劇団桟敷童子「軍鶏307」(鈴木興産株式会社2号倉庫)

本当は先週土曜日に観に行く予定だった、劇団桟敷童子「軍鶏307」。
ところがリハーサル中のアクシデントで劇団員が怪我をしてしまったとのことで、前半の公演が中止になってしまいました。
その前半の公演に先週土曜日も入っていたので、一時はもう観ることを諦めて、キャンセル返金して貰おうかなとも考えていたのでした。
しかし、それはもったいないのです。
何しろ、桟敷童子といえばその舞台セットや照明、演出も含めた美術の美しさにあるのです。
そして何よりも観客をカタルシスへと導くラストでの大仕掛け。
これをむざむざ見逃してしまうのも、実にもったいないことなのです。
しかもラッキーなことに、今回の公演会場は錦糸町です。
錦糸町!
大手町から半蔵門線1本ですよ。
会社を定時で退社しても、十分すぎるほどに間に合ってしまう奇跡の場所なのです。
こんなところで公演があるということは、もう「行け」という神からのお告げに違いありません。
そんな訳で、色々とあったのですが、華の週末である今日、劇団桟敷童子の新作公演「軍鶏307」を観に行ってきたのでした。
劇団桟敷童子「軍鶏307」

しかし駅は錦糸町と言っても、会場はそこから歩いて15分のところにある巨大倉庫。
前回の桟敷童子公演は、「ベニサン・ピット」という、もともと染色工場だった場所を劇場に変えた場所で行われたのですが、今回の場所は「鈴木興産2号倉庫」。
文字通り、倉庫そのものです。

守衛さんがいる警備室のある門を通りすぎると、そこはもう巨大な倉庫敷地。
大小さまざまなトラックが、ブンブン走り回っています。
そのなかで雨にも関わらず、、要所要所に立っている劇団員の方が丁重に受付までご案内していただきました。
「振り替えでお越しの方ですか?」と訊かれたので、「そうです」。
すると、「このたびはご迷惑をおかけして申し訳ありません」とご案内しながら、深々と頭を下げられるので「あ、いや、そんな......楽しみにしていましたので」。
でもせっかくなので訊いてみました。
「お怪我をされた方は、もう大丈夫なのですか?」。
すると、

「はい、おかげさまで今日退院することができました」

......え? 今日退院?
ということは、1週間の公演中止はその劇団員の復帰を待っていたわけではなく、その抜けた穴を調整するためのものだったということなのでしょうか。
うひゃあ、それはそれは大変ご苦労さまです。

そんなやり取りをしながら、倉庫の敷地内をテクテク歩き、受付までご案内していただきました。
いや、これは確かにご案内していただかないと、会場の場所が判りません。
何しろ、受付は倉庫と倉庫のあいだにあるのですよ。
この、アヤシゲな雰囲気が「劇団桟敷童子」なんですね。
倉庫と倉庫のあいだで受付中

入場は整理番号順の自由席なので、「今日のチケット購入者」が優先的に入場するのかなと思いきや、「振り替えチケットの購入者」と同時に2列での入場となりました。
うーん、ぼくのような振り替えチケットの人間にとってはとってもありがたいのですが(何しろ2番で入場できちゃいました)、「今日のチケット」の方には、ある意味整理番号が2倍に膨れあがったようなものなので、ちょっと悔しい思いをさせてしまったかもしれませんね。
すみません。
でも、おかげさまでセンターの後方と、すばらしくいい席をキープすることができたのです。
(桟敷童子の場合は、舞台全景が見える方が絶対的にいいのです)

ストーリーの内容は、終戦直後の九州地方の病院。
違法な医療行為を人道的立場から行う医師と、彼を慕う患者たち、そして家族と幼なじみ。
そこにヤクザものが絡んできて......という「善」と「悪」の対立図式はいつものパターンなのかもしれません。
しかも根底に流れるテーマも、やはりいつもの桟敷童子らしく、"生きろ"節が全開なのです。
判っているのです。メチャクチャよく判っているのです。
なのにこの引きずり込まれるものは何なのでしょう。

舞台のセットも相変わらず手作りながらもかなり大掛かりなものになっています。
いつもであれば、ラストに大仕掛けで持ってきそうな仕掛けをもとにしたセットは、自由自在に動きます。
最初は何もなかったはずのステージが、暗転すると病院になっています。
そしてまた解体され、そして再構築。
何だか「8時だョ!全員集合」のセットを思い出させるのでした。
ラストで、オーケストラが放つ小気味いいテンポのリズムにあわせてセットが回転しながら舞台袖に引っ込み、歌手が登場してくる......あのような大胆なセット解体・再構築になっているのです。
また、開演前には観客に"あるもの"が渡されたため、「あ、もしかしたらラストの仕掛けはこれ?」とも思ったのですが、いえいえ、これも単なる演出に過ぎません。

とにかく、これまでの大仕掛けとして登場させたような仕掛けが、ある意味「小ネタ」的に使用してきてしまったためか、ラストにおける「本当の大仕掛け」には、あまりサプライズには繋がりませんでした。
いっそのことアレが客席まで来てしまえば、その迫力に圧倒されたのだと思うのですが。

ただし、その「大仕掛け」を用意することによって、主役の人物における生きる希望を示唆するラストであり、役者の演技と相まって、その"生きろ"節を圧倒的に後押しするのです。
いやあ、「サプライズはなかった」とか言いながら、ポロポロと泣いてしまっていたのはナイショです。

そして次回公演は秋になんと! 吉祥寺シアターで行うそうです。
うーん、とうとう普通の劇場でやっちゃうのかー、と最初はガッカリしてしまっていたのですが......いえいえ。
よくよく考えてみると、吉祥寺シアターと言えばそのホールは、深い奥行きがあるだけでなく、3階まで通じる巨大な吹き抜けの空間になっているのですね。
これまで何度も吉祥寺シアターで公演を観てきたのですが、あの「縦方向(上方向)」に広がる空間まで活かし切った劇団はありませんでした。
しかし、桟敷童子ですよ、桟敷童子。
いったい彼らはどのような舞台セットであの空間を埋め尽くし、大仕掛けを用意してくるのかと思うと、今からもう、かなりワクワクとしてきました。
公演演目はもう決まっていて、過去2演目の再演となるそうです。
どちらもスゴイ仕掛けがあっただけに、舞台装置がとても楽しみですね。