「本格ミステリ大賞」発表記念座談会(東京YWCA会館カフマンホール)

今日は神保町は東京YWCA会館カフマンホールというところで、「本格ミステリ大賞」発表記念座談会が、なんと入場無料で行われるのですよ。
ああ、そんなとても嬉しいイベントの日なのに! それなのに、それなのに!
昼前に起きてみると、オー、マイ・ゴッド!
何の因果か、大雨がザバズバと降っているではありませんか。
雨ばかりか、雷までもがビカビカ、ゴロゴロ、ドカンドカン。
これはエライことになってしまいました。
何しろ「大雨」に「雷」とくれば、運行が非常に貧弱で軟弱なもやし野郎のJR、いつ何時止まってもおかしくないのです。
こりゃあ、早く家を出た方が無難だぜ......と予定よりも早めに家を出ることにしました。
もちろん、念のためにパソコンや周辺機器に繋いであるすべての電源コードを抜いておくことも忘れません。
(これがまためんどくさい。机の下に潜り込んだり、壁際まですり寄っていったり)

......しかし、こうやって用心すると何事も起きないのが世の定め。
メチャクチャ早く神保町に着きすぎましたよ。
開場時間までまだまだ時間があり余っちゃっているのです。
くそー、さっき朝飯を食ったばかりだから、カレー屋さんに行くこともできません。
仕方ないので、古本街をウロウロしたのですが、雨が降っていて傘が邪魔だわ、日曜日は定休日の店が多いから、シャッターの閉ざされている店が多いわで、これまた苦行のような時間を過ごすはめになってしまいました。

そんなこんなでようやく開場時間である13時30分に、今回の会場であるYWCAに到着しました。
イベントが始まったらきっと写真は撮れないのだろうなあ......ということで、今のうちに撮っておいてやれとカメラを持ってウロウロしていると、「こんにちは」。
ビクゥゥゥ!
写真を撮っているのがスタッフに見つかって怒られるのか......とドキドキしていると、なんとなんと、綾辻行人データベース Ayalistのmihoroさんなのでした。
サイト上では何度かお邪魔したりしているのですが、お会いするのは「初めまして」です。

今このブログを書いている時点で気が付いたのですが、「なぜ、この野郎が中橋に違いない」とばれてしまったのでしょう。
そんなにぼくの顔は「中橋」っていう顔をしているのかなあ......と思ったりもしたのですが、そもそも、その「中橋という顔」がどんな顔なのかよく判りません。
ぼくが言っていることもよく判りません。
まあ挙動不審な野郎がいたからソイツが中橋に違いないと思われたのでしょう。
そんな挙動不審な中橋は(って自分のことか)、普段どおりの人非人ぶりを発揮してしまい、「初めまして」のご挨拶もそこそこにmihoroさんにはケツを向け、ステージ写真をバッシバシと撮りまくりだしたのでした。
うう、どうもすみません。

そんなステージはこちらです。
「本格ミステリ大賞」発表記念座談会ステージ
この写真で見る限りでは、客席前方にひな壇があり、そこをステージとしているように見えますよね。
写真でなくても、実際に見たときにはそう思っていたのですよ。
ところが!
イベントが終了し、サイン会のとき巨大なモーター音とともに一気にこのステージが下がったのですよ!
つまり客席と同じ高さ、"真っ平ら"になっちゃったのですよ!
これ、絶対に今日来られているどなたかがトリックに使っちゃいますよ!
でないと、ぼくがブログで使っちゃいますよ!
......んー、どうやって何に使うのかよく判りませんよ!
何だか一人で興奮してしまいましたが、それだけトリッキーな仕掛けがあるステージだったのです。

このステージ上に用意された本日の出席者名が記された席には、あらかじめマイクや飲み物が用意されています。
巽昌章と道尾秀介の席の前には、何やら箱状のモノが置かれてあるのです。
箱のなかから、何か棒状のようなものが突き出しているように見えたので、これはてっきり「○」「×」クイズみたいなものをやるのかな、と思っていたのです。
すると......失礼しました。
始まってすぐに説明があったのですが、これが京極夏彦デザインの「ミステリ大賞トロフィー」なのだそうです。
うーん、そうと知っていたら、始まる前にもっと近くに寄って、もっとよく見えておくべきでした。
写真をアップにしても、やっぱり「○」「×」クイズ用の棒を入れた箱にしか見えません......。
箱状のなかにつっこまれた棒、先には「○」「×」が付いているようにしか見えません

そしてさらに出席者のお名前でも発見が。
氏名が張り出されている紙ですが、綾辻行人の「辻」の字が"一点しんにょう"になっています。
綾辻行人の「辻」の字が
本来であれば"二点しんにょう"なのですが、まあこれは通常、外字扱いになっちゃうので仕方ありません。
(Windows Vistaでは、「辻」がちゃんと"二点しんにょう"で表示されるのでビックリしちゃいます。どうだ! 綾辻行人ファンはパソコンのOSをVistaにすれば問題なくなりますぞ)

