桐野夏生『メタボラ』サイン会(紀伊國屋書店新宿本店)

今日は、桐野夏生の新刊『メタボラ』が出た記念サイン会が行われるということで、紀伊國屋書店新宿本店に来ています。
桐野夏生『メタボラ』発刊記念サイン会

朝から、「早めに会社を出て、早めに並んで、早めに帰っちゃおう」と画策していたのですが......うひぃー。
こんな日に限って、会社から出るに出られなくなってしまっています。
とるものもとりあえず、新宿にダッシュするも、着いたのは18時20分。
こんな時間に到着してしまうとは、完全に予定と異なってしまいました。

お店に入ると、「サイン会へお越しのお客様はこちらにお並びください」と誘導看板が出ています。
それに従って階段スペースの方に向かうと......オオウ!
もう既に列をなしてズラリと人が並んでおり、上層階に続いています。
仕方ありません、最後尾に付くべく、階段をゆっくりと上がっていきました。
しかし、ただ階段を上がるだけでは面白くも何ともありません。ただ、ただ、疲れるだけです。
そこで「いったい今日はどんな人が来ているのか......」とチェックしてみることにしました。
階段スペースに並んでいる人たちの顔を眺めながら、階段を上っていっていったのです。
すると、なぜか並んでいる人たちとやたらと目が合ってしまうのでした。
ぼくが「ッチ、早くから並びやがって」とよっぽどガンを飛ばしているように見えたのでしょうか......すみません。

しかし、おかげでスゴイ事実を発見したのですよ!
桐野夏生ファンの男女比率は、ほぼ半々と言ってもいいでしょう。
しかし、その年齢構成比がどうもおかしいのです。
女性はだいたい若い方が多かったのに対し(というか、若い人しか見ていないような気がします)、なんと男性は!

グロテスクなまでにオジサン率が高いのです。

若い女性と、オジサン、半々ずつが入り交じって階段スペースに黙々と並んでいる姿は......ちょっと変ですよ。
サイン会だと知らなかったら、「あのう、すみません。これはいったい何の行列ですか」と訊ねていたに違いないほど、妙な行列だったのでした。

やがてサイン会が粛々と始まったようです。
ぼくが並んでいるところまで列が動きだしました......って、動き出したら前に進むのが早っ!
とにかくエラい勢いで列が進んでいくのです。
あれだけの人数が並んでいたのに、15分後にはもうぼくのすぐ前まで順序がまわってきましたよ。
ぬおおう、桐野夏生にお会いする心の準備ができていません。
カメラ、カメラ......とカバンをガサゴソ探るも、ああ、そうだ。
桐野夏生といえば、もうおなじみ、"写真撮影禁止"のお達しですね。
今回も張り出されていましたよ。
写真はイメージが大事なので、シロートには撮らせません!

うう、こうなったら仕方ありません。
イタい野郎と思われてもいいので、せめて例のように厚かましく為書きにサイト名まで書いてもらおう......と思いながら、前のオジサンの様子を見ていたのです。
すると......あらあら。
名前を書いた整理券を係員が回収していくのですよ。
桐野夏生には整理券が渡っていっていません。
つまり、桐野夏生は整理券の名前も見ずにサインを書いているのです。
ということは......

今回は為書きがありません。

そりゃ列の進むのが早い訳だぜ、セニョール。
だからでしょうか、皆、黙りこくったまま機械的に列の流れにのっているだけです。
ぼくまで一緒にこの機械的な流れに乗って、黙ってサインをして貰って、ハイ終わりでは悔しいのです。
そこで現状を打破することにしました。
といっても、もちろんいきなりカメラを取り出して「パパラッチ!」と言いながら写真を撮るとか、いきなり「ストーカーッ!」と言いながら抱きついちゃうとか、そんな意味不明なハレンチなことではありません(当たり前です)。
黙々と列が進むなか、ぼくの順になったとき腹の底から大きな声で「よろしくお願いしますっ!」とご挨拶してみました。
ワハハハ、どうだ。この黙々と機械的に進むサインの列の動きに、ちょっと変化を加えてやったぜ。
これが「バタフライ・エフェクト」となって、為書きをもらえることになっていたらどうしましょう......って、訳判りません。
やっぱり桐野夏生本人を前にして上がってしまっているのでしょう。
ところがそのご本人は......あれ? うわ、どうしよう! 桐野夏生、ビックリしてはる! ちょっと声、大きすぎたかしら。
それとも元気な挨拶をしたから、忘れてしまっている知り合いの誰かと思われたのでしょうか。
とにかく真っ正面に視線をぶつけてきているのです。

ウワーウワーウワーウワー、目が合っちゃっていますよ。

そのストレートな視線をこちらにぶつけたまま、桐野夏生は心に染みいるようなアンニュイにアダルトなヴォイスで「こんにちは」

ウワーウワーウワーウワー、挨拶されちゃったよ。

スラスラとなめらかに運ぶペンさばきも鮮やかながら、決して書き殴っているのではなく、とても丁重にサインを書いて頂きました。
サインを書き終わると再び顔を上げて、こちらを見られます。

ウワーウワーウワーウワー、また、目が合っちゃっていますよ。

そして再び、心に染みいるようなアンニュイにアダルトなヴォイスで「ありがとうございました」
こうなったらこちらも負けてはいられません(何を競っているんだか)。
腹の底に響くようなアンニュイにアダルトなヴォイスで「こちらこそ、ありがとうございました」

ウワーウワーウワーウワー、桐野夏生、ビックリしていたように見えましたよ。

うーん、声でかすぎたかな。
桐野夏生『メタボラ』サイン本