「注目の本」というコーナーに、『長い腕』という文庫本が積み上げられていました。
POPの紹介によると、第21回横溝正史ミステリ大賞受賞作だそうです。
「『長い腕』って、“怪物くん”のことちゃうのっ!」などと心のなかで激しくツッコミながらカバー裏に書かれてあるあらすじを読んでみたのですが……なかなか面白そうな気がします。
そういえば、ちょうど今読んでいる本が帰りの電車のなかでちょうど読み終わりそうだったのでした。
ちょうどいいや、買っちゃえ。
手にとろうとしたところで……あれれ?
本棚の上段と下段とでは、帯が違っているのです。
上段は「担当者のイチ押し! ニ押し!!」として、右隅に紀伊國屋書店の名前が印刷されています。
対して下段はなんと! 北村薫のお勧め文句が書かれてあるのですよ。
どちらを買えばいいのでしょうか。
こうした新人作家の作品では、目にとめてもらうために有名作家の名前を大々的に刷り込みます。
で、売れてきたところで、本屋さんが「あれ? この本売れているな」ということで、“担当者オススメ”などとかかれるようになってくるのではないのでしょうか。
つまり、「北村薫のお勧め文句」は新人作家の本を売るために書かれたものに違いなく、また「紀伊國屋担当者のイチ押し! ニ押し!!」は、本が売れてきたのでもっと売るために書かれたものに違いありません。
そうです! きっと北村帯の方が。版数がまだ少ないに違いないのです!
そんな訳で、上段と下段の本の奥付を見たたのでした。
まずは北村薫のお勧め文句が書かれた下段の本。
平成十六年五月二十五日 初版発行
平成十八年十月二十五日 三版発行
……え? あれ?
平成16年って、2年も前の本だったのですよ。
いったいいつから北村薫はこうしてお勧めをしているのでしょうか。
一方、紀伊國屋書店担当者のイチ押し! ニ押し!!の方も見てみると……
平成十六年五月二十五日 初版発行。
……。
こちらがまだ初版なのでした。
ひょっとするとこの本が出版された当時、担当者が「コレは売れる!」と確信して大量に入荷しすぎてしまったのかもしれないのです。
だとすると、本屋さんのエライさんから直々に「少々の経費は使っても構わないから、在庫を減らせ」と命令されたのでしょう。
だからこそ、2年前の本がなぜか今頃大々的に取り上げられ、さらには初版の方には「担当者イチ押し! ニ押し!!」などというキャッチコピーの帯が付けられているのでしょう。
(どうもぼくは完全に“返本制度”のことを忘れているらしい……)
ところで。
この奥付の写真をよくよく見ていたら、社長の名前も変わっていることに今頃気が付きました。
2年もの月日が経つ間には、社長の座すら交代しているのですね。
ああ、祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり……。
コメント
本屋も古いものから売りたいのですね。
スーパーで消費期限の早いものを手前に置くのと同じですね、、、(笑)
Posted by みみ at 2006年12月 1日 13:20
確かにスーパーなんかでも牛乳は奥の方が消費期限の長いものが出てきますからね。
そうか!
この本屋さんでも、取りやすい上段に古い在庫分を置いて売っていく魂胆なのか!
(……って、本屋さんは返本制度があるので、古くなったり汚くなってきたら返しちゃえば大丈夫なのです)
Posted by なかはし at 2006年12月 2日 22:16