福永信『コップとコッペパンとペン』のサイン用紙って......

かつて、"ページを超えても改行が一切ない"横書き小説
(つまり、1ページ目の1行目から読み始め、そのまま2ページ目の1行目に移り、さらに3ページ目の1行目......と進んでいく。最終ページに到達すると、再び1ページ目に戻り、今度は2行目をずっと読んでいくというスタイル。作者が意図する改行位置には"/"が挿入されている)
という、とんでもなくトリッキーなスタイルの短篇小説集『アクロバット前夜』を出した福永信が、ようやく2作目の短篇集を出したのでした。
しかしながらそこはトリッキーな作家、福永信。
造本こそ、通常の短篇集になってしまっていますが、表題作からしてヒトを食っています。
一見繋がりがないコトが、連想ゲームのように次々と繋げていくという力技。
タイトルの「コップとコッペパンとペン」が実に物語内容をあらわしていたのでした。
しかしこの本、4月に出版されて以来、ずっと気にはなっていたのですが、実は『アクロバット前夜』で力尽きてしまい、なかなか手を出せずにいたのでした。

ところが渋谷のブックファーストで「おや?」。
福永信のサイン
わざわざ「サイン本」の"本"の字を消して、"用紙入り"となっていますよ。
サイン用紙っていったい......何?

サイン用紙。
ぼくの頭のなかにはこんな風景が浮かぶのでした。

......って、これは"投票用紙"ですから。

でもこれだって「人の名前を書く」という意味では、ある意味、サイン用紙なんですね。
ということはですよ、これはもうすぐ行われる参議院選挙に向けた政府(与党)のプロパガンダなのかもしれません。
軽々しく手にとって、簡単に洗脳されないように気をつけなければ......って、もう買ってしまっているし。
そんな訳で、買ってしまったからには「サイン用紙」の謎を解き明かさなければなりません。

まずは慎重に表紙をめくってみました。
通常、サインをされる所定位置には、当然のことながらサインはありません。
通常、サインが入るところ。何もありません
だってこれは「サイン本」じゃないんですもの。「サイン用紙入り本」なんですもの。
......ということは、ページの中に挟み込まれているのでしょうか。
慎重にページをめくってみると......
何か挟み込んでありますよ!
何かあったー!

政府(与党)に洗脳されないよう、恐る恐る取り出してみると......
おいっ!
ユーキャンのチラシなのでした。ううん、なぜにこんなところにまでユーキャンが
挟み込まれたチラシじゃないですか。
ユーキャンじゃないですか。
織田裕二も小西真奈美も登場していませんよ!
(そんな問題ではない)
ややこしいことをするんじゃありませんよ! ぷんぷん!

引き続き挟み込みを調べても出てくるのは出版社のチラシだけ。
河出書房新社の挟み込み出版案内
......ひょっとして騙された?
だったらブックファーストに断固抗議に行かなければ、と思っていると......
おや?
何かあるのを発見しました! ページにくっついています!
何かあります。
ページにくっついているようです。
慎重にそのページを開いてみると......
やっと見つけたけど、何か複雑な気分にさせるサイン

あったー!

これのことでしたか、サイン用紙。
確かに「サイン色紙」とは違います。ひょっとしてこれは「メモ用紙」? だからサイン"用紙"?
"用紙"の使い方、ちょっと間違えているような......。

しかもこの「サイン用紙」、完全にページに糊付けされちゃっています。
全然挟み込みじゃありません。
しかもこの字の汚さ!
そしてピンクの蛍光ペン!
誰がこの本を「著者直筆のサイン」だと思うでしょうか。
まるで子供にイタズラされた図書館の本状態です。
絶対にこの本の価値、誰も信じてくれないだろうなあ......と思いながら、糊付けされた裏面を見てみると
ぬぉぉぉー、何じゃこりゃあ!
ついでに裏面にはなぜか長嶋有のメモ書きが......

