やっぱり道尾秀介のメッセージは

道尾秀介が、ついに東京創元社のミステリフロンティアから新作『シャドウ』を出しました。
ミステリフロンティアって、まだまだ名前の知らない新人作家の作品が多いなか、道尾秀介は"出るべくして出た"という気がするのですね。
だからでしょうか、本屋さんではこんな著者直筆POPが飾られてあったのでした。

「書けてよかったよかった」って、なんと他人事のような......
こんな話を
ずっと書きたかったんです。
書けてよかったよかった。

......あれ?
最後の1文がちょっと変なんですよ。
「書けてよかったよかった」って、まるで他人事のようなのですよ。まったく心がこもっているように見えないのです。
改めてよくよくこのPOPを見てみると、「こんな話を ずっと書きたかったのです」という前半部と、「書けてよかったよかった」という問題の後半部とでは、インクの濃さが違うように見えるのです。
前半と後半部とではインクの濃さが違うのです

ということは......。
やっぱり「書けてよかったよかった」という言葉は、あとから書かれた"他人事のような言葉"だったのでしょうか?
きっとホントは、「オレはオレの書きたいように書かせてくれたらそれでいいんだぜ、ベイベー!」とロックンローラーのように思っていただけなのかもしれません。
だから「センセ、著者直筆POPを書いてくださいよ」とお願いされたときも、前半の文章を書いて「これでおっけー、ベイベー」と思っていたのかもしれません。
しかしここで焦る担当編集者。

「セ、セ、セ、センセ! そんな2行で終わったら紙があまって仕方ありません」
「じゃあ、紙の半分以上がオレのサインになるようデッカク書いてやるぜ」
「イヤー、ヤメテーッ! せめて、今のお気持ちを一言だけでも」
「"今の一言"と言われてもなあ、うーん......」
「書きたかった作品が書けたのでしょう? それでお気持ちは?」
「よかった」
「それですよっ、それ! それで行きましょう!」
「......仕方ないなあ、ぶうぶう。"書けてよかったよかった"......と。これでいいか?」
「はい、そりゃもう。どうもありがとうございます」

と言うやり取りがあったに違いありません。

しかしこのPOPの文章、どこかで見たような......と記憶の底を探ってみると......ああ!
今年の2月に「すごいぜ、このメッセージ」として、こんな写真を掲載していたのですよ。
驚いてください、僕が読みたいミステリを書いたんですよ!
このときも道尾秀介は、著者直筆POPで"自分が読みたいミステリを書いた"から、読者にどうです、すごいでしょう、驚いてくださいなんて、とんでもないことを言っていたのです。
うーん、やっぱりタダ者じゃないぜ、ロックンローラーなミステリ作家なんだぜ、道尾秀介。