問題は北村薫の「薫」の字ですよ。
よくよく見ると、なんと!
北村薫の「薫」の字、
"くさかんむり"が割れちゃっていますよ!
綾辻行人の「辻」が"二点しんにょう"なのは有名だと思うのですが、まさか北村薫の「薫」の字も、正式には"くさかんむり"を割らなければいけないのでしょうか......。
そう思って、今、手持ちの本を色々と見ているのですが、いやいや、どの本もちゃーんと"くさかんむり"になっているんですよ。
とすると、この漢字が意味することはいったい......何?
まさに「ミステリはここにありました」のですよ。

会場を見回すと、もう満席で熱気がムンムンこもるほどです。
男女比はどちらかというと男性の方が多いかな......という程度。
女性陣の数が少ないのは、まだ道尾秀介がいかにイケメンなのか知られていないからなのかもしれません。うーん、それは実にもったいない。
年齢層としては、極端に高い・低いということはなく、やはり「リアルに新本格ミステリを享受した世代が中心」といったところでしょうか。

やがて14時ちょうどに北村薫を先頭に登場し、まずは「今日は歴史的瞬間です」との挨拶から始まりました。
というのも、これまでにはこうした受賞に関して"一般向けイベント"が行われた例がないそうだからです。
「できればこれからも、こうしたイベントを定着させていきたい」との抱負を語られました。
また終了後には抽選会を行い、5名の方に「寄せ書きの色紙」をプレゼントします、とのこと。
これは、昨日授賞式があった本格ミステリ大賞の受賞パーティーに参加したなかで50名の作家の方々に書いていただいたサインの寄せ書きが書かれた色紙だそうです。
北村会長がその「寄せ書きの色紙」を持ち上げて見せると、うーん、全然見えませんが、確かにぎっしりとお名前が。
もう会場からは一斉にため息ですよ。
「当たった人はヤフーオークションに出さないでね」とお約束の注意も忘れないお茶目な北村会長です。

進行は、北村薫が司会者となり、綾辻行人や法月綸太郎には受賞作や作者についての思うところを訊いたり、また受賞者には受賞して思うところなどについて訊くというスタイルをとっていました。
印象に残った言葉としては、道尾秀介が

本格ミステリは「人間が描けていない」と言われるが、ぼくは本格ミステリほど人間が描けるジャンルはないと思う。
今回受賞した『シャドウ』も、実際に人間を描き出すつもりで書いた。
これからも"本格ミステリ"という仕掛けを通じて人間を描いていきたい。

と述べたことでしょうか。
それに対して、法月綸太郎が

ぼくたちの時代は「人間が描けていない」と言われると、「人間を描かないのが本格ミステリだ」と構えて掛かっていた。
しかし綾辻行人のデビューで「新本格ミステリ」というジャンルが誕生して20年という節目の年に、「本格ミステリというジャンルは、人間を描くのに最強のジャンルだ」と言ってくれる作家が登場してきて、「ああ、ぼくたちが行ってきたことは無駄じゃなかったんだ」との思いがする。

と述べていました。
また同じく法月綸太郎は道尾作品について、

起きる事件は陰惨で暗いし、登場人物もどこか病んでいるのだが、ラストはどこか「前向きさ」が感じられる。
『シャドウ』もハッピーエンドとは言えないが、救いが感じられるのは、ある意味、横溝正史の映画のように、起こる事件がどんなに陰惨で暗くとも、ラストで金田一耕助役の石坂浩二がニッコリ笑い去っていく、そのシーンで観客が救われたような気になる。
そんなところが似ているのではないか。
そう考えると、横溝正史から道尾秀介にエンターテイメントの路線は連綿と続いているのではないか......と言うことを、「今朝考えました」(笑)。

と述べたのに対し、道尾秀介は

確かに石坂浩二の横溝映画シリーズは好きでよく観ていた。
『シャドウ』でも、石坂浩二の笑顔のような「救い」を持ってきたかったのだが、果たしてこれがハッピーエンドかどうかは判らない。
そもそも、「ハッピーエンドだから救われる」とは限らないし、「救われるからハッピーエンド」とも限らない。

と、何だかすごいことを述べていました。なるほど。
言われてみれば、あの作品における真相はとてもイヤなもので、ハッピーエンドと言えないのだけれど、作者が完全に登場人物を突き放して読者にイヤな印象しか残さないといったものではなく、どこか優しさのようなものが見え隠れしていたような、そんな気がしますね。

