古川日出男トークショウ

スッコーンと抜けるような青空が広がるこどもの日。
連休真っ只中でウジャウジャとヒト、ヒト、ヒトで溢れかえる渋谷にお出かけしていました。
目的地は青山ブックセンターの本店です。
デビュー以来、その変幻自在な文体で読者の目をクラクラと眩ませ続けてきた古川日出男が、今回は短篇集『ルート350』を刊行した記念として、トークショーが開かれるというのです。
ぼくとしても、少しでもその彼の醸し出す世界観を理解できるきっかけにでもなれば、と参加してきたのでした。
20060505-001.jpg

そもそも"古川日出男"という人物は、あんな一種独特の「饒舌体」により物語を織り成す作家なので、てっきり本人もさぞかしテンションが高く、話し出したら止まらないタイプなのかな......と思っていたのです。
が、しかし。全然違いました。
確かに「物静か」というタイプとは違います。
しかし、話を聴く姿勢がスゴイのです。
司会者の眼をジッと見つめながら聴く姿勢には、鬼気迫るものを感じさせるほどでした。
ただ単に"話したいことを話すだけ"という、「朝まで生テレビ」に出てくるようなオヤジではありませんでした。
勝手なイメージを作り上げていて、どうもすんません。
しかい、ぼくなんてあんな眼でジッと見られてしまったら、きっとビビってオシッコちびってしまって、とても冷静に話なんてできるどころではありません。
ええ、ええ、とんだ小心者でございますとも。

質疑応答では「原稿は縦書きで執筆されるのですか? 横書きで執筆されるのですか?」との質問に、ぼく自身、正直「そんなもん、どっちでもええやん」と思ってしまったのですが、いえいえ、実はこれが"古川日出男"と言う作家を知る最大の質問だったのですよ。
古川日出男を回答としては、「エディタは横書きなのですが、同時にブラウザで縦書きでも表示されるようにしているので、両方でチェックしています」
縦書きと横書きとでは読むリズムが異なるため、その差が出ないように両方でチェックをしているとのことです。
もうこれだけで会場には「スッゲー」という空気が流れたのですが、さらに古川日出男はこうも言ったのです。

「フォントも、明朝やゴシックや丸文字などでも表示させてみて、物語が変わらないかチェックしていますね」

一瞬にして、会場内中に鳥肌が立ったような、そんな空気が流れたのですよ。

そして今日のトークショーの終尾を飾るのが、作者本人による未発表作品の朗読。
もともと500枚程度の長篇として書き進めてきた作品だったらしいのですが、ラスト100枚というところでどうしても進めることができなくなり、ボツにしたという曰く付きのものだそうです。
ただし、この作品での世界観は、今回の短篇集に収載された「一九九一年、埋め立て地がお台場になる前」に引き継がれているらしいのです。
(サイン会目的でまだこの短篇集は買ってないので、これがどのような作品なのかは判っていません)
今日の朗読は、そのボツにした作品の冒頭15枚程度ということでしたが......何なんですか、この緊迫感は。
古川日出男のつむぎ出す言葉(テキスト、そして朗読)に、決して狭くはない会場内がすっかり飲み込まれてしまっているのです。
読み終わった瞬間、客席内のあちらこちらから「フーッ」と息を吐く音があがっていたような気さえしました。

20060505-002.jpg 20060505-003.jpg

トラックバック

» 古川日出男「ルート350」 from 映画とロックとミステリー
古川日出男は好きな作家である。 最近『ベルカ、吠えないのか?』 を褒めまくった豊崎女史と大森望の宣伝活動で、一躍(一部で)注目の作家にのし上がったが... 続きを読む