月蝕歌劇団「金色夜叉の逆襲」(ザムザ阿佐ヶ谷)

今日は月蝕歌劇団「金色夜叉の逆襲」を観に、ザムザ阿佐ヶ谷まで行ってきました。

タイトルからも判るように、ベースは尾崎紅葉『金色夜叉』です。
『金色夜叉』って、そう、あの“来年の今月今夜になったらば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから”のあの『金色夜叉』ですよ。
ちょっと……いや、かなり泥臭い印象は拭えません。
前回公演が沼正三『家畜人ヤプー』、前々回公演が大槻ケンヂ『ステーシー』とある意味アングラテイスト溢れる作品の舞台化が続いていただけに、今回の昭和モダニズムテイスト溢れ出るブンガク作品が原作となってしまったことによる古臭いイメージが、かなり気に掛かるところなのです。
さらに言うとタイトルのダサさ。
「逆襲」ですよ、「逆襲」。
もう「メカゴジラの逆襲」「キングギドラの逆襲」じゃないんですから……とほほのほ。

ということで、会場のザムザ阿佐ヶ谷まで恐る恐る行って来たのでした。
しかも。
既に会場周りには、ヲタク臭を発する野郎どもがズラリと並んでいて、一種異様な光景です。
確かにぼくもそのなかの一人なのですが、あまりのおぞましさにちょっと腰が引けてしまいました。
何しろ、この会場はビルの地下にあるかなり狭いイベントスペースなのです。
ここに「これでもか!」「これでもか!」「これでもか!」とばかりに、彼らヲタク臭を発している野郎どもを詰め込んでいくのですよ。
ステージが終わるころには、会場内に立ち込める野郎の臭気で観客全員が燻製になってしまっているほどです。

そんな訳でザムザ阿佐ヶ谷での観賞のポイント。
入場時はダッシュで、できるだけ真ん中席を狙いましょう。
遠慮して端の席についてしまうと、後から後から人が押し込まれてくるので、壁際で圧死してしまうのは確実です。
いや、それでも座れているだけでもマシかもしれません。さらに遅れると、階段席の段に腰掛ける人の後ろに無理矢理押し込められ、横座りするよう命じられるのです。
2時間その姿勢は……ムリです。

そして危惧していた内容は……あれれ? メチャクチャいいじゃないですか、これ。
寛一・お宮の話が確かに大きなテーマとなっているのですが、さらに月蝕歌劇団ならではのトンデモ話で炸裂っ!
火星の軌道を変えて月食を作り出しちゃうわ、別の物語のキャラクターが登場するわ、メタフィクション的な展開になっちゃうわ……と、もう徹底したエンターテイメント色。
しかも相変わらず血糊も全開で噴き出しっぱなし(←かなり大げさ)。
最前列のお客さんなんて、とても嬉しそうにビニールを被っていました。
『金色夜叉』なのに血糊が噴き出すとは、これいかに……と思うところですが、その辺りの取り入れ方はやはり月蝕歌劇団ならではと言うところでしょう。
また、今回ゲストだった“黒色すみれ”によるバイオリンとアコーディオン、ボーカルがこりゃまた素晴らしくいいのです。
いやあ、こんなに面白いアーティストがまだまだいたのですね。
かなりファンになってしまいました。

ただし、やや残念に思えたのはいつもの月蝕歌劇団ならではの「全員揃ってのダンスと合唱」がやや少なくなっていたように感じてしまったところですね。
確かに、20名近くの役者たち全員が手にろうそくを持って、あの狭いステージ上で踊るのは、かなり危険だとは思うのですが。
(消防法的にNGなのでしょうか)

次回公演は8月に変則的なスケジュールで、しかも会場がバーとのこと。
どのような内容なのか、今から気になるところです。
また“黒色すみれ”がゲストで生演奏だったらいいなあと思ったりもしているのです。

……としたところで、ウギャア
月蝕歌劇団のWebサイトでは、観客アンケートから抜粋されたコメントが公演日ごとに「お客様の声」として掲載されています。
ここを何気なく観ていて、「ウギャア」と叫んでしまったのですよ。
何しろ、この「お客様の声」、5月22日(日)のところでぼくのコメントが晒し出されてしまっているではありませんか。

☆単なる金色夜叉でなく、多重構造のメタ的な展開がおもしろかったです。黒色すみれの生演奏がよかった。(中橋一弥さん)

ああん、ああん、かなりカッコ悪いのです。
「多重構造のメタ的展開」って何じゃ、それ。
そもそも「単なる金色夜叉」という言い方も変です。
しかも前半「ですます」調、後半「である」調と、まるで悪文の見本のような文章ではありませんか。

しかし、こうしたアンケートのコメントって、客席の暗い照明の中で、膝の上に乗せて書いたりするものだから、なかなか手元が定まらず、字がメチャクチャ汚いのですね。
なので、せめて中身だけはうまく書こうと思うのですが、その後ろでは係員が「早く掃除したいなぁ。コイツ、早く出て行ってくれないかなぁ」と無言のプレッシャーを与えてくるものだから、小心者のぼくとしてはジックリ吟味して書くことは難しいのです。
だから少々(いや、かなり)変な文章でもいいねん……。
(などと言い訳)