看板の出ていない寿司屋

ここ最近は“晩ご飯を抜く(その代わり朝ごはんはちゃんと食べる)”という大技に出たところ、すっかりスリムになってしまい、リバウンドしないうちに早いところ人間ドックに行っておきたい今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

そんな訳で、すっかり“夜にご飯を食べる”という習慣を忘れていたぼくですが、相方の誕生日も近いということもあって、お祝い代わりにお寿司を食べに行くことにしました。
基本的に我が家は回っているお寿司屋さん専門なのですが、いえいえ、お祝いですから奮発しなければなりません。
そこでちゃんとしたお寿司屋さんを調べてみたところ……フフフ、面白いお店を発見しましたよ。
「看板の出ていないお寿司屋さん」です。
もちろん回っていないお寿司屋さんなんて行くのは生まれて初めてですから、相場感が判りません。
とりあえず全財産に近い金額を引き落ろして、レッツラゴウ!
(何しろ相方には、以前「自分の誕生日のお祝いフレンチのディナーなのに、自腹を切り、なおかつ、ぼくの分まで奢ることになってしまった」経験があるので、慎重には慎重を期しています)

さて、住所を頼りに近辺を歩いていると、どうもこのビルがアヤシイのです。
しかも入口は、この裏口としか思えないような寂れたうさんくささ。
本当にこんなところにお寿司屋さんなんてあるのでしょうか。
この裏口のようなビルの入口にどうもお店があるらしいのです

ところがどっこい!
ビル同様に小汚い階段を「勝手に入り込んでもいいのかなあ」と恐る恐る上って行くと……オオウ!
突如としてこのようなお店の入口が現れたではありませんか。
他のフロアが雑居ビルらしい鉄扉なのに、ここだけいきなり純和風

暖簾をくぐり、格子戸をガラガラ開けると、そこに広がるのは……「ここは銀座か」と一瞬錯覚してしまうほどの寿司屋空間。
白木のカウンターだけが設置された席に、お店のスタッフは大将が一人で切り盛り。
メニューは特になく、「おまかせコース」のみと言うのも安心できます。
まずはお通し代わりに刺身の盛り合わせ。
まずは刺身の盛り合わせで舌の暖機運転
いやいや、すべてにおいて、これがもう美味しいのなんの。
食べてしまうのがもったいないくらいですよ。
しかしそこは早食い王&女王のコンビである我々、あっという間に食い散らかしてしまいました。

そして次々に出てくるお任せメニューのにぎりの数々。
目の前で丁重にネタが切られ、握られ、並べられるところを眺めているだけでも飽きません。
また、寿司世界ではご飯を「シャリ」と言うぐらいですから、「シャリシャリ」ででしゃばってくるものだと思っていたのですが(少なくとも回るお寿司はそうですよね)、全然そんなことはありません。
まるでお刺身を食べているかのような控えめさ。
かといって「ビックリ寿司」のように、下品にネタが存在を主張するわけでもないのです。
何というか、……渾然一体となった美味しさと言うのでしょうか。
とにかく、素材のうまみが活きているのですね。
生臭さもまったくなく、甘みがお口の中でふわりと広がるのです。
もう噛めば噛むほど、お口の中で幸せは倍増していくのですよ。
嗚呼、この時よ、しばし留まって我の口の中に生き続けよ。

そんな訳で、握っては目の前に「どうぞ」と並べられ、それを食べ、また握っては「どうぞ」と目の前に並べられ、それを食べ……と繰り返しているうちに、フト時計をみてビックリ。
なんと3時間も経っているではないですか。
だってまだ1時間程度しか経っていないと思っていたのですよ。
至福のひとときは時間の経過が早いと言うのですが、まさかこれほどまでに早いとは。

お客さんは、我々の他にも1組の夫婦と、あとは常連さんらしきオヤジさんが一人。
このオヤジさんはカウンターの隅で大将と話しながら、食べて飲んでいたのですが、かなり気さくな方で我々とも愉快な会話で大盛り上がり。
もともと大将はシャイなのか、「寡黙な職人さん」タイプであまり接客は得意ではないようだったのですが、その分、このオヤジさんがまるで「接客担当」。
「敷居の高いお寿司屋さん」という雰囲気はまるでなく、最後まで愉快に楽しめたのでした。
そうそう来れるようなお店ではないのですが、何かの節目節目では利用していきたいなと思えるお寿司屋さんなのでした。

おまかせのにぎりたちの一握り(←ウマい! ……もちろんお寿司も)
【写真はクリックすると大きくなります】