『乳と卵』なのに圧倒的オヤジ率。川上未映子サイン会

川上未映子の芥川賞受賞作「乳と卵」も収載した新刊『乳と卵』の発売記念サイン会があるということで、まだ皆がザワザワとオシゴトしているなかをひとり定時ダッシュして、電車でガタンゴトン、神保町は三省堂書店にやって来たのでした。
素知らぬ顔で素早く会社を飛び出したのが功を奏したのか、サイン会の開始時間が18時30分なのに到着したのはまだ18時ですよ。余裕ですよ、余裕。ウワッハッハッハッハッハ。
......などと店内で高笑いしているぼく。
完全に常軌を逸しています。

そんな高笑いが止まらないぼくを危険人物とみなされたのでしょう、胡散くさいモノでも見るかのような目つきでやって来た店員さん、「サイン会にお越しのお客さまは、こちらにお並びください」。
ウワッハッハッハッハッハ、もうどこへでも行ってやろうではありませんか。

誘導されるがままに、フロアの片隅に設置された薄暗い非常階段に行ってみると......どわおぅ!
階段にギッシリ、人が詰め込まれているのですよ!
いや、詰め込まれているのではありません。詰め込んでいるのですよ、自らを。
まるで上海雑伎団の稽古場のような風景が目の前に広がっているようなのですよ!
ううん、皆、気合い十分でやるなぁ......。

「こちらの階段を上って最後尾にお並びください」。
勝ち誇ったかのようにニッコリ笑みを浮かべる店員さん。
仕方ありません。
すっかり出遅れてしまったぼくは、非常階段のフロアで上海雑伎団のようになっている人たちをかき分けながら、階段をトボトボ、トボトボと上っていったのです。
2階......、3階......、まだまだ続きますよ、上海雑伎団。

というか、オヤジ率、メチャ高っ!
階段を上りながら、見るともなしに並んでいる人たちを見ていたのですが、どうもオヤジ率が高いのです。
もう9割9分がオヤジですよオヤジ。
階段をエッチラオッチラ、上っていって、見かけた女性のはたったの数人。
あとは、ぜぇぇぇぇぇんいん、オヤジなのでした。見事にスゴイ!としかいいようのない客層です。
......とか思っているうちにようやく最後尾。
ぼくも並んで、はい、さらにオヤジ率を上げてしまいました。

その最後尾は4階ですよ。
サイン会が始まるまで、まだ30分もあるというのに、行列はなんともう4階まで上がってきているのでした。
この調子だったら、きっとサイン会が始まる頃には、行列は伸び続けて屋上フロアで折り返し、1階の会場まで届いているに違いありません。
ウロボロス状態のサイン会の行列ですね。川上未映子、いつまでサインを書き続けても、このサイン会は永遠に終わらないのです。
『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』のようなサイン会なのでしょう、きっと。
(どんなサイン会やねん)

そんな妄想にとらわれながら待つこと約30分。
その間にもちょっとずつ列は前進していき、いよいよぼくの順がやってきたのでした。
おお、実物の川上未映子、初めて見ましたよ。ナマ川上未映子ですよ、ナマナマ。
その、ナマ川上未映子はやっぱり第一印象としては華奢なんですよね、きゃしゃ。キャシャ。CASSHERN(← キャシャーンになってるよ)。
なのに!
実際にお話をすると、とてもパワフルな方なんです。
ぼくが前に立つと、にっこり笑いながら

「お待たせしましたっ! 雨のなかをどうもありがとうございますっ!」。

うわー、真っ正面からご挨拶されちゃいましたよ。
華奢なのに力強いその声。
しかもパワフルなのはその声だけではなくて、眼力(めぢから)もスゴいのです。
まっすぐこちらを見るその視線。なんか、こう、ぼくの目から、頭のなかを覗かれているような、そんな錯覚に陥りそうな眼力なんですよ。
クラクラッときて、思わずその眼のなかに吸い込まれそうになっちゃいました。
マジ、ヤバイっすよ。

また為書きで名前を書いているときも、「なー、かー、はー、しー、かーずーやー......さま、と」なんて、ぼくの名前を声に出してくれるものだから、もぅドッキドキしちゃうじゃないですか。
書き終わったら、「どうもありがとうございました」なんて手を差し出してくれるのです。
握手!
とっても暖かで柔らかなその手!
くはぁー!
鼻血が出るところでしたよ。ブー。

そんな訳ですっかり舞い上がってしまっていた数十秒間の出来事なのでした。
そりゃオジサン率も高いはずだわ。
川上未映子『乳と卵』のサイン

ところで。
知り合いの皆さんが以前に川上未映子と共演した関係だということで、並んでいる間ずっと「来てるかな」とキョロキョロと探していたんですが、いないですねえ......って、あ、そうか!
今、ちょうど公演の真っ最中なのでした。
開演時間直前のこの時間に来れるはずないですね。とっても残念なのでした。