シベリア少女鉄道の再放送

さて、空はドンヨリ、空気はムシムシとお出かけには最悪なのですが、新宿へレッツ・ゴウ。
歌舞伎町の奥にあるシアター・ミラクルで、シベリア少女鉄道の過去作品がビデオ上演されるのですよ。
「シベリア少女鉄道の再放送」(新宿シアター・ミラクル)
今回の上演作品は全部で4本。
本当は全部見たかったのですが、体力的に自信がなく、2作品を厳選したのでした。

「栄冠は君に輝く」
弱小高校野球チームが、エースの転校やマネージャーの交通事故死といった困難を乗り越えていきながら、甲子園に向かって予選を勝ち進んでいく......という、サブいぼが出てしまうほどに青春ド真ん中ストレートなストーリー。
このあらすじ紹介だけで「オレたち青春してるんだぜ」的なつまらない小芝居のようなのですが......いえいえ。
いや、確かに全上演時間90分のうち、前半60分、いや75分は小芝居です。
が、最後の最後で出たーっ!
ラストのシーンで次々と明かされる前半部での伏線の数々。
伏線といいながら、まったく伏せられていません。
「よくここまで隠しとおせたな」とビックリしてしまうほどあからさまに見せつけられているのですね。「あんな伏線」や「こんな伏線」が。
75分にも渡って用意周到にまき散らされてきたその伏線の数々が、ラストのわずか15分ほどのために結実していくさまは、もう感動ものです。
役者の動きが、役者のセリフが、ステージのセットが、それぞれ渾然一体となって織りなしてくるダブルミーニングの嵐に、観客としてはただ、ただ、爆笑するだけです。
ああ、あのセリフはこのための伏線だったのね!
うあ、あのシーンはこのために用意されてたのか!
登場人物の名前が......!

2001年に行われた第4回公演とのことで、正直なところ、役者の演技力や脚本の構成、演出などの部分にまだまだ荒削りなところが感じられます。
しかしそんな些末なことなど吹き飛ばすかのように、この時点で既に「シベリア少女鉄道」というジャンルが確立していることが確認できる傑作なのでした。
個人的には、久しぶりに秋澤弥里さんの顔が見られただけでも大満足なのですよ、もう。
シベリア少女鉄道「栄冠は君に輝く」

「残酷な神が支配する」
これはもう本公演で観ているので、ストーリーも展開も、そして驚愕のオチもすべて知っているのです。
しかし、だからこそ、余計に「再確認」という意味で観直しておきたい作品なのでした。
萩尾望都の名作をそのまんまタイトルにしていますが、内容は一切関係ありません。
ただ、ただ、「残酷な神」によって右往左往する人間たちの哀しみがあぶり出し、その「残酷な神」もまた、"ネ申"によって支配されていたという寓話のようなストーリーです。

改めて見直すと、やはり、前半のストーリー展開は"サスペンス"として秀逸ですよねー。
"論理の塔を組み立てては壊す"という、本格ミステリとしてキッチリ計算された構成の妙に「スゲーよ、スゲー」。
また2度目ということでストーリーが判っているだけに、これまた数々の伏線が仕掛けられていることにも、改めて気が付かされてしまいました。
実に細かいところまで手を抜かず、キッチリと伏線を用意しておき、それをラストの"大バカネタ"で一気に瓦解されるところは、もはやシベリア少女鉄道の十八番......というよりも本作品が今のところ、最高傑作なのかもしれません。
ただそのネタがネタであるだけに、テレビ放映やDVD発売ができないところが実にもったいないところなんですねー。
セットも豪華すぎるのので、再演も難しそうですし。
ああ、この作品は我々の記憶の底に沈み込み、このまま数ある小劇団の演劇史のなかに埋もれていってしまうのでしょうか......。
実にモッタイナイ。
シベリア少女鉄道「残酷な神が支配する」