うう……眠い。
こんなときはお腹をこわしたフリをして、トイレの個室に駆け込む……これに限ります。
しばしの安息のとき。ふう……。
しかし、その安息もつかの間、何やら不穏な雰囲気があたりに漂っていることに気がつきました。
見られている!
視線です、視線。
ジィィィィィっと個室の便器に腰掛けているぼくを見つめる何者かの視線。
しかしちゃんとドアの鍵は閉めているのです。

ま、まさか……これって……ノ・ゾ・キ?
キャー、キャー、キャー、キャー、キャーッ!
いや、そんな慌てる必要はないのです。何しろ、今のぼくは便器に腰掛けて寝ているだけなんですから。
でも、やっぱりそんなやましいところは覗かれたくないものです。
というか、そんな昼寝しているところを見て……楽しいのか?
それ以前に、野郎の個室を覗いていて……嬉しいのか?
謎が謎呼ぶノゾキ事件。
そんなときにフト気がついたのです。ドアに取り付けられているカバン掛け(というのか、何というのか)。
近づいてよくよく見てみると……こ、こ、こ、これは!
ピノキオがこんなところから覗いているーっ!
いやいや、ピノキオといえば操り人形ですよ。
こんな顔だけで操るところがないものをピノキオとは呼びません。
ということは……、これはピノキオの顔をした別物ということでしょうか。
そういえば、何だかこんなのを見たことあります。
うーん、いったい何だ、何だったんだ……と考えること数十秒。
そうだ! 横溝正史シリーズで見たことがあったのでした!
こんなヤツ。

「犬神家」とか「本陣」とか、旧家の客間には必ずこんなヤツが飾られてあるのです。
でもこれってイヤーン、コワーイ。
あるいは金持ちの別荘でよく見かけるこんなヤツ。

これはいいです、スゴクいい!
横溝正史シリーズみたいにおどろおどろしくないし、そもそも何といっても角の部分がカバン掛け(というのか、何というのか)にもちょうどいい感じなのですよ!
でも、横溝正史シリーズにしろ、金持ちの別荘にしろ、いずれにしろ飾られているのは客間とかリビングとか、そういった生活の場ですよね。
こんなトイレのドアに飾られているのは見たことありません。
しかも、このピノキオ、そもそも鼻が長いくせにトイレのにおいにノックアウトされたのか、目が「×」印になっているんですよ。

だったら、こんなところにいるなよ……。


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