、「現実感が喪失してしまって途方に暮れた感じ」から生じる「心細さ」が、ラストですーっと現実に戻ってくることで、ホッとできるその瞬間の心地よさ。
非現実のまっただ中を浮遊しているかのように感じた1時間だったのでした。

今回のこの試みは、これから2ヶ月に1度、偶数月に開催していくそうです。
1年間を通じて開催することで、パフォーマーとしても季節の移り変わりを作品として表わしていきたいとのことでした。
ホント、ちょうどいいタイミングでぼくはこのイベントを知ってラッキーだったのでした。

終了後には、沸きたてのお湯でお茶を振る舞われました。
ぼくがいただいたのは、「Lady Grey」なる柑橘系の匂いが心地いいお茶でした。
どうも、ごちそうさまでした。