梅田迷宮路、珈琲舎 書肆アラビク

今日は久しぶりに梅田の街に繰り出してきました。
自称“本屋ウォッチャー”としては、関西の本屋事情をウキウキウォッチングしたいところ。
そこで紀伊國屋書店を皮切りに、旭屋書店、ブックファースト、ジュンク堂書店とハシゴしてまわったのですが……うーん、あまり面白い販促POPや品揃えなど見つけることはできませんでした。
これはきっと信心が足りていないのでしょう。
お初天神さんにお参りですよ、お参り。
マンマンチャアンしてきました。
ちゃんとお参りしたのはこれが初めてかもしれない、お初天神

よし、これでバッチリOKだぜ!
運がウンとついたに違いありません!
このお参り効果が保っているうちに……、と梅田古書倶楽部に行ってきました。
休みでした。
えーん。

しかし、このまま手ぶらで帰ることは許されません。
かといって、さらになんばや京都なんて行っているパワーもありません。
どうしましょう。

そう言えば、フト、思い出しましたよ。
UNCHARTED SPACEのフクさんのお友だちが、このあたりで古本屋さん兼カフェをオープンされたのでしたっけ。
正式オープン前に伺ったフクさんのレポートでは、メチャクチャ居心地の良さそうな雰囲気のお店のようなのでした。
そうです、そうです、これは行かねばなりません!
と言いながらも、どこだっけ?
たしか梅田ロフトを通り抜けて、高速の高架下をくぐり抜けてしばらく行ったところだったはず……。
と、行き当たりばったりで適当に進んでいくと……おお!
何ナンデスカ、ココハ!
再開発されたビル街を通り抜けると、突然に姿を現したのが昔ながらの住宅街です。
速達ポストと消火器

小さな家がひっそり身を寄せ合うように佇むその合間に、狭い路地裏が入り組む迷宮のような世界なんですよ。
そんな路地裏に誘われてフラフラ彷徨うと、そこに隠れているのは面白そうなカフェに雑貨屋さんに、あれこれお店。
路地裏の迷宮が広がる

特に行き先も目的もなく、ただ単にブラブラするだけでも楽しくて楽しくて仕方ありません。
ついつい路地裏を見つけてはもぐりこんで探検をしてしまったのでした。
この地に建てられて、もう何十年経つのか判らないアパートの玄関先では、ニャンコ大家さんが居眠りしながらも、番をしていましたよ。
ニャンコ大家さんが居眠りしながらも玄関で番をしていますよ
このあたり一帯だけ、どこかのんびりとした時間が流れているような、フシギな街中なのでした。

そんなフシギな長屋街の一角に、目的地の「珈琲舎 書肆アラビク」がありました。
大きなガラスがはめ込まれた昔ながらの引き戸を開けてお邪魔すると、そこはもう本好きには堪らない空間が広がっています。
土間の両側には本棚が設置されてあり、古書から新めの本までズラリと並べられてあります。
いやあ、もうこの土間を眺めただけでもワクワクしちゃうような、夢のような空間なんですね。
土間で靴を脱ぎ、板の間に上がらせていただくと、その向こうには畳の部屋となっています。
ここでペタンと座り込んで、コーヒーなどをいただきながら、本を眺めるもよし、マスターと本談義に花を咲かせるもよし、とても居心地のいいスペースになっているのですね。
コーヒーも、いくつかのブレンドがあるようなのですが、これがメチャウマ。
いちばん香りの高いものを頂いたのですが、マスターが自信を持ってお勧めするだけあって、持ってこられた段階で、コーヒーのかぐわしい香りがあたり一面に漂うのですよ。
いやあ、こんなに素敵に香るコーヒーは生まれて初めて頂きました。

こちらに寄らせていただくのは初めてで、完全にアウェー状態、一見さんのぼくだったのですが、マスターはとてもフレンドリー、気さくに接していただけます。
どうも「古本屋」というと、気難しい頑固オヤジがいて、機嫌を損ねると追い出されてしまって出入り禁止になってしまうような、そんな恐ろしいイメージがあるのですが、いえいえ。
こちらは古本屋さんでありながらも、カフェです。
とても気さくなマスターに、読む本の相談をしたり、読んだ本の感想などをいいながら、より「読書」という趣味を広げて、深めていく場所になるのではないでしょうか。
雰囲気としては、吉祥寺にあったミステリ専門店「TRICK+TRAP」に近いかもしれませんね。

ちなみにぼくも、詩人の塚本邦雄が書いた唯一のミステリである『十二神将変』を勧めていただきました。
この作品は、1974年に京都の出版社から発行されたもので、非常にミステリとしてはよくできた作品だそうなのですが、なぜか塚本邦雄全集には納めらておらず、また1997年には河出書房新社から文庫化されたものの現在では絶版になっているというものだそうです。
しかし、こうしてちょっとお話しをしただけで、的確に「この客は、こんな作品が好きそうだな」と好みを掴み、お勧めの本を紹介するマスターの洞察力の鋭さと、本に対する造詣の深さには、もう憧れてしまうほどの安心感を抱いてしまうのでした。

ちなみに、お店が入っている長屋は築80年ぐらいとのことです。
それでこんな味わいがあるのですねー。
建物好きの人にもぜひとも味わってもらいたい空間です。
畳の部屋には、「簡易床の間」なる珍しいスペースもあります。
マスターいわく、この「簡易床の間」は、いずれはギャラリースペースにしたいとのことでした。
80年前の建物なので、他にも色々と珍しいつくりの箇所もあるかもしれません。
そういったところを眺めながら、コーヒーを飲み、本談義に話を咲かせる。
うわあ、なんてメチャクチャ贅沢なひと時を過ごせるお店なんでしょうか。
なかなか大阪に来る用事はないのですが、いずれまた、あのコーヒーを頂きに行きたいものです。
暗くなると、お店の暖かな明かりが通りにあふれる「珈琲舎 書肆アラビク」