ひょっとこ乱舞「プラスチックレモン」(吉祥寺シアター)

笠井里美さんと中村早香さんからご案内をいただきました。いつもありがとうございます!
そんな訳で、横浜での稽古を夕方に切り上げ、ひょっとこ乱舞「プラスチックレモン」を観に、吉祥寺へゴウ!
吉祥寺シアターと、公演案内

客席に入ってまず驚かされたのはその舞台セット。
吉祥寺シアターって、そのかなり広い空間が特徴なんですね。
横に広いだけでなく、奥行きもかなりあるし、何といっても特筆すべきはその天井高。
3階までの吹き抜けになっているのですから、その空間の大きさもかなりのものだと思うのです。
吉祥寺シアターで行われるお芝居は、このステージ空間をどのように処理するかが課題のようで、これまで観たなかでは「ちょっと無理してるなー」とか「かなり空間が余っているなー」と感じさせられることが多かったのですね。
ところが今回の舞台セットは、その空間を「遠近感」をつかって処理しているんです。
奥行きはわざとデフォルメした「通路」のようなラインが床に描かれています。
高さは様々な大きさのボール(ソフトボールからバランスボールまで)を様々な位置に吊されています。
この3次元的な遠近感を利用したセットを配置することで、それでなくても大きな空間を、さらに広大な「宇宙空間的イメージ」として見せています。
ただ単に空間をセットで埋めて処理するといのではなく、ストーリーとして扱っている「宇宙」をうまく取り入れて、なかなか素敵な舞台であると思うのですね。

ひょっとこ乱舞「プラスチックレモン」(吉祥寺シアター)
そんな今回のストーリーは、かなりのSFテイスト。
「別次元に突然に飛ばされてしまう(トリップしてしまう)」人々を描くのですが、そのトリップがあることを観客に無理矢理押しつけるのではなく、ちゃんと"なぜ起こったのか"ということを理由づけて説明していきます。
ただ、このあたりのかなりペダントリーな展開に、ちょっとセリフが追い切れないところも所々。
また、同時に様々なエピソードが積み重ねられていくのですが、これがなんというか、かなり平面的なんですね。
登場人物の内的情景をセリフとして延々語られていく展開は、何というか、かなり前衛的。
もう一歩進んでしまうと、こりゃ唐十郎になっちゃうよ、というところに「うう、ツライ」。

しかしながら後半、トリップの説明として"別次元"の話が組み込まれてくることで、「あらら、ちょっと待てよ」。
ひょっとするとこの「平面を積み重ねていく」=「3次元になる」=「しかし2次元の住人にはそう見えない」と言うところを表わしているのかもしれません。
そしてペダントリーな展開で始まったSFテイストは、単なるガジェットに過ぎず、真に表現したかったテーマは、最後の羽化ちゃんの叫びではないかと思うのですね。
あの叫び、忘却、かすかな記憶、そしてラストのセリフ。
ああ、ぼくの目にも雨が降って降って仕方がなかったのですよ。

その羽化ちゃんである笠井さん。
ご案内には「引っ越しをしました」とありましたが、それってメチャクチャ物語とシンクロしてるじゃないですか。
これって、ひょっとしたらひょっとして近況報告のご挨拶ではなく、今回の物語はもうこのご案内を受け取った時点から始まっていたのではないのでしょうか......。
って、これはすごいっすよ。すごい。
前々回公演の「トラビシャ」でも、ネット世界を描くのに客席とステージをメールを介してリンクさせていたのですが、いやいやいや。
もう、それ以上に"観客自身が物語に組み入れこまれていた"というメタ演劇なんですよ!
それも、ステージを観に行かなければ観客自身がメタ演劇に巻き込まれていることも気付かないという仕掛けです!
うーん、これはすごい。
この仕掛けをもっと大々的に発展させていったら、演劇における新たな一手法となるんじゃないかしらん。

今回、久々に出演されたチョウソンハさん、彼の存在感ってやっぱりスゴイですよねえ。
彼がトリップするところのソロシーンなんて、その動きに、一瞬にして、場内全体に鳥肌が立ったような、そんな空気が流れたのですよ。
ぞわりって。

アフタートークでは、ゲストとして別役実が登場。
主宰者の広田淳一さん、あんなにやんちゃ坊主な印象なのに、別役実を前にしてはガッチガチに緊張しています。
まるで波平を前にしたカツオ状態。
対する別役実は、トークといいつつも「うーーーーーん」「うーーーーーん」と唸りをあげて、終始リラックスムード。
その対比の様子があまりにおかしく、広田さんのアタフタした動作のひとつひとつに客席は大爆笑なのでした。