京極夏彦サイン入りで旅から帰った『邪魅の雫』

「かわいい子には旅をさせよ」ということわざがあります。
それで言うなら、「かわいい本には旅をさせよ」ということなのでしょうか。

思えば、京極夏彦が久しぶりに"妖怪シリーズ"(個人的には"京極堂シリーズ"の方がすっきりしていいと思うのですが)の新刊『邪魅の雫』を講談社ノベルスで出したときに遡ります。
このとき、講談社の公式サイトで「大磯・平塚地域特装版」なるものも同時に発売すると聞き、「なんですと!」。
もうね、"限定版"とか、"数量限定"とか、"今だけ"という言葉にはめっきり弱いぼく。
発売日には大いにイソイソと(何しろ「大イソ・平塚版」だけに)買いに出かけたのですよ。
JRの東海道線に乗って。
平塚まで。(大磯ちゃうんかいっ!)
こうしてちょっとした小旅行を楽しみながら出かけた平塚の本屋さんには、もう「ウソッ!」というぐらいにこの『邪魅の雫 大磯・平塚地域特装版』が積み上げられていたのです。

しかし「かわいい本には旅をさせよ」ということで、買ったばかりのその本は、ある事情からその日のうちに旅立つことになりました。

「元気でな」
「......うん」

ずいぶんとあっさりした別れです。
でもいいのです。何しろぼくたちには大いにイソイソと平塚まで(大磯ちゃうんかい!)買いに出かけた間柄なのですから、それ以上に言葉など必要ありません。
こうして、新作を読むことはしばらくお預けにする予定だったのです。

ところが。
なんとダメ元で応募した「大沢在昌・京極夏彦合同サイン会」に見事、当選してしまったのです。
当日はサインをしてもらうために『邪魅の雫』を持って行かなければなりません。
しかし「大磯・平塚地域特装版」は旅に出てしまったとは言え、もう既に持っているのです。
そんな訳で、今度はいわゆる「通常版」を買い、それを持ってサイン会に行ってきたのでした。
この京極夏彦のサイン入り『邪魅の雫 通常版』は、京極夏彦直々に「お、サイトマスターですね」と掛けていただいたお言葉とともに、お宝としてサイン本棚で赤ちゃんのように静かにくぅくぅと眠っているのです。

そして今日。
長い長い旅に出ていた『邪魅の雫 大磯・平塚地域特装版』がぼくのもとに帰ってきたのですよ。

「お帰り」
「......うん」

ずいぶんとあっさりした再会です。
でもいいのです。何しろぼくたちには大いにイソイソと平塚まで(大磯ちゃうんかい!)買いに出かけた間柄なのですから、それ以上に言葉など必要ありません。
はらりはらりとページをめくりながら、「そうそう、こんな装丁だっけ」と見ていると......ん? んん? んんん?
こ、これはっ!
京極夏彦のサイン入り『邪魅の雫 大磯・平塚地域特装版』
京極夏彦のサインが入ってるー!
しかも為書きまで入ってるー!

これはどうしたことでしょう。
旅に出た本が、パワーアップして帰ってきたのですよ。
これはもう「長靴を履いたネコ」のような展開じゃないですか。
いったい、どこをどう旅すれば、こんな著者ご本人のサインが入って帰ってくるというのでしょうか。
(しかも為書きまで入って)
道中で何があったのか、またどんな道中であったのか、この『邪魅の雫 大磯・平塚地域特装版』に訊いてみました。
......が、彼は黙して何も語らなかったのでした。

こうして『邪魅の雫』は、「通常版」「大磯・平塚地域特装版」ともにサイン本棚で仲良く並んでいます。
京極夏彦『邪魅の雫』の「通常版」と「大磯・平塚地域特装版」が仲良く並んだサイン本棚

この「サイン本棚」には、様々な"大人の事情"から同じ本が2冊並んでいたりして、相方からは「ダブリ本だ! 売る!」と罵られているのです。
が、今回は決してダブリ本とは言わせません。
これは、別の本なんですよ!(キッパリ)