タダ(でも・だから)貰いづらい

本屋さんの片隅に、よく「パンフレットをご自由にお持ち下さい」のコーナーが設置されています。
こんなコーナーに置かれてあるのは大体が百科事典の案内とか、ナントカ全集の申し込み用紙とか、通信教育で資格取得のお勧めといった類のリーフレット。それもペラペラのリーフレット。
どうもこういったリーフレット類が苦手なので、“本屋さんウォッチャー”を自称しているぼくであっても、いつもここだけは素通りしちゃっているのです。
苦手でいつも早歩きで通り過ぎてしまう「ご自由にお持ち下さい」コーナー

ところが。
いつもあるのにまったく気付いていなかっただけなのか、それとも今回が特別なのか。
突如としてこの「ご自由にお持ちください」コーナーに、「ポンツーン」がドサッと山積みになっていたのでした。
ぬぁにぃぃ? こんな立派な冊子が「ご自由にお持ち下さい」ですと?
嘘でしょ、うそでしょ、ウソなんでしょう。
だってこんな立派な冊子がタダなんだったら、…(著者自粛)…だって、…(著者自粛)…だってタダでいいはずなんですよ。
なのにこれらは堂々とお金をとられてしまうのですよ。
それに比べてポンツーンは「ご自由にお持ち下さい」。
いったい世の中はどうなっておるのか、と。
確かにポンツーンが「ご自由にお持ち下さい」として置かれています

ああっ、そうか!
ひょっとしたらこのポンツーン、こんなところに置いてタダだと思わせ、カバンに入れたところで万引きの現行犯で別件逮捕しようとしているのでしょうか。
それはヤバい。とってもヤバい。篠沢教授に持ち点全部を掛けてしまう以上に危険な行為なのですよ。
(って、「別件」って……・いったいぼくは何をやらかしたのやら)
さりげなく張られたデインジャートラップに、我が人生はエクスプロージョン寸前なんですよ。

……しかし。
「タダ」という言葉には、「限定」という言葉とともに極めて弱いぼく。
その弱さは、まるで生まれたてでぷるぷる震えながら母親に寄り添う子羊のごときなんですよ。
まあ、手に取るだけは何でもタダなんだし……と、思わず手にとっちゃいましたよ。
カバンにさえ入れなければいいのです!

そして裏表紙を見て、おおう、おおう
確かに定価が200円(190円+税)と書かれてあります。
つ・ま・り。ポンツーンは明らかに売り物なのです。
しかし、なぜかその価格の上に「0円」の値札シールが貼り付けられてあるではないですか。
定価の上にわざわざ「0円」の値札シールが……
と、いうことは……やっぱりタダ……?

こいつはラッキーだぜ!
早速カバンに入れてしまおうとしたところで、「いや、待てよ」。
店のどこかに、この怪しげなぼくの行動を監視している巡回私服ガードマンがいるかもしれません。
そんな彼らの目の前で、こんな立派な本を堂々とカバンにしまっていては「今、やったぞ、現行犯、現行犯、確保せよ」「了解、了解」などと無線でやり取りしながら、いきなり取り押さえられるかもしれないのです。
その様子はきっとテレビ局の密着取材によって、夕方のニュースあたりで「サラリーマンの万引き、心を鬼にして確保する万引きGメンの活躍!」なんて特集を組まれて、VTRが流されてしまうのですよ。
いくら顔にモザイクが入っているとはいえ、いくら音声が変えられて「エエ。ハイ。スンマセン。ホント申し訳ありません」なんて流された暁には……もう生きていけませんよ。

しかし幸いなことに、他にも買いたい本が見つかったのでした。
よかった、よかった。
そんな訳でポンツーンもすぐカバンには入れず、買う本と一緒にレジまで持って行ったのでした。
しかし今度は店の人がポンツーンを売り物だと思ったらどうしましょう。
やっぱり心臓がバクバク言っちゃいます。

そこで先手必勝、レジを打ち始める前に店の人にぼくの方から頼みました。
「これも一緒に包んでください」
全然問題ありませんでしたとも。
お姉さんは不審な顔ひとつせず、「はい」と一緒に袋に入れてくれたのでした。

いやあああ、しかし、まあなんとポンツーン1冊持って帰るのに気を使うこと、気を使うこと。
今回は、たまたま一緒に買う本があったからいいものの、もし本屋さんに欲しい本がなかったら、これだけ持って(あるいはカバンの中にしまいこんで)堂々と店を出なければなりません。
それはさすがにキツいものがあるよなぁ。

という訳で、早速、綾辻行人のインタビュー記事を読んでいます。

コメント

わかります!
わたしは森見登美彦センセイのブログを見て連載開始と知り、書店員さんに「ポプラ社の『asta*』は取り扱ってますか?」とたずねたところ、どなたもご存知ではなく、調べていただいて無料PR誌ということがわかりました。取り寄せていただけるとのことで、「本当にいいんですか?」と気にしつつありがたく思っていたのですが、入荷のお電話をいただいて奥の受け取りカウンター(レジは中央)でソレだけをいただいて帰るのがきまずいんですよね。で、なんとなく行く前から一緒に買うものをリストアップしていました。そういうことで売り上げが伸びるんだろうとも思いましたが、緊張するので自分で年間2000円で定期購読を申し込みました。

(『asta*』は大きな書店でないと取り扱っていないようで、うちのようなドイナカではもちろんありませんでした^^;)

確かに、無料の小冊子だけを取り寄せてもらっておいて、「ありがと、んじゃ!」だけではちょっと心が痛みますね。
悪いから、他にも本を買って……と言うことであれば本屋さんにとってラッキーなんでしょうが、こうした無料小冊子を作っている出版社に必ず儲けがあるとも限りませんし。
R25みたいに広告をとるわけではないし、連載小説やエッセイ、書評などで「おお、これは面白そうだぜ」と思わせておいて、一気に単行本化したときに回収するのでしょうか。
うーん、大金が掛かっているであろうだけにナゾのビジネス戦略です。

しかし好きな作家さんが連載しているのであれば、定期購読でもいいですよね。
そうか、定価はそのために設定してあったというワケなんですね。
(↑今頃気付いているよ)

あ、もちろん、わたしだと森見先生の『asta*』の連載が一冊にまとまったら購入させて頂きますよ! 単行本出版のための連載なのかもしれません。 
あと、新潮社『波』とかはそのまま本が売れるようにという宣伝なのでは?

全然関係ないですが、「asta*」という雑誌名、どうしても「*」が脚注のように見えてしまって、思わず欄外に目を走らせてしまうぼくがいます……。

しかしやっぱり性格が寄り捩れてしまっているイヤな野郎であるぼくとしては、無料PR誌の存在がよく判らないです……。
連載となると当然原稿料が1枚ナンボで発生するわけで、その原稿料はどこから出ているのかなあ……とか。
またPR誌はやはり「出版物販促」のために出していると思うのですが、そのための作成費用や流通などの経費を考えると果たしてペイしてしまっているのかなあ……とか。
また本屋さんも商売にはならないのに、「場所は取る」「店出しに手間がかかる」「残ると送り返す手間がかかる」とあまりいいことがないような気がします。

ポンツーンの豪華さを見ているとますます不思議に思えてきました。
ますますその存在感が不思議になってきました。無料PR小冊子、奥が深いです。