ミステリ界にその名を轟かせるビッグネーム、それが“島田荘司”。
彼のファンであるならば、この地はきっと「綱島」「馬車道」に次ぐ聖地となるに違いありません。
その名も、アパート「島田荘」。

そんな聖地に羨ましくもお住みになっている住人とは、シマソウファンとして、ぜひぜひお近づきになっておきたいものです。
しかし先日は、聖地を見つけてしまった嬉しさから不用意に近寄ってしまい、「島田荘」の住人をパニック状態に陥れてしまい、「島田荘」の廊下では、阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられてしまったのでした。

うう……、ごめんよう。
そこで、前回の失敗を二度と繰り返さないよう、ここはひとつ、のんびりゆっくりと接触することにしました。
再び「島田荘」に到着すると……おおう。

既に住人たちが、何やら敷地内をパトロールしているのですよ。
しかも住人が今回は1人増えています! 2人ですよ、2人!
しかしここは、敢えてそんな心の興奮を奥底に仕舞い込んでおき、キャツらとは目が合わないよう知らんぷりです。
ワザとらしく他所を向きながら、その存在を馴らしておそうと「島田荘」の敷地内に勝手にヨッコラショと腰を下ろしている怪しげな輩が約1名。
銅像のようにジッとしています。
もはや完全に「新春かくし芸大会」のハナ肇とダブってしまっています。
そうですよ、ぼくはハナ肇なんですよ!
たとえクレージーのメンバーから水をかけられようとも、ブラシでゴシゴシこすられようとも、ジッと耐えるだけなんですよ!
My name is HAJIME HANA, Japanese famous MUSICIAN !
……いったいぼくは、何分ぐらいハナ肇になっていたのでしょうか。
「そろそろいいかな?」と、そっと住人たちの様子を伺うと……やったね!

パトロールも無事に終わって、警戒心を解いてしまったのでしょう。
だらしなく昼寝したり、爪をとぐのに夢中になったりしている住人の姿がそこにあるのですよ!
ここまでくれば、もう一息です。
ただし、ここで焦って不用意に姿を見せてしまっては、すべてが台無しになってしまうこと間違いありません。
そしらぬ顔をしながら、キャツらが喜びそうな「かさこそ」と音のするビニール袋の口を開けて、そっと近づいていくと……。
何だ、おまえは?
あ、気付かれちゃいました。
いえ、あの、このたび、今度、こちらに引っ越してきた者です(←ウソばっかり)。
ご挨拶に寄らせていただきました。
ああ、そう。そりゃどうもご丁寧に。
こちらこそよろしくね。
ああ、やりましたよ、やりました。
ちゃんと三つ指ついてご挨拶をしていただけたのでした。
ミステリファンの聖地、「島田荘」を発見して、その念願であった「住人たちとのコミュニケーション」を今、ぼくは叶えたのでした。
しかし。
うち解けられたと思ったのもつかの間、彼らは決して自分たちから1メートル以内には、近寄らせてくれませんでした。
そんなのコミュニケーションじゃない……。



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