スシ振るスシバー、カレー振るカレーバー

その昔。
ニッポン全体がバブルに浮かれていた頃のお話ですよ。
当時、ナウでヤングにバカウケなシティボゥイにイケイケギャルたちは、それそれは夜な夜な遊び狂っておりましたとさ。
そんな彼らが集う夜遊びスポットに、「スシバー」なるものがあったのです。

このスシバー、カウンターのなかにはバーテンならぬスシ職人が控えており、客がオーダーすると、威勢よく「はいよ、喜んでっ!」
シェーカーにスシネタとシャリを注ぐと、目にも止まらないスピードでシェーカーを振って、振って、振りまくるのです。
そして「へい、お待ちっ!」と言いながら、ゲタのような台の上にシェーカーを静かに傾けると……おお。
ゲタのような台の上には、それはそれは宝石のように美しく輝くニギリが現れるのですよ。
この宝石のように美しく輝くスシは、当然のことながら、ベースとなるスシネタによってさまざまな色が楽しめるのですね。
燃えるような赤だと、ベースはこれ、マグロですね。
透きとおるような白だとヒラメ、輝くような黄色だと玉子、若々しさを感じさせる緑だとアボカド……。
カウンターの向こうに静かに佇むスシ職人は、ベースとなるスシネタ次第でどんな色でも宝石のように輝くスシを編み出すことができるのです。

これがもう有名スシテンダーともなれば大変ですよ。
客のその日の気分に合わせて、オリジナルカクテル……もとい、オリジナルニギリをつくってくれるのですから。
ホロリとしたくなったときは、ワサビのパンチが効いたサビニギリ。
飲みすぎてお口をスッキリさせたくなったときは、ショウガをたっぷり載せたガリニギリ。
ニッポン人のソウル、醤油を使ったムラサキニギリ。
締めはもちろん、アガリニギリ。

ああ、かつてのニッポンには、そんな時代があったのですよ。
夜な夜な、オシャレなスシバーでお腹を満たしてからは巨大ディスコにレッツラゴウ!していた、そんな時代が。

今日、東中野で「カレーバー」なるナゾの店を見掛けて、そんなバブルな日々のことを思い出したのでした。
きっとバーテンならぬマスターが、カレーをシェーカーで振っている
「カレーバー」というくらいですから、きっとこの店、カウンターの向こうにいるマスターに注文したら、「かしこまりました」とおもむろに取り出したシェーカーで、カレーを見事な手さばきでシェイク、シェイク。
「お待たせいたしました」と、みごとなバランスで調合されたルーを、目の前のライスに静かに掛けてくれるのでしょうね。

その日の客の気分に合わせたオリジナルカレーも、もちろん何でもござれなんですよ。
きっと。