NYLON100℃「シャープさんフラットさん(BLACK)」(本多劇場)

ナイロン100℃の新作「シャープさんフラットさん」を観に、下北沢は本多劇場へレッツゴウ。

今回の新作は、なんとダブルキャストで「ブラック・チーム」と「ホワイト・チーム」による2本立てなんですね。
通常、"ダブルキャスト"と言えば、単に出演者の一部が変わるだけなんですが、いえいえ。
今回の作品は「ブラック・チーム」「ホワイト・チーム」と、チーム扱いされているように全役柄がダブルキャストになるうえ、ストーリーも変わっているのだとか。
こりゃもう、ある意味「新作2本立て」じゃないですか!
そんな訳で、それでなくても高いナイロン公演ですが、2回分ともチケットを買ってしまいました。

そんなダブルキャストの作品、まず観たのが「ブラック・チーム」バージョン。
こちらの役者は、ぼくが好きな劇団員が揃っているうえ、ゲストもなんと坂井真紀に加えて、小池栄子ですよ、小池栄子。わお。
新婚ホヤホヤの小池栄子なのに、ミニスカートのドレスでセクシーお色気ムンムンシーンがあったりするんですよ。わおわお。
ややもすると、その小池栄子の演技には少々不安があったのですが、ノープロブレム!
本来であれば、主役であってもおかしくはない坂井真紀を脇役としてしまうほどに、小池栄子の演技力は問題なく、それどころか、あのガタイのよさでかなり存在感を放っていたのでした。
考えてみたら、「ブラック・チーム」は主役の大倉孝二に峯村リエといったナイロン100℃の"超ノッポ級"役者に加えて、ゲストに小池栄子と、もうそこはアルプス山脈かクンルン山脈か、といった趣のタッパある役者が勢揃いしているんですよね。

もともとナイロン100℃の作品では、オープニングシーンで、映像を舞台セットに映し出すというかなりアクロバティックで格好いいスタイルを用いているのですが、なんと、今回はそのアクロバティックな映像を劇中でもバンバン使用しています。
たとえば、主人公の心の葛藤。
「あああああ!」と主人公が叫びだすと、彼の口から放たれた「あああああ」という言葉が舞台中にドンドンと増殖していき、ついには舞台すべてを真っ黒に覆い尽くして暗転、とか。
もうゾクゾクしちゃいましたよ。
あんな演出ができるのは、ケラだけなんでしょうかねえ。

とはいうものの、そこはやっぱりナイロン100℃の作品です。
ナンセンスやスラップスティックでメチャクチャ観客を笑わせながらも、テーマが重いんです。重い。
しかもその重さが半端なく押し寄せてくるものだから、観ながら涙が止まりませんでした。
ナイロン100℃の舞台で泣かされたのは、今回が初めてじゃないでしょうかねえ。
特に、主人公の彼女である小池栄子が去っていく時に主人公に放ったセリフ、「あなたは人ひとりを壊したのよ」がキツイ。
別に主人公である彼は、彼女を壊したくて壊したわけではないと思うのですね。
生きるために、彼の唯一表現できるモノにただ、ただ、しがみついてきただけだと思うのです。
それを彼女も判っているからこそ、すべてを放り出してサナトリウムに逃げてしまった彼を追ってきたりするのだけれども、しかし、彼女もそれ以上はどうしていいのか判らない。

で、結局のところは、やはり女性が現実的ということなんでしょうね。「あなたは誰ともうまくやっていくことなんてできないのよ」という言葉を残して去っていく。

そもそも、コミュニケーション不全の人間は、他人とうまく関係が気付けないからこそ、どうしていいのか判らず悩んだり、落ち込んだり、そして他人を傷つけて去っていかれて、また悩んだりするわけなんですよね。
そこを、傷口に塩をなすり込むようにズリズリと「これでもか」「これでもか」と情け容赦なく攻撃してくるストーリー展開には、もう心が痛められっぱなしです。

ただ主人公の唯一の救いは、彼と気持ちを分かり合える人物の登場なんですよね。
価値観がまったく同じ人物を登場させ、その人物と2人で気が狂ったかのようにハイテンションになりながらバカ話を繰り広げていく彼の姿に、まだ救いがあるとみなされるのではないかと思うのです。
ただし、その「価値観」は世間からまったく受け入れられるものではないため、今度はその2人が世間とのコミュニケーション不全に陥り、新たな悲劇が始まるのではないかと、そのような暗示を感じさせるエンディングではあったのですが。

いやあ、今回の作品はナイロン史上でも傑作の部類に入るのではないでしょうか。
カーテンコールで鳴りやまない拍手は、主役の大倉孝二が登場するとより一段と大きく鳴り響いていたのです。
あんなに大きな拍手を本多劇場で聞いたのは、初めてかもしれません。
NYLON 100℃「シャープさんフラットさん(BLACK)」(本多劇場)

涙をボロボロこぼしながら拍手していたら、急に客席明るくなってしまって、隣の席のお姉さんに、モロ「あ、コイツ泣いてやがる」と見られてしまいました。
ハズカシイ......。

今週の土曜日はサトエリちゃんがゲスト出演の「ホワイトバージョン」を観に行きます。