乞局「陰漏(かげろう)」(渋谷ギャラリー・ルデコ)

この日限りの公演だった「みち」にご一緒させてもらった、青年団の木引優子さんが客演されるということで、今日は乞局の再演「陰漏(かげろう)」のギャラリー公演を観に、渋谷へゴウ。
乞局「陰漏」

明治通り沿いに立つ雑居ビルの5階に、今回の会場であるギャラリーがあるそうなんですが……どこ?
辺りはすっかり真っ暗なので、どれが会場のあるビルなのか判りません。
ウロウロすること何往復か。
ようやく見つけたビル入口は、「狭い」「暗い」状態で入るのに躊躇してしまうのに加え、「スタッフが入口前で友人とたむろしていてよく見えなかった」状態だった三重苦。
それでなくともギャラリーなんて敷居が高いのに、ますます敷居が高くなってしまっていたのでした。
ビル入口だともうちょっと判りやすく、しかも入りやすい工夫をして欲しいところです。

もうこれだけで気分はメゲメゲ状態なのに、入場時の受付の手際の悪さ(狭いエレベーターホールで順番待ち放置)、客席に誘導しないスタッフ(狭い会場に目一杯埋まりつつあって空席が判りづらい)、提出したアンケートを回収せずに表向けたまま放置……と、もうイヤーン状態が絶好調。
劇団運営って「観客をおもてなしする」ことだと思っているのですが、少なくとも今回のスタッフは、そういった考えはないようなのでした。
いや、ひょっとすると、

  • 初日でスタッフの気持ちに余裕がなかった
  • 会場が狭いギャラリーで混乱していた
  • 観客が定員一杯来場して混乱していた

ということなのかもしれません。
ただやはり、観客とすれば「行ったときがすべて」なのですね。初日であろうと千秋楽であろうと、会場が狭かろうと広かろうと関係ありません。
「お客さんをもてなす」気持ちが感じられれば、少々の失敗はあってもこんな気分になることはなかったと思うのですが……。

あるいは、部外者であるぼくが知らないだけで、演劇界では「演じる内容が良ければ、客あしらいは適当でいいでしょ」という風潮があるのかもしれません。
例えて言うと、“ガンコ職人のラーメン屋”のような……。
しかし、それだって「ちゃんとモノを楽しんでもらうためのルール」がガンコなだけであって、決して客をホッタラカシにしていいということではないと思うのです。

ああ。
今回の対応で、乞局という劇団は観劇するのに苦手な部類になってしまったのでした。

さてそんな文句タラタラはともかくとして。
乞局を観に行ったのは今回で2度目なのですが、初見だった「媚励」が“あまり乞局らしくない”という声が多かったのも頷けました。
とにかくヘビーなんですね。重い。メチャクチャ重い。
物語展開そのものがヘビーなうえに、繰り広げられるセリフの数々も難解、かつ聞き取りにくい。
総じて内容がかなり判りづらいものなのでした。
また登場人物たちもこぞって一癖も二癖もあります。
その彼らが持つ“他人への悪意”やそれに伴う悪態の数々、またタンを吐く音やえづきなど、不愉快さを誘うものが「これでもか」「これでもか」と観客にぶつけられてくるのです。
それがまた一種異様なテンションで繰り広げられるのですから、もうかなりのものですよ、コレ。
しかもこのステージ、BGMやSE(効果音)といったものは一切入らないのですね。
ステージからは役者のセリフや息づかい、立てる音などがダイレクトに伝わってくるのです。
だから余計に異様なテンションが、もう「緊迫感」となってヒシヒシと伝わるのです。
息苦しいったら、ありゃしません。

しかも、客席に定員一杯(あるいは、それ以上かも)の観客が押し込まれたため、隣の人の生暖かい体温や息づかい、咳払いなど、プライバシーゾーンをまるっきり無視されて蹂躙されたような環境での観劇です。
さらには座ったり寝転んだりと、低い位置での演技が多いため、見えづらい。
前の方から観客の頭が右に左に、前に後ろに、と動き続けるので、ますます観客としての「追い詰められ度」はアップするのでした。
この「物語内容」と「観客の環境」のダブルで“イヤっぷり”を追い込んでくるのは、演出の効果なのでしょうか。
それとも、偶然の結果なのでしょうか。
いや、どちらにしてもこんな“イヤっぷり”は全然嫌いではないんです。むしろ好きなんです。
だからこそ、余計にスタッフの観客に対する心配りのなさが見えなかったのが残念でなりません。

カーテンコールもこれまた異様なんです。
役者たちが一列に並んで礼をするのは通常のカーテンコールと一緒なのですが、一切、顔を上げません。
皆うつむいたままで礼をして、うつむいたままで退場。
この異様なスタイルのカーテンコールがまた、物語の異様さと相まって、かなりドンヨリとした、切れ味のない救いようのなさを表しているように感じるのでした。

終演後、会場となったギャラリーで出演者と観客が懇親。
会場ギャラリーでは、終演後に出演者と観客が懇親
なんだ、なんだ、なんだ?
客席を埋め尽くした観客のほとんどが、どうも関係者との知り合いのようだったのですね(考えてみれば、平日の夜だし)。
だから、少々スタッフの対応が悪くてもよかったのかもしれません……トホホ。