文学フリマに出品していた1500部限定のあの同人誌

しかし同人誌といえば、ファンの人たちがお楽しみで作成して、お楽しみで出品して、ファンの人たちがお楽しみで買っていくものだとばかり思っていました。
ところが、もうその道でもバリバリ活躍しているプロの作家たちが、なぜに同人誌を作って、文学フリマに出品するというのでしょうか。
もうプロとして十分に活躍しているのだから、わざわざ自分たちの手でつくる必要もないと思えるのですが、そこはそれ、ぼくのような門外漢には計り知れない情熱と事情といったものがあるのでしょう。

何のことかというと、芥川賞受賞作家でもある長嶋有が仲間の作家たちと初の同人誌「メルボルン1」を製作し、それを文学フルマで販売するというインタビュー記事が新聞に掲載されていたのですね。
しかしそれはもう文学フリマが行われるわずか数日前。
んなもん、急にお知らせされても行けないものは行けませんって。
かくして、そんなことはもうすっかり忘れ去ってしまっていた渋谷での出来事。

ブックファーストをプラプラ見て回っていると......ん?
何やら非常に地味なパンフレットのようなものが置かれてあります。
普通に本屋さんで売られていた「メルボルン1」
おお、これは......「メルボルン1」!
文学フリマでしかお目にかかれないと思っていた同人誌が、なぜか普通の本屋さんに置かれてあったのでした。
立ち読みできないようにビニールで封をされていますが、目次だけがPOPとして張り出されていました。

柴崎友香「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」
ほしよりこ「峠」
長嶋有「オールマイティのよろめき(2nd flight)」
聞き手・長嶋有 柴崎友香 名久井直子 構成・福永信「穂村弘と三人」
福永信「ずっと五分間」「シャボン玉ひとつ」「消印」
中原昌也「舞台動物」
ほしよりこ「峠」

「きょうの猫村さん」で大ブレークのほしよりこの名前が、なぜか2つもあります。
誤植?と思いきや、見てみると......フフフフフ、ほしよりこ節が炸裂のおまけ企画だったのでした。
そして長嶋有の小説、これには「スゴイぜ、スゴすぎるぜ、ベイベー!」と腰を抜かしてしまいました。
到底、単行本では実現不可能な装丁になっているんです。
なんつーか、筒井康隆的というのか、手塚治虫的というのか。
ちょっと残念だったのは、この腰を抜かすほど驚かされた装丁が物語とは直接は関係なかったことなんですね。
装丁が小説に寄生したらこうなっちゃいましたみたいな、感じといえばいいのでしょうか。
ああ、このすごい装丁が物語にリンクをしていたら、筒井康隆のメタフィクションを超える「ネオ・メタフィクション」なるジャンルが誕生していたかもしれないのです。
重ね重ね残念です。

そしてパラパラと奥付を見てみると、ワオ!
「限定1500部」なんて書かれてあるじゃないですか。限定モノに弱い俗物根性丸出しのぼく、これだけで嬉しくなっちゃいます。
そしてシリアルナンバーまで打たれてあったのですが、これを見てさすがに......ウッソォォォ~!

「メルボルン1」の奥付。シリアルナンバーが27と確かに書かれてあります
27冊目。

27冊目ですよ、27冊目。1500冊のうちの27冊目。
文学フリマに出品する目的で作った本だったら、しかもこの執筆メンバーを考えたら、そして文学フリマではこの執筆メンバーが売り子になっていたことを考えると......、もうちょっとシリアルナンバーは大きくてもいいでしょう。
なのに本屋で買ったら、27冊目。
いったい文学フリマでは何冊はけたのか、そこが気になった今回の「メルボルン1」なのでした。