横山秀夫まつり

本屋さんに行くたびに、ずっと疑問に思っていたことがあるのです。
大きな本屋さんなんかに行くと、たいてい平台に新作の本がドーンと積まれています。
で、POPなんかがゴチャゴチャと立てられてあったりします。
たまにこのPOPが、著者直筆のコメント入りだったりするのですね。
「いかにその作品に思い入れがあるか」みたいなことを、サラリサラリと。

あのPOPって、用事がなくなってしまったら(その本の平台での売り出し時期が終わったら)、どうなってしまうのでしょう。
閉店後、店員同士で争奪戦を繰り広げているのでしょうか。
あるいは、ヤフオクに出品して、その売り上げで飲み会をしているとか……。

東京駅前にある八重洲ブックセンターは、いつも著者直筆POPがたくさんあるのですね。
店員全員に渡しても、まだ余ってしまうんじゃないかと思えるぐらいに数が多いんです。

そんななか、平台に積み上げられている横山秀夫の新作『ルパンの消息』(光文社カッパ・ノベルス)もやはり、著者直筆POPが飾られてありました。
マジメなのか、オチャメなのか、とにかく怪しいイラストが買う気を失せさせるPOPの横山秀夫

何じゃ、コリャ。
おそらく目立たせようとしたのでしょう、タイトル部分を2色のペンで二重線チックにしたのはいいですが、清書に失敗して下書きが丸見えになっている書類のようになってしまっているのです。
しかも……この変な横顔のオッサンは誰?
ハテナ印のイアリングなんてしてるよ!
アゴ、しゃくれているよ!
リーゼント、しなびているよ!
サングラスのツルがないよ!
ママンッ!

とは言うものの、こうして目を引いてしまったのだから、POPとしては正解ですね。
さすがは元新聞記者、なかなかやるぜ……と本棚の前に来ると、「あれ?」。
ここでも『ルパンの消息』を読むよう読者に懇願する横山秀夫
ハードカバーのコーナーにも関わらず、ノベルス版の『ルパンの消息』が並べてあり、そこにも著者直筆POPが添えられていたのです。

自信作です! 読んで下さい!

ビックリマーク2連発です。
横山秀夫自身、よっぽどこの本を売っていきたいのでしょう。
このコメントに込められた意気込みが、ビックリマーク2連発となって現れてきているのです。

きっと読者も作者のその意気込みに共感したのでしょう、八重洲ブックセンターでは3週連続1位の好セールスを記録したようです。
こんなところまで出てきてしまった横山秀夫
何と、こんなところまで横山秀夫が登場してきてしまっているではありませんか。

心より御礼申し上げます

心なしか、ちょっと字に乱れが見えています。
そう言えば、自然と気合いが溢れていたビックリマークもありません。
ひょっとしたら、POPの書き過ぎで手が疲れてきているのかもしれません。
やばいぞ、横山秀夫。腱鞘炎はすぐそこだ!

などと心配なんてしていたら、うおぉぉぉ-い!
ちゃっかり新作の宣伝は忘れない横山秀夫
どんなに手が疲れてこようとも、どんなにひどい腱鞘炎に掛かろうとも、横山秀夫はやっぱり新聞記者、書いてナンボの魂を忘れてはいませんでした。
新作の宣伝も、ちゃんと直筆であったのです!

今度の小説の主人公は“情報”かもしれない。

「かもしれない」って……。
自分で書いておいた小説の主人公が、誰だったのか忘れてしまっているようです。
うーん、これは腱鞘炎どころの騒ぎではありません。
ヤバイですよ、ヤバイ。
きっと怒涛の勢いで本を書きすぎて、もう何が何だかよく判らなくなってしまっているのでしょう。

そして、横山秀夫まつりはまだまだ続くのです。
その隣には……
もう何が何だかよく判らない横山秀夫
これですよ、これ!
この『クライマーズ・ハイ』なんて、もう2年前に出た本じゃないですか。
そのPOPが飾られてあるのですよ!
閉店後に、店員同士で争奪戦を繰り広げていたわけではなかったようです。
ましてや、ヤフオクで売られていたわけでもなかったのです。
(ただ単に落札されなかっただけかもしれませんが ←オイ)

大いなるものとの戦い。

それって、これだけの勢いで手書きPOPをつくってしまう横山秀夫と戦わなければならない、他の作家のことを言っているのでしょうか。
何しろ、これだけの怒涛のPOPに飽き足らず、横山秀夫は自分のコーナーに置かれた本を、こんな風にしていたのですよ!
これ全部サイン本。サインしすぎの横山秀夫

本にサインしすぎ。

何だか芥川龍之介の「芋粥」を思い出してしまいました。
ココまでサインばかりが揃ってしまうと、却ってありがたみもなくなって売れなくなってしまいそうなものですが……。

ううーん、恐るべし横山秀夫。