道尾秀介の直筆メッセージに込められた何か

前々から気になっていたのが、道尾秀介の著者直筆POPに書かれたメッセージ。
以前から何度も紹介していますが、今回、新刊『ソロモンの犬』でも、またしても著者直筆メッセージを見かけたので紹介しちゃいます。

そもそも、ぼくが道尾秀介の著者直筆メッセージを見て、「あれ?」と気になったのは、まだデビューして2作目の『向日葵の咲かない夏』でのことだったのですね。
そのときに見かけたのが、このPOPでした。
驚いてください、僕が読みたいミステリを書いたんですよ!
なんと。
2作目にして道尾秀介は、"僕が読みたいミステリを書いた"から、"どうです、すごいでしょう、驚いてください"と赤い波線の傍線まで引いて、読者に驚くことを要請しているのです。
つまりデビューを果たした彼としては、現代ミステリ界においては書きたいことも書けない状況が蔓延しており、その閉塞感に辟易していたのでしょう。
しかしそこはロックンローラーな作家の道尾秀介、「オレは書きたいことを、書いてやるぜぇ~♪」とシャウト。
そして"自分が読みたい"ミステリを書いたことは、"驚くべきこと"であると暴露したのでした。
やっちゃいますねー、道尾秀介。

続いて見たのは、『シャドウ』の著者直筆POPです。
「書けてよかったよかった」って、なんだか他人事のような......
こちらでは、最後に「書けてよかったよかった」と、まるで他人事のような一言を書いているのですよね。
しかもこのPOP、改めてよく見ると"こんな話を ずっと書きたかったんです"という前半部と、"書けてよかったよかった"の後半部とでは、インクの濃さが違うのです。
ほら↓
前半と後半部とではインクの濃さが違うのです
つまり。
"書けてよかったよかった"という言葉は、後になって書き足された「本当に他人事のような一言」だったのかもしれません......。
興味のないおべんちゃらには、徹底してクールなところがとんでもなくロックンローラーな道尾秀介です。

そして。
ようやく話が冒頭で言った『ソロモンの犬』に戻ります。
あちらこちらの本屋さんでは、新作『ソロモンの犬』の著者直筆メッセージが張り出されています。
そのうちの1枚がこちらです。
新作『ソロモンの犬』でも、何か直筆メッセージがあるのです
うーん、ちょいと見えづらいですね。
寄って寄せてアップにしてみました。
これが書けただけでも  作家になって本当によかった。
これが書けただけでも
作家になって本当によかった。
道尾秀介

またしても「作家」であることにこだわりを持っています。
3枚のPOPを見比べてみると、道尾秀介と言う作家は「自分が書きたいものを書いてやるんだぜ!」と言う気骨に溢れているような気がしてなりません。
(2枚目が他人事のように見えたのは、単なる照れ隠しなのかもしれません)
しかしながら、現代における文壇社会がなぜか、そういった「自分が書きたいミステリを書く」と言った気骨を許さず、逆に「ニンゲンが描けておらん。もっとニンゲンを描けっ!」「ワシの目が黒いうちは、ミステリなんて作品に賞なんて取らせんからなっ!」という圧力がヒシヒシと加えられ続けているのでしょう。
しかしそこはロックンローラーな道尾秀介、権威に対して反骨精神を貫き、その姿勢はPOPにまでにじみ出ていることに気がつかされるのです。

改めて3枚のPOPのメッセージを見てみましょう。

  • 僕が読みたい  ミステリを書きました。  驚いてください。
  • こんな話を  ずっと書きたかったんです。  書けてよかったよかった。
  • これが書けただけでも  作家になって本当によかった。

1枚目のPOPでは、文壇社会の圧力にも負けず「書きたいことを書いてやったんだー!」という喜びが感じられ、「そんなぼくに驚いてね」と純粋に読者に語りかけるあたり、どこか大らかさすら感じとれるのです。
しかし、これが2枚目のPOPになると、徐々に文壇社会からの風当たりが強くなってきたのか、「ずっと書きたかった」話を書き上げたことに対して「よかったよかった」と、なんとも言えない安堵感がにじみ出ているのです。
そして今回になると、「これが書けただけでも」といきなりネガティブな発言が飛び出してくるあたりに、道尾秀介の置かれた立場の悲壮感が漂ってくるのです。
そして「作家になって本当によかった」と、まるでミステリ界の尾崎豊のように、心の底からの孤高な雄叫びを叫び続ける姿が垣間見えるのです。

文壇社会というアンチ・ミステリな世界に真っ向から挑みかかるロックンローラーな道尾秀介。
しかし彼の行く道は果てしなく遠いのです。
だのに、なぜ、歯を食いしばり、君は行くのか、そんなにしてまで。
POPのメッセージを見ていると、やりたいことをやればやるほど、文壇社会に叩きつけられているのか、弱ってきているような気がしてなりません。
頑張れ、道尾秀介。
戦え、道尾秀介。
アンチミステリなあのお方が目の黒いうちにギャフンと言わせてやるのだ!
夏が終わらないうちに。(秋~もOK)

(1つ目のPOPの意味を確実に読み間違えている時点で、今日書いていることが大きく間違っている......)