大江賞 とったよ

長嶋有のサインというか、メモ書きというか、とにかくメッセージの付いたサインが書き込まれてあるのですよ。
と言っても、こちらのサインも子供の落書きみたいで、あの"芥川賞作家"のサインとは思えないのですが......。
ここで書かれた「大江賞」って「大江健三郎賞」と言うより、小学校時代の担任の先生でいた「大江先生」が、クラスで一番本を読んだ子供に"よく読んだで賞"をあげたときにその子供が書いた、そんな記念の落書きみたいなのです。

ま、たまにはこんな本もシャレで持っているのも面白いですよね。
しかし難点は、この糊付けされたページが中の方なので、気付かれない可能性が高いということです。
ぼくが死んだときには、相方に「サイン本棚にある本を売って、糊口をしのいでくれ」とは伝えてあるのですが......判ってもらえるかなあ、この本(「ページの場所」と、「そもそもの価値」の2重の意味で)。

【追記】(2007年7月2日)
こちらのサイトでも、やはり同様に渋谷のブックファーストで福永信の"サイン用紙入り"『コップとコッペパンとペン』を購入されたことが記されていました。
ウラ面にもやはり長嶋有のサイン(というのか、なんと言うのか)が書かれてあったようですが、こちらではコメントが「大吉 異性にモテモテ」だったそうで......。
どうも色々なバージョンがあるらしく、他にもどんなコメントがあるのか気になってきてしまいました。

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コメント

こ、これは・・・著作もなにも読んだことがない(←またか)のですが
①この作者さんがオカシイ ?
②長嶋有さんという方がオカシイ ?
③本屋さんがオカシイ ?
どれが正解なんでしょうか?
長嶋有さんとはブルボンなんとかさんのことですかね・・・

*デトロイト・メタル・シティ 1巻買ってしまいました
大切にしたい1冊になること決定ですね・・・  DMC辞典がよいですね

7月15日は吉祥寺コミュセン集合チームですか?
私 集合チームです(一人ですけど・・)

いやあ、2人とも「悪ガキ」心に溢れているんでしょうねえ。いいコンビのようです。
居酒屋で延々「どうやったらみんなをアッと言わせられるか」といった話題で盛り上がっていそうな、そんな愉快な仲間という感じですね。
2人ともプロの作家なのに、文学フリマに同人誌を出品したりしているあたり、やっぱり「こんなことでアッと驚かせられないか」ということばかり考えているんでしょうね。
(ということで、急遽、文学フリマに出品された同人誌の話題を【関連記事】として追記しました)

長嶋有はおっしゃるとおり、「ブルボン小林」名義でコラムを書いている方です。

7月15日……?と思ったのですが、TRICK+TRAPの例会ですね。
(コミュセン集合チームっていったい何のことかと思ってしまいました)
参加します。40名って結構大所帯だし、ゲストも来られるし、ちょっと緊張しちゃいますねえ。

これはものすごく欲しい!
渋谷のブックファーストに今すぐ駆けつけたいですが残念ながら週末までいけなさそうです。私が行くまで残っていてくれますように…。

ちなみに『アクロバット前夜』は途中でどこまで読んだかがわからなくなってしまいそのまま放置中です。

……えっと先に謝っておきます。すみません。
実はこの本が最後の1冊だったようで、平台に置かれてあった他の本はシュリンク(ビニール掛け)されていませんでした。
一応、「福永信 サイン」で検索したりしているのですが、「入手した!」と言う情報がないのですね。
ひょっとしてブックファーストのヒトに騙されているのかもしれません……。

「アクロバット前夜」、確かにしおりを入れておいても、あまり意味ないですね。
文庫化したときにあの体裁で読むことを考えると、さらにきつそうです(笑)。

なかはしさん、情報ありがとうございます。無駄足を踏まずにすみました。
手近な本屋さんで通常の本を買おうと思います。単行本が発売されていたこと自体が私にとってビッグニュースでした。ありがとうございます。

サイン用紙入り本の謎、不思議ですね。長嶋有さんのサインは本物のように見えますが、いったいこの本はどのような経緯で…。

アクロバット前夜の文庫化…。造本される方の苦労を想像すると泣けてきます。

大江健三郎賞を長嶋有が受賞してからのサインなので、ひょっとすると、最近書かれたものかもしれませんね。
やっぱり先ほども書いたように、ぼくの中ではこの2人、「何かしら人を驚かしてやろうぜ」と企んでいそうなので、「普通にサイン本じゃ面白くないよな」とか何とか盛り上がりながら、こんなサイン用紙を書いては貼り付けていたのではないかと……。