劇団、本谷有希子「遭難、」(青山円形劇場)

今日は劇団、本谷有希子「遭難、」を観に青山円形劇場まで来ています。
劇団、本谷有希子「遭難、」

本谷有希子と言えば、人間の持つ悪意を描き出すのがその特徴だと思うのです。
今回も、物語はとある中学生が自殺未遂を起こし、その母親がサディスティックなまでに担任の先生をなじるところから始まります。
いつもの作品であれば、オープニングから中盤に掛けて、小出しに、小出しに、悪意を注ぎ込んでいくと思うのですね。
で、最後にはその溜まりに溜まり、積もりに積もった悪意のダムを崩して、登場人物たちを渦巻く悪意の本流に突き飛ばすスタイルだったと思うのです。
ところが今回は、あらまあ。
前半からフルスロットルで、ある登場人物の手によって悪意が「これでもか」「これでもか」と次々に周り中に飛ばされてくるのです。
周りの登場人物たちは、その人物の悪意に翻弄され、またあるいはえぐり出されていってしまうために、徐々に、徐々に、誰もがその悪意に伝染していく様がじっくりと描き出されていくのですね。
こうなるともはや本谷有希子の本領発揮。
悪意という風呂敷を広げすぎて、いったいどう収拾をつけるのかと思わされましたが、なるほど、そうくるか。
一見すると、ハッピーエンドのように見えるのですが、どうやら実は何も変わっていないアンハッピーエンドだったラストなのでした。

いやあ、今回の作品は実にいいですよ、いい。
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」と並ぶ傑作の部類に入るかもしれません。
役者陣もなかなかよかったのです。
もはや劇団、本谷有希子の常連ともいえる吉本菜穂子もいい味を出していたのですが、特筆すべきはナイロン100℃の松永玲子。
もう彼女がいなければ、この作品はここまでの完成度はなかったのではないかと思うのです。
これだけの傑作が、たったの1週間の公演だなんて、なんともったいない......。

ただひとつ、難点を挙げるとすれば「これ、青山円形劇場でやる意味がなかったのでは......」。
ステージはただ1箇所。
それを3方向から見えるようにしているだけの、ただ、それだけのステージ構成だったのですね。
スズナリとか、吉祥寺シアターで演るのと、何ら変わりはなかったのです。
やはり青山円形劇場と言えば、独特のあの円形を活かしたステージ構成、そして客席通路を使っての出入りを行うなど、その特性を活かした演出を期待していたのですが......残念。

コメント

あぁ、見たい、観たい観たい!!

それにしてもまだ「腑抜けども・・・」の本編をまだみていなんですけどね・・・(インタビューだけじっくり見たものの本編なんだか音声聞き取り難くてあまり集中できない・・・)

やっぱりライブで観たいなぁ。

今回の本谷有希子はかなり傑作です。
今まで観たなかでは、「腑抜けども~」の悪意の描き方がかなりエゲツナイなと思っていたのですが、いやー今回のもなかなかのものでした。
chietheさんがご覧になられたのは、あれですか? イーお芝居が発売されているDVD?
音声が聞き取りにくいのですか。
ちょっとつらいですね。

この「腑抜けども~」は来年、映画化されるそうなんですが、ちょっと怖いもの見たさで気にはなっています。
しかし配役にサトエリとか、永作博美とか、永瀬正敏とか有名人を起用しているので、ちょっとそこらあたりが心配だったり……。
(永瀬くんはいいのですが、サトエリちゃんとか永作博美あたりが大丈夫かなあと)

BS2の深夜劇場で放送されてた分じゃないですか?僕もそれで「腑抜けども~」を見たけど、音が小さかったです。

それと「遭難、」は金曜日に観ました。
確かに、吉本さん立ってるだけで面白かったです。
僕は広告批評の本谷有希子のインタビューを読んでから行きました。

ぜんそくさん、こんばんは(ってすごいハンドルネームですね……)。
なるほど、BS2でやっていたのですか。それは全然知りませんでした。
確かに、「腑抜けども~」のステージは、青山円形劇場のつくりを活かした特殊な構造だったため、マイク位置をしっかり定めていないと、音声を録るのが難しかったのかもしれませんね。
(それとも単に音声レベルを低めに録音してしまったのか)

「遭難、」は今思い返しても、あのアッケラカンとした悪意の描き方には、本当にゾクゾクしてしまいます。
これですよ、これ。
本谷有希子に求めちゃうのは、このアッケラカンとした悪意の描き方。
しかも今回はハッピーエンドのように見せかけて、その実、何も変わっていなかったと言うオチまでつけて、っかぁぁ~、見事にやってくれちゃいました。

吉本菜穂子は、劇団、本谷有希子でしか観たことなかったのですが、前回の「密室少女」で見事に化けました。
それまでは単なる脇役と言う印象でしかなかった彼女だったのですが、前回では主役としてしっかり板についた演技を見せてくれ、そして今回も松永玲子に相対するその存在感と、かなり目が離せない状態です。