黒澤でお蕎麦

首相官邸からそれとなく全速力で歩きながら遠ざかること1分、そこには“黒澤”がありました。
一度は行ってみたかった“黒澤”が、こんなにあっさりと行き当たってしまうとは。
溜池山王駅の物々しい通りから一歩奥まった場所にあり、やや静かな風情の「黒澤」

黒澤組の美術スタッフが監修したという高級料亭のような風情の建物が、まるで「一見さんお断り」とばかりに迫るのです。
しかし思い切って「……すみません、1人ですけど、イイデスカ?」と尋ねてみると、意外と気さくに「どうぞ、どうぞ。お好きな席にどこでもどうぞ」と案内されました。
なるほど、昼の時間もかなり過ぎているからか、他にお客はいません。
店内貸し切りでお大名な気分。
落ち着いてから改めて店内をキョロキョロ見回してみますと、なるほど、黒澤明の手による絵コンテが飾られています。
「黒澤」店内には、ウワサどおり黒澤明の絵コンテが飾ってありました
が、しかし、なぜか2枚だけなんです。
ウワサを聞いていたぼくの頭のなかでは、店内にはもう美術館か、パラダイスか、というぐらいたくさん飾られてあるとばかり思い込んじゃっていました。
とほほ。

そして頼んだせいろ蕎麦。
黒澤明という監督のイメージから、エンターテイメント(=客を喜ばせる)に即したあまり、かなり猛々しいお蕎麦じゃないかなと思っていました。
一口食べると……おや?
まったく猛々しくありません。
というか、淡々としていてある意味、メチャクチャ上品なんです。
たとえて言うなら、小津安二郎のような、そんな風味。
ちょっと意外でした。
ただし。
つゆだけは、とてもしょうゆの味が強く、猛々しいものでした。
まあ本来の江戸前の蕎麦の風味なんでしょうが、ちょっと蕎麦とは釣り合いが取れていなかったかもしれません。
上品な味わいのせいろ蕎麦。ただしつゆはメチャクチャ猛々しかったのです
今度は、蕎麦以外の一品ものやつまみ系も行ってみたいものです。

嬉しかったのは、食前に冷たく、食後は温かい蕎麦茶を出す気配り。
豊臣秀吉の格言の応用形ですな(本当か?)。