渋谷に出たときのこと。
いつも行くブックファースト……はもう巨大店が閉店したので、仕方なしにパルコ地下のリブロに行ったのでした。
かつてのブックファーストに比べると品揃えがいいとは言えないので、リブロは好きではないのですが……おお!
松浦理英子の7年ぶりの長編小説、新作『犬身』がサイン入りで平台に置かれてあったのですよ。
もともとこの本、あまりの厚さと手応えに恐れをなしてしまって、ずっと買おうか買うまいか決めあぐねていたのです。
が、ここでダメ押しとばかりにこのようなサイン本を見せられてしまっては、もうダメです。
最後まで何とか保っていた理性の堤防が決壊してしまったのでした。
こうして、またしても物欲の命ずるがままにズルズルと、予定外の買いものをしてしまい、重いカバンをぶら下げてトボトボ帰宅したのでした。

家に入るときには、隠れてコソコソしたつもりだったのに、あまりにもカバンが不自然にパンパンな状態に膨れ上がっているので、相方にはモロバレです。
般若のような形相で、「何を買ってきたの?」と詰め寄られるのですが、そこはそれ。
「いやいやいや、現代社会における歪みを、物語上で「奇妙な状況下」として描いてしまうあたり、松浦理英子は重要な位置づけにある作家なんですよ」などと、よく判らないことをペラペラと相方に言って煙に巻いておきました。
しめしめ。
ところが……、キャー!
まるで、こんな無計画かつ無責任な買いもの野郎であるぼくに、天罰が突きつけられたかのような出来事が、この秋の夜長に起こってしまったのですよ!
今日、会社から帰ると、いつものように今日の新聞を朝夕刊まとめて一気読みしていたのです。
ホラホラ、今朝は朝日新聞の文化欄で松浦理英子の新刊紹介が著者インタビュー付きで掲載されているよ!

なぜ松浦理英子がこの物語を書いたのか、また書く上でどのようなことを感じ、考えたのか、インタビューを取り入れながら、その点をうまく抜き出してあらすじ紹介をしています。
うんうん、いいね、いいね。松浦理英子の物語って、やっぱりそんな風に“奇妙な物語”でなければならないんだよね……などと、したり顔で読み進めていったのです。
記事の最後の方では、物語のラストにおける主人公の行く末を見事に語っています。主人公を取り巻く理不尽さ、不条理さもキッチリ説明されています。そのまとめ方のうまさに脱帽……って、おおおおいっっっ!
これって、モロにネタバレしてるやん!
いやいや、まだこの作品を読んでいないので、この記事の最後で述べられていたことが、本当に“ネタバレになるのか”どうかは判りません。
そもそも、この作品はミステリではないので、“ネタバレ”と言う表現があっているのかどうかも判りません。
ただ、あらすじ紹介を読む限りでは、この作品はとてつもなく作者の力業を感じさせられるのです。
読者がページをめくれば、一気に物語世界に引き込み、そして本の厚さも気にならないぐらいにラストまでグイグイと引っ張っていく力をの感じさせたのですね。
なのにラストでのああいった趣向をバラしてしまうと、その、作者が読者を物語のラストまで一気に引っ張っていく力というのが弱くなってしまうのではないかと思ったのです。
何しろ読者は物語内で、散々作者から、「これでもか」「これでもか」と仕掛けを浴びせられているのです。
読者としては、「いったいこの先どうなっていくのだろう」と気になって仕方がないハズなんです。
なのに、その結末を書いちゃったら……いやーん。
しかしこのネタバレ部分は、作者のインタビューの言葉とあわせて紹介されているのですね。
ということはですよ……、このネタバレは作者の了解済みということなんでしょうか?
「わたしはこう考えて、ラストをこう書きました」と読者に知って欲しいという、作者の狙いだったのでしょうか?
うーん、まさかねえ……。
まあ仮にもし、作者がそのように考えていたのだとしても、読者が無防備の状態のときに、こんな風にいきなりラストをさらけ出してしまうのは、ちょっと乱暴だと思うのですよねえ。
それまでに、作者が「これでもか」「これでもか」と読者に仕掛けてきているので、ラストを知らずに読んだ方が、衝撃度もかなりあったのではないかと思うのです。
ある意味、この記事もかなりの衝撃度が味わえたのでした。
朝日新聞め、なかなかやってくれおるわい(← 誰?)。



















