陽だまりから、多数の視線を感じる

あまりの暖かさに、一時はコートを脱ぎスーツだけで会社に行ったりしていたのですが、またメチャクチャ寒くなってしまったではないですか。
しかも寒さが戻ってきたこの時期にいきなり、気象庁が「サクラの開花予想は、使用した計算データに誤りがありました。ごめん、ごめん」なんて発表しました。
んな、メチャクチャな。
発表のときはあれだけ「記録的な早さ」って浮かれていたのにですよ。
それが「間違えていた」って……もっと早く気付けよ……。
きっとあまりの寒さに「おかしい」と誰かが言い出し、調べてみたらウッカリ研究員が「あ、オレ、データ入れ間違えてた。ごめんごめん」。
そんな一幕があったに違いないのですよ!

いや。
ひょっとすると、データそのものは正確だったのかもしれません。
ところが予想外の春先のこの寒さ。
すっかりサクラの開花が遅れてしまい、「それだったら予想が外れて気象庁の評判が下がるより、誰かが入力データを間違っていたことにしよう!」なんてあざといことを考え出したに違いありません!

そんなショーモナイことを考えながら、北風ピーピュー吹き荒ぶ中、寒さにブルブル震えてトボトボ歩いていると……ん?
感じるのです。感じる。メチャクチャ感じるのですよ。視線が。それもたくさんの視線が。
たくさんの眼が、ジーッとこちらを見ているのです。
どこからか見られているのです。
狙われていると判るや否や、ぼくの動きは、もうね、ゴルゴ並みなんですよ。
いや、デューク東郷と言っておこうか。
スサッと軽く地面を蹴り上げ、その勢いで路上を軽く転がり、すばやく懐から拳銃を手に……することはできないので会社のボールペンを持ち、いつでも戦闘体制OK。

「どっからでもかかって来いや!」

ジッとこちらを見つめる視線を感じる方角を見てみると……とほほ。
陽だまりでヌクヌクと羽根を膨らませて惰眠をむさぼる鳩たち。クルルックー
そりゃないっすよ。

手に持った会社のボールペンはさりげなく胸ポケットにしまい込んで、何とか誤魔化したのですが、泥だらけになってしまったコートとスーツは……どうしましょう。
いっそのこと、思いっきり転んだことにしておけばいいや。
ゴルゴもきっと普段からこんな辛い思いをしていることなんでしょう。