マンション名を校正する

こんな名前のマンションがありました。
グリーン……マンション?

おそらくこのマンション名、「グリーンマンション」だと思うのですが、きっとデザイナーは高さのあるガラスいっぱいに名前を記した方がよいと判断して

グリーン
   マンション

と2行に渡って描いたのでしょう。
ところがこれに納得いかないのが大家さん。
「これじゃ、“グリーン”と“マンション”に間ができてしまう! ワシャ、一続きで“グリーンマンション”にしたいんじゃ! 細木数子もそう言っておった!」と激怒してしまったのです。
細木数子は全然関係ありませんが、大家さんはお客様です。ここでヘソを曲げられては、お金を払ってもらえないかもしれません。
それだけは絶対に避けたいデザイナー。
しかしマンション名を記すガラスは、横幅に対して高さが結構あるのです。
ここにたった一行で“グリーンマンション”と描いてしまうと、みすぼらしくて仕方ありません。
「それでもいいですか?」と訊くと、怒り心頭の大家さん、さらに困ったことに「一世一代のマンション建築なんじゃ! みすぼらしいマンション名表示なんてしてみろ、末代まで祟ってやるからな」なんて脅しまでかけてくる始末です。
もう手に負えません。
すっかり困ってしまったデザイナー、ついに苦肉の作を編み出したのです。
そうです! それがこのマンション表記なんです。
2行に渡って描かれた“グリーン”と“マンション”の間に、大きな曲線も描いたのでした。
このたった1本の線が、デザイナーと大家さんの融和を成し遂げたのです!

これ、校正記号ですよ、校正記号。「トルツメ」とか「イキ」とか、あの校正記号。
このマンション名の間に描かれた校正記号は「前行に続けて1行にする」
そうです、そうです、そうなんです。
デザイナー自身がどうしてもガラスにあわせてバランスよく描きたかった、2行の“グリーン”“マンション”。
それがこの校正記号を入れたおかげで、大家さんにとっては“グリーンマンション”になったのですよ。
しかも大家さんってば、この校正記号を使ったマンション表記が「なかなか面白いわい」と気にいったようです。
世の中、何が幸いするのか判りませんね。

(今日のこの記事は、「グリーンマンション」という名称のマンションがあること以外、すべてぼくの頭のなかで紡ぎだされた妄想の産物です。本気にしないでね)