劇団、本谷有希子「無理矢理。」

さて、そんな訳で劇団、本谷有希子の新作公演「無理矢理」を観に、吉祥寺シアターにやってきました。
今回のステージとなる吉祥寺シアターは、天井がとてつもなく高い位置にあるので(3階分の吹き抜けとなっています)、それを活かした台本を書いたそうです。
確かに、いつもの彼女のお芝居であれば、人間関係のイヤーなところを「これでもか」「これでもか」と観客に投げかけてくるところなのですが、今回は......おや。
いつものようにひと癖もふた癖もありそうな登場人物が現れてくるのですが、それ以上に目を奪われるのはそのセットの豪華さ。
ストーリーとしては「永遠に改築され続けているお屋敷」ということで、物置が思わぬ位置にあったり、階段が思いがけない方向に向かっていたり、そもそもデザインが狂っていたり。
住人でさえも迷子になりそうなこの屋敷を舞台に、そこに下宿する人々の物語......ということで、これって丸っきり「めぞん一刻」やん!
いや、「めぞん一刻」が青春ラブストーリーとすると、本谷有希子の場合は"人間関係ダークファンタジー"とでも言いましょうか。
そこに、綾辻行人「迷路館の殺人」を足したような、そんな風味なのです。
それだけに、今回は「屋敷そのもの」が影の主役として動いてくるぞ、きっと......と期待していたのですね。
ところが......おやおや。
豪華なセットを活かした「屋敷の不気味さ」を描写していたのは出だしだけで、後はただひたすら、いつもの本谷有希子節が炸裂の「狂った人間関係」を軸にストーリーは展開していくのです。
うーん、うーん。
狂った人間模様も、それはそれで非常によかったのですが、それならせっかくの豪華なセットが活かしきれていないのです。ただそれだけが残念なのです。

また、ストーリーの随所に伏線を張っておき、最後にそれを回収しているところも評価できるのですが、いかんせん、ラストにまた新たな謎を提出してどんでん返しを狙っておきながら、その回収を行わないと言うのはいかがなものかと。
結局、息子はいったいどうなっているのか、それはあくまで観客の判断に任せると言うことなのでしょうか。
どちらであることも予想できるので、ちゃんとどちらかに着地できるためのさらに伏線を用意してもよかったのじゃないかなあと思うのです。
赤一色に塗られた屋敷内部をあらわした舞台セット