また綾辻行人が道尾秀介のデビュー作『背の眼』をホラーサスペンス大賞でプッシュし、特別賞となった件については

道尾作品を最初読んでいたときは、1000枚を超えるまでは面白くなく、「これはダメだな」と思っていた。
ところが残り300枚の解決編に入ると、それまでのストーリーにすべて意味が出てきて、「これは本格ミステリじゃないか」と思い、大プッシュした。
他の選考委員が桐野夏生さんに唯川恵さんと、本格ミステリには"さほど強くないお方"だったので(笑)、特別賞となった。

とか。
ここで道尾秀介が「確かに綾辻さんはプッシュしてくれると思っていたけど、他の委員の方は全否定だったでしょ」と訊くと、綾辻行人は「とんでもない、"構築的だ"と論理的に説明するとお二方とも納得した」。
しかし道尾秀介は「ホントですか?」とあまり納得していない様子だったのでした。
何かあったのか、道尾秀介!
そういえば何だか全体的にちょっとご機嫌斜めそうだったようにも見えたのですが、これはひょっとしたら、昨日のパーティーからあちこち「祝いだ、祝いだ」と引き連れまわされて、寝不足とお疲れが重なっていたのかしらん。

対する巽昌章はトツトツとした語り口で、どこか学校の先生風。
それは昔からそうだったらしく、綾辻行人曰く

巽さんは、京大ミス研の2年か3年先輩なんですが、初めてミス研に行ったときには「うわ、顧問の先生がいる」とビックリした。
ぼくの1年後輩に小野不由美がいるんですが、彼女も初めてミス研に来たときは、やっぱり「顧問の先生がいる」と思った。

のだそうです。
ええ、ええ。確かに、今でも顧問の先生にしか見えません。
"風貌が変わっていない"と言うのですから、学生時代はもっと顧問の先生状態だったのでしょう。
しかし巽昌章は本業として弁護士をされていて、さらには法科大学院でも教鞭をとっているとか。
うわ、弁護士先生ですか。
うーん、論理的に組み立てて相手を落としてくることを考えると、それはちょっと怖い。
しかし綾辻行人が言うには、

巽さんが京大ミス研に先輩としていたからこそ、今の綾辻行人も法月綸太郎も小野不由美もいる。
巽昌章という先輩はとても読み上手で褒め上手だった。
作品を書くと必ず次に繋がるコメントくれるので非常に勉強になった。

と言うことだそうです。
それに対して巽昌章は

京大ミス研では伝統的に「犯人当て」を行っている。
当初はパズル的な要素が強かったが、綾辻行人が入部して以降、犯人当ては「パズル」から「小説的」に変わっていった。
各作家の作風の違いは、もうその頃から現れていた。
ぼくは彼らの作品を、けなしたいのを我慢して、わざと褒めていたわけではない。
思ったままに伝えただけ。
それが本人たちのなかで、たまたまいい方向に繋がっていっただけではないか。

と非常に謙虚に答えられていたのでした。
また法月綸太郎も

学生時代から、巽さんの評論はとても面白く、「読みたいなあ」と思わせる文章だった。
ある程度、本を見続けてくると、紋切り型で片をつけてしまうようになってしまい、また読む楽しさ、ワクワク感がなくなってくる。
ところが巽さんの評論からは、その読む楽しさ、ワクワク感を手探りで言葉に落として書かれている。

とのことを言われていました。
巽昌章の評論があったからこそ評論家・法月綸太郎としての方向性も定められた部分があったようです。

最後に、今後の予定を訊かれていました。
道尾秀介は、「別冊文藝春秋」に連載した『ソロモン』をまとめ、また今月号と来月号の「ジャーロ」に2分割連載する『ラットマン』を出す予定だそうです。
巽昌章は、評論集の第2弾を出す予定なのと、あとは小説家・巽昌章の予定として、法月綸太郎や北村薫も携わったリレー小説で彼のパートのゲラがようやく東京創元社にあがったということで、これが出せる予定だそうです。
このリレー小説、企画が上がったのが1992年と言うから......足かけ15年!
携帯電話もインターネットもない時代の物語なのでしょうか。
また、その他にも学生時代からの創作を宇山日出臣さんにも読んでもらっていて、「出そうか」という話も出ていたそうです。
ところが、結局それがそのままになってしまっていたので、「連載にしたら書けるのではないか」と奮い立ち、現在、出版社と企画を立てているところだそうです。

そういったところでちょうど1時間。
あっという間に終わってしまいました。
ここで抽選会がありました。例の50名の作家による「寄せ書き」です。
......が、クジ運がもともとないぼくは見事撃沈。
「寄せ書き」は5/150の確率で、ぼく以外の5名の方々のところに行ってしまいました。

