大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき自作朗読会「リーディングカンパニー Vol.5」

今日は、大沢在昌、京極夏彦、宮部みゆきという大極宮メンバーによる合同朗読会「リーディングカンパニー」を観に、新橋のヤクルトホールに来ました。
大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき自作朗読会「リーディングカンパニー Vol.5」(ヤクルトホール)

しかし、入場前から横切る一抹の不安......。
こうした作家自身が絡むイベントって、かなり以前(調べてみると1997年というから、もう10年も前の話です)に日本推理作家協会が「文士劇」というのをやったのを観たことがあったのです。
このときは、ぼくの大好きな若竹七海さんも出演しているというから、ということで観たのですが......いや、これが何というか、オソロシイほどヒドイのです。
確かに作家はあくまで作家であって、役者ではありません。
脚本も、辻真先という元・脚本家が書いたものですが、もはや現役とはいえません。
だからそんな「文士劇」に演劇的要素を求める方が間違っていたのかもしれませんが、やはりヒドイものはヒドかったのですね。
しかも"観たい!"と思った最大の理由だった若竹七海さんなんて、加門七海とワンセットのチョイ役でしかなかったし(これが一番ヒドイと感じた理由かもしれません)。
そんな訳で、今回も作家自身が朗読をする、そのようなイベントがどのようなものなのかと危惧していたのでした。

開演時間は、なぜか13時30分とメチャクチャ中途半端な時間。
会場に入ると......おお、9割方、いやもう9割9分女性じゃないですか。
前回行った「大沢在昌・京極夏彦合同サイン会」のときも、かなり女性率が高いと思っていたのですが、今回はもはやタカラヅカ並みの女性率。
席の周りは見渡す限り女性ばかりで、そんななかを「どうも野郎が来てしまってスミマセン......」と心持ち、座席に小さくなって座るのでした。
どうやら前売でチケットも完売したらしく、当日券もなかったようです。
さすがは大極宮ですね、侮れません。

さて、いよいよ始まった朗読会ですが......

面白いじゃないですか!

まずはソロパートの朗読。
最初に登場したのは大沢親分。
ステージ上には椅子とテーブル、そしてバーボンのボトルといった小道具が用意され、テーブルに足を投げ出すように座った大沢親分、崩れたハードボイルドスタイルで決めています。
朗読した内容は、既発表された自作短篇。
ただちょっとこれではオチが弱い。もう二転三転のひねりが欲しかったところですね。
(ハードボイルドにひねりは必要ないぜ、といわれそうですが、いえいえ、大沢在昌の短篇ってかなりひねりが効いている作品も多いのです)

続いて登場した京極夏彦は、大沢親分のセット構成とは一転、ステージに小道具類は一切なし。
まるで「京極夏彦自身が小道具」状態なんですね。
内容は耳袋より2題。
実は怪談系って、オチがないのであまり好きではなかったのですが、京極夏彦の語り口で聞かされると「メチャクチャ面白いやん!」
大興奮してしまいました。
こうした怪談系は文字で読むより、言葉で聞く方が面白いのかもしれません。

そしてソロパートのトリを飾るのは、宮部みゆき。
内容は書き下ろしのファンタジーでした。
しかし、さすがは宮部みゆき。演出が3人の中で一番凝っていました。
ステージいっぱいに、物語で登場する鳥のぬいぐるみが大小、溢れんばかりに並べられています。
そして驚いたことに、BGMにはピアニストも用意し生演奏を付けていたのでした。
経費掛けてる......。

15分の休憩後は3人合同での朗読。
内容は京極シリーズのキャラクターが勢ぞろいする短篇「五徳猫」。
長さといい、内容といい、馴染み深いキャラクターがほぼ登場するあたりといい、ちょうど朗読会向きの作品なのでしょう。
しかしキャラクターが勢ぞろいといっても、場内をもっとも沸かせて爆笑の渦に巻き込んだのは、高飛車な榎木津でも、卑怯者的に調子のいい益田くんでも、落ち着き払った京極堂ではなく、一登場人物でしかない"不動産屋の加藤さん"なのでした。
京極夏彦が話す加藤さんの口調......、いや、もう誰もあんなキャラクターは想像していなかったでしょう。
宮部みゆきもツボにはまってしまい、当初はまったくリハーサルもできなかったのだとか......。
こうした裏話も含め、なかなかどうして面白く、あっという間に時間の経つのを感じてしまった2時間なのでした。
こんなことだったら、「文士劇」のことなんて忘れて、第1回から行っておくべきなのでした。

会場ではグッズ販売に黒い山の人だかり。
第5回となる今回のパンフレットも販売しており、なかには今回のソロパートと合同パートのすべての台本が収載されているということで、思わず購入してしまいました。
演劇や映画に行ってもパンフレットなんて買ったことなかったのに......。
さらには、このパンフレット、第1回分のものからずっと余っているらしく、第3回分まではサイン入りで発売されていました。
こっそり買っちゃいました。
そして、改めて中を覗いてぶっ飛んでしまいました。
大沢在昌と宮部みゆきは、どのパンフレットにもちゃんとサインされています。
vol.1~vol.3までのパンフレット、大沢在昌のサイン入りページ

vol.1~vol.3までのパンフレット、宮部みゆきのサイン入りページ

しかし京極夏彦のサインときたら......。
vol.1~vol.3までのパンフレット、京極夏彦のサイン......ではなくて「今日の一言」集

彦根城っていったい......何?

もはやこれは"サイン入り"というよりも、単に"京極夏彦先生の、今日の一言~っ"って感じですね。
しかしいったい「彦根城」で何があったというのでしょうか......。

コメント

わはは。
いつか京極さんのサイン会に行くことがあったら、「彦根城」って書いてくださいって言ってみよーかな。
言葉にしてうまく言えないけど、京極さんってわたしの中でそういう(どういう?)キャラなんだってことが固まりつつあるような・・・好きだなー。

京極夏彦のサインは、妖怪の名前を書き、そこに「御祓済」の落款を押すのが正式なものらしいです。
(写真では落款が見えずらいですが、確かに“御祓済”の落款が押されています)
ですので、ひょっとしたら京極夏彦が「葉とうがらし」と「辛味大根」を使って、「彦根城」のお祓いをしたということなのかもしれません……。

ちなみに、前回の合同サイン会のときは、人数が多かったのと為書きを書いたため、妖怪の名前が書けず、まさか為書きの名前に「御祓済」の落款を押すわけにもいかず、仕方なしに自分の名前を「御祓済」にしたとのことでした。