D坂にシマ模様の着物姿の学生はいません

ひょんなことからパフォーマーの塚本佳紹さんとお知り合いになりました。
その彼の公演があるということでご案内をいただいたのですが、内容を聞いてみると……オオウ。
メチャクチャ面白そうじゃないですか。それはぜひとも行かなければなりません。

そんな訳で夜、会場のある千駄木に向かってレッツゴウ……って、あれ? 千駄木ってドコナンデスカ。
危うく千駄ヶ谷に行ってしまうところでした。
……って、アカンやん。字にするとわずか「木」と「谷」の差なのに、場所にするととんでもなく違うのでした。
中央線に乗りたくてウズウズする自分をナントカ押さえ込み、地下鉄千代田線で千駄木駅までやって来ましたよ。
駅から地上に出ると、そこはもう団子坂です。
もうすっかり夜の帳が降りていた団子坂
夜の闇が迫り来る団子坂は格子柄の着物姿の学生でも通らないかとキョロキョロ。
(いる訳ありません)

団子坂まで来ると、会場までもうあとわずか……とのことですが、うう。
案内どおりに進んでいくと、ドンドン住宅街の中に入っていきますよ。
前も後ろも右も左も、ずーっと住宅。こんなところにイベントスペースなんてあるのでしょうか
こんなところに本当にイベントスペースなんてあるのかなあ、ひょっとして騙されているんじゃないかしらんと不安になってきたところで……
あった。
あっっったぁぁぁー!
「ダメだ、見つからないー」と挫けそうになったその絶妙な瞬間に、煌々とした灯りが見えて出迎えてくれるのです。
ドラマチックなイベントスペースじゃないですか。

中は普通の民家を改装したようなスペースになっています。
入口を入ると靴を脱いでそのまま会場入り。
なんとそこではもう塚本さんが何やら話をしながら、既にパフォーマンスが始まっていたのでした。
パフォーマンスと言っても、即興で編み出す展示会(のようなもの)。
ステージではなく展示ですから、観客は自由にステージエリアに立ち入って思い思いの鑑賞を勧められるのですが、悲しいかなニッポンジン。誰一人として席を立たなかったのでした。
ぼくは本当のところ、“特等席”で楽しみたかったのですが……ヘタレでスンマセン。

内容としては、スライドに映し出したテキストに、パフォーマーが様々な干渉を与えることで予測不能なその変化を鑑賞する……と言っても何だかよく判りませんよね。
いや、しかしこれがかなりエキサイティングで刺激的、とってもワクワクするのですよ、これがまた。
干渉を与えられた動きが、決してヒトの手でつくりだすことができない「美しさ」を備えているのです。
CGでは決して表わすことができない美しさ、とでも言えばいいのでしょうか。
そのうえでその干渉されたモノの状態を何度も何度も見てくると、今度はその動きがまるで「意志」を持っているかのような気もしてくるのですね。
で、「だからこの動きは美しくて魅力的だったのか」なんて全然見当違いのことを思ってしまっているぼく。
この体験はいつかしたことがあったよなあ……と考えていると、「あ」。
子供の頃、クルマの窓ガラスについた雨粒がワイパーで拭われる動きが面白くて、オヤジとのドライブ中もずっと見ていたのでした。
まさにあの動きなんですね、今回のこの干渉は。
いやあ、実に面白いものを見させていただいたのでした。

続いては、ダンサーの井上みちるさんが登場。
まずはステージ背景に、引き続き塚本さんの即興作品が映し出されてのコラボレーションです。
そしてソロになだれ込んでいくという2部構成。
いやー、しかし井上みちるさんの踊りは、キツいですよね。キツいのです、メチャクチャキツい。
観客として観ているこちらまでもが息苦しく思えてくるほどのキツさ。
もう、彼女自身の“肉体”の限界を試すかのような動きをずっとしているのですから、息苦しくない訳がありません。
「そんなに肉体を酷使しなくても」と心配になってしまうほどの……何というのでしょう、ストイックさ?
しかし、それは決してBATIKの黒田行世のような動きの激しいものではないし、H・アール・カオスの白河直子のようなアクロバティックさでもないんです。
むしろその逆、メチャクチャ静かな踊りなんですね。
なのに、激しいのです。息苦しいのです。
いやー、息をするのもはばかれるほどの凄まじい緊張感が会場内に張り詰めていましたよ。
あんなに静かなダンスなのに、やはり踊り手としてはその激しさをよく表わしていたのが、汗。
終わった彼女の肌には美しく汗が光っていたのでした。

帰りに塚本さんにご挨拶。
主宰者として観客の皆さん一人一人にご挨拶されているところでしたので、簡単にひと言だけ「面白かった!」とお伝えしたつもりだったのですが……うーん、うまく伝わったのでしょうか。
農動的宇宙像2008(千駄木ブリックワン)

帰りは、ちょっと足を伸ばして谷中銀座から西日暮里駅に向かって散歩がてらプラリプラリ。
商店街は、もうすっかり店じまいしていたのでした