そして最後の最後にお楽しみサイン会。
1人の出席者につき、1冊までであれば持ち込みOKという太っ腹な企画なんです。
全員分持ってきている方もいらっしゃって、あれでは行き帰りだけでも重たそうです。
北村会長からは、「当初は手が折れても書きまくろうと思っていたのですが......本当にそうなったら大変なので、申し訳ないですが、今日は為書きや日付なしでお願いします」とのこと。
本来ならば、受賞者の方にサインを頂くべきなのですが、何のご縁があってか、道尾秀介はデビュー作からずっとサイン本を購入させていただいてきているんですね。
そんな訳で何を持っていこうかなあ......と思ってたのですが、ちょうど出たばかりの北村薫『玻璃の天』と、あとは綾辻行人『暗黒館の殺人(愛蔵版)』を持っていきました。
会場で法月綸太郎の『密閉教室』を持っている人を見て「し、しまった......」。
あの本も持ってくればよかったのでした。
そんなことを思っても、もう今さらなんですが。

前から座っている席順にサイン会スタートということで、いちばん前に座っていたぼくが、まずトップバッターとして綾辻行人の前で「お願いします」ということになってしまいました。
しかしさすがは『暗黒館の殺人(愛蔵版)』。
袋から出す前に、もう形で綾辻行人にも何の本か判ったようです。
「お、ありがとうございます」と言われちゃいました。
しかし......『暗黒館の殺人』は3分冊です。
1冊しかサインしてもらえないということで、綾辻さん「どこにしましょうかねえ」。
厚かましいぼくは、すかさず「では3冊とも......(首を振られて)......というのは厚かましいですね」。
どこにサインをしようかあちこち見ていた綾辻さん、「ここなんてカッコいいと思いますよ」。
暗黒のイメージな真っ黒の外函を指さして、まさにそこにサインしようとしています。
うーん、確かにカッコいい!
というか、外函があるのは愛蔵版だけ!
だから外函にサインをしてもらわなければ、愛蔵版を持って行った意味がない!

......でも!

「すみません、函だったらかすれたりしそうで、もったいないんです。やっぱり本のなかにお願いできますか」
メッチャへたれなぼくです。
それでも優しい綾辻さん、「ええっと、じゃあどこにしましょうかねえ......。上巻にします? だったら赤地に黒でカッコいいですよ!」
「はい、じゃあそこにお願いします」
そんな紆余曲折を経て、ようやくサラリサラリ。
お隣の法月綸太郎さんなんてもう2~3人は回っちゃっていますよ。
すみません、お時間を取らせて。
北村会長のところは問題なく、サラリサラリと即座にサインをしていただきました。
どうもありがとうございました。
北村薫『玻璃の天』と、綾辻行人『暗黒館の殺人(愛蔵版)』へのサイン

コメント

その「寄せ書き」を当てた、悪運の強いヤツです(笑)
こちらのサイトは、「ミステリ好きで猫好きでサイン本マニアなんて、つくづくオレみたいな人だなあ!」といつも思いながら、興味深く拝見させていただいております。
これからも、旬な情報を楽しみにしてますね。

ALPHAさん、おはようございます。
おお、5/150の強運を射止められた方でしたか!
おめでとうございます。と言うかメチャクチャうらやましいです。
昨日は50名のサインに囲まれてぐっすりとお休みなられたことでしょう。

色紙はあとから係の方にいただくようにされていましたが、できることなら札を引いた方から直接いただけた方がよかったですよね。
(そうすればぼくもALPHAさんがどのような方か拝見できましたし……うしし)

ぜひとも家宝になさってくださいね。
ヤフオクなんかに出してはいけませんよ(お約束)。
もし出すときは……ぼくにご一報ください(おい)。

こんにちは。昨日はどうもでした(^^)。
サイン会のお写真などで、何度かお顔を拝見していたので、分かりましたよ〜。
背、高いですね。早速に写真をぱしぱし撮られて、レポを読むと目の付けどころも違うなあと、感心(氏名の紙とか)。
来月は吉祥寺で、またよろしくお願いいたします。

>ALPHAさん
えー!そうだったんですか。実物を見せてもらってから、帰れば良かったかも。

mihoroさん、昨日は大変失礼しました(ケツ向けて写真撮りまくり)。
なるほど、ぼくの正体はデカくてバレバレだったと言うわけですね……(ちょっと違う?)。

しかし北村薫の「薫」は謎ですねー。
「そこにミステリはありますか」という北村薫、やはり自分自身が謎になろうとしていたのでしょう(そんなわけはありません)。

ところで、見事「寄せ書きの色紙」をゲットされたALPHAさんが撮られた写真の転載許可をいただきましたので、先ほど更新いたしました。
圧巻ですよー。
もしぼくがこんなものをいただいてしまったら、鼻血ブーで出血ショックで卒倒していたかもしれません……。

それではこちらこそ、来月もよろしくお願いします。
(来月も写真係に徹する予定です(笑))