米澤穂信サイン会(紀伊國屋書店新宿本店)

米澤穂信の新刊『インシテミル』発刊記念サイン会で、紀伊國屋書店の新宿本店に行ってきました。
いつもサイン会は、4階売り場の片隅で行われるのに、今日の会場はなぜか「9階特設会場」。
9階って、新宿本店のビルってそんな上まで売り場あったっけ......とフロア案内を見たのですが、あれ?
そこには、歯医者さんと法律事務所しかないのです。
果たしてこんなところにサイン会の会場が?
ひょっとして騙されているのかもしれません。
いつの間にか、絵画とか壺とか売りつけられたらどうしよう。

訳が判らないながらも、とりあえず9階に向かうことにしました。
階段を、「絶対に買わされないぞ」「絶対に騙されないぞ」とウンウン唸りながら、上っていきます。
いや、エレベーターを使ってもよかったのですが、きっと9階に到着したとたんに、やたらと馴れ馴れしい販売員が満面笑みを浮かべて寄ってたかってくるとも限りません。
"最大の防御は攻撃なり"とも言います。
そんな訳で、こちらから奇襲攻撃を仕掛けてやるのです。
奇襲戦法のセオリー、それはエレベーターを使わずに階段からの強行突入でしょう。
気分はもう「攻殻機動隊」の公安9課ですよ、Get 9!

......息も絶え絶えに(全然アカンやん)8階まで上ったところで、"最後尾"の看板を持ったお兄さんがいました。
なんと、開始までまだ30分もあるというのに、既に下のフロアにまで列が伸びているようなのです。
何だ、やっぱりここで合っていたのね。
どうやら絵画や壷を売りつけられるイベントではなかったようです。
間違いなくサイン会会場が紀伊國屋書店新宿本店の9階にあったのでした

安心して、最後尾に並びながら周りを見回してみると......オオウ。
男性率が異様に高いですよ。
というか、男性の姿しか見えません。
野郎どもが狭い階段にひしめき合っている光景は、おぞましいですよ。
(自分もそのうちの一人のくせして)
なんと驚異の野郎率。
以前にも何度か米澤穂信サイン会にお邪魔しましたが、そのときはもう少し、女性ファンの姿を見たような気がしたのですが......今回はスゴイ。
いや、ひょっとしたら、列の後半が女性ばかりになっているのかもしれませんが。

階段は野郎どもが発する熱気がこもってムンムン蒸れています。
そのなかを、サイン会が始まるまでジッと待っていたのでした。
やがて、前から順にナゾのフロア9階に足を踏み入れることが許されました。
そこは......本屋好きにはたまらんマニアックさが漂う、バックヤードなのですよ!
9階フロアには、歯医者さんと法律事務所に並んで紀伊國屋書店の事務所があるのでした
今からお昼休みなのか、お弁当を持った社員が通り過ぎます。
今から整理するのか、スリットの束を抱えた店員さんが通り過ぎます。

そんな通路の中ほどに特設サイン会場があったのでした。
そんな広い部屋ではありません。
20人程度の会議をするのでいっぱいいっぱいの部屋でしょうか。
しかも、部屋には窓が一切ありません。
ドアを締め切ったら、ちょっと息苦しくなるような部屋です。
本来の目的が何なのか、まったく判らない一切がナゾの部屋なのです。

しかしこのナゾの部屋も、今日はサイン会の特設会場。
だからでしょうか、クーラーがガンガンにきいていて、照明も煌々と照らされており、窓がなくても意外と居心地はよさそうです。
また白一色で統一された室内には、出版社からのお花も飾られいて、華やかさも演出されています。

結局、ここが何の部屋なのか判らないまま、ぼくの順番がまわってきました。
「よろしくお願いします」とご挨拶しながら、為書き用の名前を書いた整理券を差し出すと、

「あ、前にも書かせていただいたことありますよね」。

うわぁぁ、覚えて頂いていたとは......と、感激のあまりに言葉を失っていると、

「確か、顔写真は出さないでとお願いしたことがありましたよね」。

......ウゲ。
以前のTRICK+TRAPでのやりとりのことですよ。
かなりイタイ奴ということで、これはもう"覚えていただいていた"というよりも、"イヤなことを思い出させてしまった"と言った方がよいのかもしれません。
どうもすんません。
しかも、「あの頃から全然字がうまくなっていないのですよ」とまで言われてしまいました......ひえぇぇ。
もう何だかワケが判らなくなってしまって、

「いいえっ! 米澤さんのサインは、そのダイナミックなところがステキなんですよ!」

いったい何を言ってるんだ、オレは。 もう自分が自分でなくなってしまって、魂がどこに行ってしまったのか判らなくなってしまったままに、サイン会場をあとにしたのでした。
ふう、今日は「写真を撮らせてください」なんてお願いをしなくてよかった......。
米澤穂信『インシテミル』のサイン本